著者
灘岡 陽子 早田 紀子 杉下 由行 梶原 聡子 渡部 ゆう 吉田 道彦 長谷川 道弥 林 志直 大地 まさ代 甲斐 明美 住友 眞佐美
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.136-144, 2014 (Released:2014-04-16)
参考文献数
20

目的 本報告の目的は,東京都における2011年の麻しんの流行状況を把握し,麻しん排除に向けて,今後の対策へ反映させることである。方法 感染症発生動向調査事業によって2011年に都内で報告された麻しん患者の発生届と麻しん調査票の内容を対象とした。年齢階級別,遺伝子型別,ワクチン接種歴別の発生状況,発生届の取り下げ状況,遺伝子検査結果別の IgM 抗体検査結果と検体採取日の関係等について分析を行った。結果 2011年の麻しん患者報告数は178件で,13週から24週にかけて一つのピークを形成し,この期間に128件(71.9%)の報告が集中していた。1~4 歳が40件(22.5%)で最大で,20歳代と30歳代がそれぞれ34件(19.1%)であった。麻しん患者が 2 人以上発生した施設数は 6 か所,1 事例の患者数は 4 人以下にとどまり,散発例がほとんどであった。1~4 歳の年齢層を除くすべての年齢層で,接種歴が無いか不明が過半数を占めた。PCR 遺伝子検査で検出された麻しんウイルスの遺伝子型は主に D4 型,D9 型で,2008年まで国内流行株の中心だった,いわゆる土着株である D5 型ウイルスはみられなかった。結論 2011年の麻しんの流行は,海外から持ち込まれたウイルス株によるものであった。2007年,2008年のような大流行に至らなかったのは,発生後の関係機関の対応が迅速かつ適切になったことと感受性者が減少したことが影響していると思われる。麻しん排除に向けて,引き続き麻しんワクチン接種率の向上に努めること,麻しん疑い患者に確実に遺伝子検査を実施し,的確なサーベイランスを実施することが重要と考えられた。
著者
池田 一夫 灘岡 陽子 神谷 信行
出版者
特定非営利活動法人 化学生物総合管理学会
雑誌
化学生物総合管理 (ISSN:13499041)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.97-107, 2010 (Released:2010-05-28)
参考文献数
11

疾病動向予測システムを用いて、人口構造が自殺に与える影響について分析した。日本においては、近傍世代と比較して出生数が多い1880年代世代、昭和一桁世代、団塊世代及び団塊ジュニア世代で自殺死亡率が高いことが明らかとなった。この出生数の多い世代で自殺死亡率が高くなるという傾向は、程度の差はあれフィンランドやアメリカなどの先進各国でも観測された。相対的に出生数の多い世代の自殺死亡率が近傍世代よりも高くなることから、その世代が当該国の自殺好発年齢に達した時は、自殺者数はより大幅に増加するものと予測される。したがって、今後は、人口構造を十分考慮して自殺対策を構築していくことが重要である。