著者
瀧口 述弘 高松 昇三 佐藤 哲也 雉子牟田 美香 庄本 康治
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.21-21, (Released:2023-01-30)

背景:慢性腰痛患者には運動療法を実施すべきと報告されているが,運動時痛により運動が十分に行えていない患者が多い.経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation)は,慢性腰痛患者にも実施されているが,運動時痛に対する効果を検証した報告は少ない.また,TENSは周波数により鎮痛機序が異なるが,腰部運動時痛に対する最適な周波数も明らかではない.本研究の目的として,腰部運動時痛に対するTENSの効果と最適な周波数を明らかにすることとした.試験デザイン:ランダム化比較試験.方法:対象は慢性腰痛患者80名であり,高頻度TENS群(100 Hz),変調TENS群(10-100 Hz),プラセボTENS群にランダムに割付け,TENS実施前,実施直後,30分後に運動時痛評価と運動機能評価を行った.TENSは30分後の評価終了まで実施した.結果:変調TENS群はプラセボTENS群よりも運動時痛が有意に低下したが,運動機能は向上しなかった.結論:変調TENSは慢性腰痛患者の運動時痛を低下させる.
著者
瀧口 述弘 徳田 光紀 庄本 康治
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.23-29, 2021 (Released:2022-09-03)
参考文献数
25

経皮的電気神経刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation: TENS)は,電気刺激を用いた非薬物的鎮痛手段である.近年,刺激強度を疼痛の最大耐性強度まで増強させる高強度TENSが試みられているが,その鎮痛機序は明らかではない.高強度TENSの鎮痛機序は,オフセット鎮痛と広汎性侵害抑制調節(Diffuse Noxious Inhibitory Controls: DNIC)が考えられるが,これらの効果が生じるかを検証した報告はない.本研究の目的は,高強度TENSが,オフセット鎮痛やDNICと同様の効果が生じるかを健常人で検証することとした.オフセット鎮痛様条件の実験手順は,1)0-5秒:実験的疼痛のみ,2)5-10秒:高強度TENS + 実験的疼痛,3)10-30秒:実験的疼痛のみとした.これらの疼痛に対する疼痛強度を経時的に測定した.DNIC条件は,5秒間の高強度TENSの実施前後に,TENS実施部位から離れた部位に実験的疼痛を与え,疼痛強度を測定した.オフセット鎮痛様条件とDNIC条件ともにコントロール条件と比較して,有意に疼痛強度が低下した.高強度TENSはオフセット鎮痛とDNICと同様の効果が生じる可能性がある.
著者
佐藤 雅浩 瀧口 述弘 徳田 光紀 庄本 康治
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.65-71, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
29

経皮的電気神経刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:TENS)は電気刺激を用いた非薬物的鎮痛手段である.最大耐性強度で実施する高強度高周波(High intensity, high frequency:HI-HF)TENSは,数分間の実施で広汎性の鎮痛効果が得られるとされており,疼痛部位と離れた部位への刺激によっても鎮痛効果が得られる可能性がある.そのため,手術の影響を受けにくい非手術側へのHI-HF TENSの実施によっても術側の鎮痛効果が得られると考えた.本研究では大腿骨頸部骨折術後患者の運動時痛に対して,手術の影響を受けにくい非術側にHI-HF TENSを実施し,即時的な鎮痛効果を検討することを目的に実施した.大腿骨頸部骨折術後患者6名に対し術後翌日より1週間,HI-HF TENSを非術側へ実施した.実施前後で運動時痛が即時的に軽減した.非術側へのHI-HF TENSは術後の運動時痛を軽減する可能性が示唆された.
著者
瀧口 述弘
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.42-46, 2019 (Released:2022-09-03)
参考文献数
28

疼痛管理で使用する物理療法として,温熱療法,寒冷療法,光線療法,電気刺激療法等が挙げられる.本稿では,先行研究も多く,臨床場面でよく使用されている経皮的電気刺激治療(Transcutaneous electrical nerve stimulation: TENS)について概説する.TENSとは,電気刺激を用いた非侵襲的で副作用もほとんどない鎮痛手段である.TENSは薬物療法と併用して使用可能で,臨床場面でも実施しやすい.TENSの鎮痛機序は脊髄内疼痛抑制機構,内因性オピオイド,下降性疼痛抑制系等が関与すると報告されている.臨床場面では,術後痛,筋骨格系疼痛,神経因性疼痛,癌性疼痛などに対して実施されている.TENSの鎮痛作用を最大限に高めるためには,対象者の疼痛の特性を捉えた上で,先行研究で確立されたエビデンスに基づいたTENSのパラメータ設定をすることが重要となる.
著者
瀧口 述弘 庄本 康治
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.16-22, 2021 (Released:2022-09-03)
参考文献数
28

経皮的電気神経刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation: TENS)は鎮痛目的で実施する物理療法である.疼痛を感じる程度まで刺激強度を増強させる高強度TENSが近年試みられている.高強度TENSは,電気刺激により生じる疼痛によって,鎮痛作用が引き起こされると考えられている.TENSのパルス幅を広く設定した方が痛覚線維を刺激しやすいため,その効果が高いと考えられた.そこで本研究の目的は,パルス幅の違いが実験的疼痛に与える影響を明らかにすることとした.健常人11名に対し,パルス幅100 μs条件と500 μs条件の2条件の高強度TENSをクロスオーバーさせ実施した.実験的疼痛は圧痛閾値を用い,各条件のTENS実施前後に測定した.500 μs条件は,100 μs条件よりも有意に圧痛閾値が上昇した.高強度TENSはパルス幅を広く設定した方が,圧痛閾値を上昇させる可能性が示唆された.
著者
大江 健人 瀧口 述弘 徳田 光紀 庄本 康治
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.929-933, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
29

〔目的〕脊椎圧迫骨折後疼痛患者1名への経皮的電気刺激(transcutaneous electrical nerve stimulation:TENS)が与える影響の検討.[対象と方法]80代女性,診断名は第2腰椎圧迫骨折であった.プラセボTENSをA期,通常のTENSをB期として1日ずつを交互に,計4日間実施した.TENS実施前後に安静時痛をVisual Analog Scale(VAS)で測定し,Timed up and Go test(TUG)とTUG後疼痛をVASで測定した.〔結果〕A期に比べB期では安静時痛VAS,TUG後疼痛VAS,TUGで大きな改善を示した.〔結語〕脊椎圧迫骨折後の症例においてTENSは疼痛と運動パフォーマンスの即時的改善に効果的な可能性が示唆された.
著者
瀧口 述弘 庄本 康治
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.343-348, 2017 (Released:2017-05-02)
参考文献数
29
被引用文献数
2 1

〔目的〕大腿骨近位部骨折術後2症例に対して,経皮的電気刺激(TENS)を患側肢に実施する患側TENSと両側肢に実施する両側TENSの効果を評価すること.〔対象と方法〕症例1は大腿骨転子部骨折固定術後症例,症例2は大腿骨頚部骨折固定術後症例であった.症例1は,術後1~3日目に30分間の患側,両側TENSを実施し,症例2は,術後1日目には1時間患側TENSのみ実施し,2,3日目は1時間の患側,両側TENSを実施した.アウトカムは運動時のNRSを測定した.〔結果〕2症例とも患側,両側TENS後のNRSが低下し,症例2では患側TENSと比べ両側TENSの方が1低下した.〔結語〕患側,両側TENSともにNRSが低下したが,今後はプラセボなども実施し,患側,両側TENSの効果を明らかにする必要がある.