著者
濟渡 久美 三浦 春菜 石川 伸一
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.174, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】【目的】食品中の成分や調理により添加された調味料の濃度分布等は,風味や食感に影響を与える。しかし,食品中の成分や調味料等の濃度分布を可視化した研究は少ない。本研究では,ハイパースペクトルカメラとデジタルカメラを用いて,揚げ物における油や煮物における煮汁に関し,時間経過や保存温度の違いによる浸透程度の観察を行うことを目的とした。【方法】〈揚げ物〉実験試料として鶏ササミ,エビなど用い,脂溶性色素スダンⅣで染色した油で天ぷらを揚げた。揚げた試料は,冷蔵,常温,ホットショーケースで保存し,一定時間後に試料の中 心を包丁でカットし,断面をデジタルカメラで観察した。 〈煮物〉実験試料としてダイコン,コンニャクなどを用い,水溶性色素青色 1 号で着色した煮汁で煮物を作製した。沸騰してから 15分煮込んだ後,試料の中心を包丁でカット後,断面をデジタル カメラおよびハイパースペクトルカメラで観察した。また各試料を鍋ごと冷蔵,常温で保存後,試料の中心を包丁でカットし,断面をデジタルカメラおよびハイパースペクトルカメラで観察した。 【結果・考察】〈揚げ物〉すべての実験試料において油の浸透は衣までであった。揚げてから時間が経っても油は内部まで浸透しな かった。保存温度の違いは油の浸透に大きな影響を与えなかった。 〈煮物〉ハイパースペクトルカメラでの観察の結果,常温保存の 試料の方が冷蔵保存の試料より煮汁が浸透した。 食品中の成分の空間的配置や存在状態などを明らかにすること,テクスチャーや風味との関連性を交えて検討することにより,おいしさの物理的解明につながることが考えられる。
著者
濟渡 久美 長谷川 莉子 桑原 明 石川 伸一
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.67-78, 2022 (Released:2022-03-04)
参考文献数
30
被引用文献数
1

豆乳および牛乳を用いて, 各種増粘剤 (ゼラチン, キサンタンガム, ɩ-カラギーナン) 添加によるエスプーマの起泡安定性を中心とした物理的特性, および若年層, 高年層による官能特性を検討した. 起泡性は, 豆乳N2Oエスプーマおよび牛乳N2Oエスプーマともに増粘剤添加濃度が高いほど起泡性が低下する傾向がみられた. 泡沫の安定性は, 豆乳N2Oエスプーマおよび牛乳N2Oエスプーマともに増粘剤添加濃度が高いほど増加した. 食材によって, 安定性の向上に適した増粘剤の種類や濃度が異なることが示唆された. 嚥下調整食コード2の食品物性を示したエスプーマは, 2.0%ゼラチン添加牛乳N2Oエスプーマ, 0.2%ɩ-カラギーナン添加豆乳N2Oエスプーマであった. 若年層, 高年層による官能評価の結果豆乳N2Oエスプーマは有意に飲み込みやすいと識別され, 豆乳CO2エスプーマは苦いと識別された. 0.2%ɩ-カラギーナン添加豆乳N2Oエスプーマは若年層において, 最もべたつきやすいと識別された. 増粘剤を添加した豆乳および牛乳エスプーマは, 嚥下調整食の新しい調製方法として期待される.
著者
濟渡 久美 吉成 愛未 石川 伸一
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】<br><br>低温調理は食材を一般的な調理温度より低い55℃~90℃程度の温度帯でじっくり加熱する調理法である。長時間加熱することで軟らかくなり,また真空包装して調理することにより様々な長所を有する。近年この真空低温調理が注目され,種々の食事提供の場で幅広く活用されているが,2日間以上の長時間調理の報告はほとんどされていない。そこで,真空低温調理による食肉への長時間加熱の影響を検討することを目的とした。<br><br>【方法】<br><br>牛すね肉,豚すね肉それぞれに対し1%重量の塩を添加後,真空処理し,恒温乾燥器で55,60,65,70,75℃で1,3,5,7日間加熱調理したものを試料とし,レオメーターを用いてかたさを測定した。官能評価は,牛すね肉は65℃で,豚すね肉は70℃で1,3,5,7日間調理したものを試料とし,「かたさ」「多汁感」「うま味」「香り」「脂っこさ」「色」「総合評価」の7項目について7段階評点法で行った。パネルは18歳~23歳の男女71名とした。<br><br>【結果】<br><br>レオメーターでの測定の結果、牛すね肉の長時間調理について、調理温度が高いほどテクスチャーが柔らかくなる傾向がみられ、全ての温度帯で5日間調理のサンプルは1日間調理と比較し有意にかたさの値が減少した。55℃~75℃の長時間調理ではタンパク質変性,特にコラーゲンのゼラチン化が最もかたさに影響を与えると考えられる。豚すね肉の官能評価について、総合評価では3日と5日、3日と7日で調理時間が長くなるほど有意に低下する傾向がみられた。豚すね肉はコラーゲンの変性の進行に伴い、コラーゲン変性を3日以内の加熱変性の状態に抑えたものが好まれる傾向にあるのではないかと考えられる。
著者
石川 伸一 吉成 愛未 濟渡 久美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】<br><br>低温調理は食材を一般的な調理温度より低い55℃~90℃程度の温度帯でじっくり加熱する調理法である。長時間加熱することで軟らかくなり,また真空包装して調理することにより様々な長所を有する。近年この真空低温調理が注目され,種々の食事提供の場で幅広く活用されているが,長時間調理の報告はほとんどされていない。そこで,真空低温調理によるリンゴへの長時間加熱の影響を検討することを目的とした。<br><br>【方法】<br><br>リンゴは8等分にし、30%濃度のシロップを添加後、真空パックし、それぞれ60,70,80,90℃の湯浴中で1,12,24,48時間加熱調理し、色差測定とテクスチャー測定を行った。70℃で加熱したリンゴを用いて,18歳~23歳の男女66名をパネラーとした官能評価を行った。「かたさ」「甘さ」「酸味」「香り」「色」「総合評価」の6項目をそれぞれ7段階評価で行った。<br><br>【結果】<br><br>色差測定では60℃調理と70℃12,24時間のサンプル間を除いたほとんどのサンプル間で,同じ温度条件で時間経過に伴い明度が有意に低下した。加熱時間が長くなるほど,褐変が進行すると考えられる。テクスチャー測定では70℃サンプルでは時間の経過に伴い有意にかたさの値が減少した。70℃調理では調理時間が長くなるほどペクチンの分解が進むと考えられる。官能評価では,理化学試験の結果と同様に,硬さと色は時間の経過とともに値が有意に減少した。しかし,甘さ,酸味に関して,理化学試験ではみられなかった有意差がみられた。