著者
山本 勇麓 熊丸 尚宏 林 康久 木村 繁和 深水 清
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.19, no.9, pp.1168-1174, 1970-09-05 (Released:2010-05-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

溶媒抽出に基づくクロム(VI)の新しい吸光光度法を開発した.適量のトリス(1, 10-フェナントロリン)鉄(II)キレート陽イオンが水相に存在するとクロム(VI)が選択的にニトロベンゼンに抽出されることを見いだした. pH 3~4の範囲で金属キレート濃度をクロム(VI)の50倍過剰に保てば一定の抽出が得られた.水相中に存在していたクロム(VI)濃度が62.5μg/25 ml以下の範囲で,抽出相のλmax(516mμ)の吸光度とクロム濃度との間には直線性が成立した.抽出種は微酸性におけるクロム酸イオンの平衡定数から考えて[Fe(phen)32+]・[HCrO4-]2と推定された.抽出相の呈色強度は24時間の放置でもほとんど一定であった. 2.08μg/mlクロムの11試料についての標準偏差は,平均吸光度0.4001に対して0.52%であった.多量の鉄(III)はかなりの負誤差を与えるので,メチルイソブチルケトン-iso酢酸アミル混合溶媒による抽出で鉄(III)を除去する方法を検討した.クロム(III)の酸化には過酸化水素水を用いた.純鉄をマトリックスとしたクロム(III)から得た検量線はやや低いクロムの回収率を示すが,この方法を鉄鋼中のクロムの分析に応用してよい結果を得た.
著者
原 茂樹 松尾 博 熊丸 尚宏
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.503-507, 1986-06-05
被引用文献数
2 3

金,白金をクロロ錯イオンとした試料溶液にヨウ化カリウム溶液並びにテトラデシルジメチルベンジルアンモニウム(ゼフィラミン)溶液を加えると,金(III),白金(IV)はそれぞれヨード錯イオンとしてゼフィラミンとイオン対を形成し,クロロホルムによって定量的に抽出される.この溶媒抽出系を利用する金,白金の同時黒鉛炉原子吸光定量法について検討した.水相/有機相の体積比(V_w/V_o)が15ml/2mlの場合,水相中のヨウ化カリウム濃度を0.06〜0.25M,又,ゼフィラミン濃度を5×10^<-4>〜4×10^<-3>Mに保てば,金(III)又は白金(IV)は4M塩酸酸性からpH11付近までの検討範囲において定量的に抽出される.検量線は水相中の金(III)の濃度が1.0μg/15ml(67ng/ml),白金(IV)の濃度が20μg/15ml(1.3μg/ml)までの簡囲で直線性を示し,1%吸収感度は金について0.21ng/ml,白金については7.9ng/mlであった.金(III)を0.25μg,白金(IV)を10μg含む水相について10回の繰り返し実験によって求めた相対標準偏差は金について2.3%,白金については2.4%であった.金(III)に対する銅(II)の干渉は抽出時に水相中に1,10-フェナントロリンを添加することにより,又,白金(IV)に対するクロム(VI),マンガン(VII),ヨウ素酸,過ヨウ素酸の各イオンの干渉はヒドロキシルアンモニウムの添加により,それぞれ除去することができた.本法を銀-白金-金合金試料中の金,白金の定量に応用し,満足な結果を得た.
著者
熊丸 尚宏 藤原 照文
出版者
広島大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

これまでのICP発光分析法でも予備検討を踏まえて、酸分解などを行わず、まず手始めに固体試料のままでPbを定量する方法を検討した。Pbの含有量既知の試料として、NIESやNISTの「環境標準物質」を取り上げ、これを紛砕して使用した。その結果、これらをサンプルキュベット反応容器に取り、徐々にこの温度を上昇させ、最終的には約850℃に保ちながら炭化と灰化を連続的に行って、有機物を完全に揮散させ、その後、急激に温度を約2500℃まで上げてPbを気化させ、そのままオンラインでICP-MS装置へ導入する手法が確立できた。固体試料の直接定量において最も煩雑で精密さを要する操作は、その試料の秤量である。数mgの試料を直接秤取するには、特殊なミクロ天秤を用いる必要がある。ここでは灰か段階までには、ほぼ完全に揮散し、かつ目的成分の気化段階には影響を与えない有効なリン酸水素アンモニアを固体希釈剤として用い、約2倍程度に試料を希釈して通常の化学天秤でも容易に秤取できる方法を開発した。本研究の最大のポイントは、固体試料を、短時間にしかも完全に分解することが出来るか否かにある。通常は、試料を硝酸-硫酸ーリン酸などを用いて分解を行うが、これらの酸はタングステン製サンプルキュベットを腐蝕させるので、使用できない。ここでは、これまでの酸分解用の試薬に代わる分解試薬を検索した結果、(CH_3)_4NOHが好結果を与えることを見い出した。この添加剤は、灰化してもなお分解・揮散することなく残存する成分による干渉を防ぎ、気化段階における目的成分化学種を同一に揃えて気化させるマトリックス修飾剤としても働くことを明らかにした。また、検出器としてICP-MSを使用することにより、^<207>Pbと^<208>Pbの同位体比の測定も可能となった。
著者
宗森 信 山本 勇麓 日色 和夫 田中 孝 熊丸 尚宏 林 康久 都甲 仁
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.T19-T23, 1978-05-05

2種類の合成試料水中のヒ素の分析に関する共同実験を行った.参加分析所は12箇所,分析方法はJISK0102-1974に規定されたジエチルジチオカルパミン酸銀-吸光光度法を用い,各分析所では1口2回ずつ3日間で計6回の分析を実施した.試料Aではヒ素含有量の標準値0.0220ppmに対し定量値の総平均値が0.0222ppm,試料Bでは0.0250ppmに対し0.0255ppmであった.試料Aでは定量結果は正確であったが,分析所間のばらつきが比較的大きく,又3箇所の分析所では分析所内平均値が管理限界を越えていた.一方,共存物質が存在する試料Bでは分析所内及び所間のばらつきは小さかったが,量結果に偏りがあった.