著者
甲斐 由美 境 哲文 片山 健二 熊谷 亨 石黒 浩二 中澤 芳則 山川 理 吉永 優
出版者
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
農研機構研究報告 九州沖縄農業研究センター = Bulletin of the NARO, Agricultural Research for Kyushu Okinawa Region (ISSN:24328103)
巻号頁・発行日
no.66, pp.87-119, 2017-03

「べにはるか」はいもの外観が優れる「九州121 号」を母,いもの皮色や食味が優れる「春こがね」を父とする交配組合せから選抜したサツマイモ新品種である。蒸しいもおよび焼きいもの糖度(ブリックス)が「高系14 号」より高く,食味が優れる。萌芽性は中,草型はやや匍匐型で,いもの皮色は赤紫,肉色は黄白,形状は紡錘形,いもの外観はやや上である。育成地におけるいもの収量は「高系14 号」を上回るが,試験地によっては,「高系14 号」並みあるいはやや劣る場合がある。掘取直後の蒸しいもの肉質はやや粉質であるが,貯蔵により粘質化しやすい。蒸切干(干しいも)の肉色は黄色で,食味はやや上~上と優れる。サツマイモネコブセンチュウに強く,ミナミネグサレセンチュウにやや強い。黒斑病抵抗性は中~やや弱であり,貯蔵性は易である。"Beniharuka" is a new sweetpotato cultivar for table use, developed at the KyushuOkinawa Agricultural Research Center. It was evaluated at prefectural agriculturalexperiment stations as breeding line "Kyushu No. 143" and was registered as a new variety in 2010."Beniharuka" is the progeny from a cross between "Kyushu No. 121" and "Harukogane" conducted at the Sweetpotato Breeding Laboratory in 1996. "Kyushu No. 121" is a cultivar for table use, especially suitable for baked root, while "Harukogane" is a cultivar for table use with good skin color and good taste. Starting from 278 seeds sown in the nursery, selection was carried out based on field performance, taste, and appearance of storage root."Beniharuka" exhibits moderate sprouting ability and a slightly prostrate plant type. The top leaves are light green. The mature leaves are green and cordate. The vine diameter is intermediate with a somewhat short internode length. Pigmentation by anthocyanin is pale in the veins and is very pale in the vine nodes. The storage roots are uniformly fusiform with reddish purple skin and cream flesh. The steamed root texture is slightly dry just after harvesting, but it becomes slightly moist after about one month storage and its taste becomes sweeter. Steamed and cured slices made from "Beniharuka" are yellow and taste good.The yielding ability of "Beniharuka" is comparable to that of "Kokei No. 14", a leading Japanese variety for table use. The dry matter content of "Beniharuka" is higher than that of "Kokei No. 14" ."Beniharuka" is intermediately resistant or slightly susceptible to black rot (Ceratocystis fimbriata), somewhat resistant to root lesion nematode (Pratylenchus coffeae), and resistant to root knot nematode(Meloidogyne incognita).The storage ability of the storage roots is sufficient throughout winter.
著者
中村 善行 藏之内 利和 石田 信昭 熊谷 亨 中谷 誠
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.576-585, 2007-10-05
参考文献数
24
被引用文献数
4 4

サツマイモ蒸切干(干しいも)は伝統的なサツマイモ加工品で,茨城県,静岡県など東日本の一部地域では重要な地域特産品の一つとなっている.しかし近年,安価な外国産品の輸入が増加し,国内産地を維持するうえで品質向上が急務となっている.そこで,蒸切干片の中央部が白色不透明化して硬くなり,商品性が失われる重大な品質低下障害である中白の原因を究明するべく,品種や栽培条件の違いに基づく障害の発生機作を検討した.本障害は,蒸切干用主力品種「タマユタカ」,でん粉原料用品種「ハイスターチ」などのでん粉含有率の比較的高い品種で発生しやすく,低でん粉品種「沖縄100号」や低糊化温度品種「クイックスイート」などでは発生が少なかった.また,MRI画像解析などから,供試したいずれの品種でも蒸煮塊根組織の中白部分は正常部分に比べて水分含量が低いことが判明した.一方,「タマユタカ」塊根の正常部分と中白発生予測部分との間にはでん粉含有率,可溶性糖類含量および糖化酵素β-アミラーゼの活性に顕著な差異は認められなかったが,「ハイスターチ」塊根の中白部分ではでん粉蓄積の不足した細胞群が観察された.さらに,「タマユタカ」では,塊根肥大期の土壌乾燥によって収穫した塊根の含水率が低下すると中白の発生が顕著になった.以上の結果から,中白障害の発生には塊根におけるでん粉の糊化不良や蓄積不足が関与しており,「タマユタカ」においては,土壌乾燥に伴う塊根の水分低下が蒸煮時のでん粉糊化不良を招き,障害の発生が助長されると考えられる.
著者
熊谷 亨 山川 理 吉永 優
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-16, 2002-03

"コナホマレ"は"ハイスターチ"を母、"九系82124-1"を父とする交配組合せから選抜したカンショ新品種であり、"九州126号"の系統名で関係各県に配布し、2000年8月農林水産省育成品種"かんしょ農林52号"として命名登録された。萌芽性は中、草型は匍匐型、茎はやや細く、茎の長さはやや長い。いもの皮色は淡褐、肉色は淡黄白、形状は短紡錘形、大きさは中、いもの揃いは中、外観はやや上である。いも収量、でん粉歩留は"コガネセンガン"や"シロユタカ"より高く、でん粉収量は"コガネセンガン"や"シロユタカ"を大きく上回る。黒斑病にはやや弱く、サツマイモネコブセンチュウにはやや強、ミナミネグサレセンチュウには中の抵抗性を示す。貯蔵性はやや難である。暖地の畑作地帯に適するが、当面、でん粉原料用や焼酎原料用として鹿児島県や宮崎県を中心に普及する。
著者
熊谷 亨 山川 理 吉永 優 石黒 浩二 日高 操 甲斐 由美
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-16, 2002-03

"コナホマレ"は"ハイスターチ"を母、"九系82124-1"を父とする交配組合せから選抜したカンショ新品種であり、"九州126号"の系統名で関係各県に配布し、2000年8月農林水産省育成品種"かんしょ農林52号"として命名登録された。萌芽性は中、草型は匍匐型、茎はやや細く、茎の長さはやや長い。いもの皮色は淡褐、肉色は淡黄白、形状は短紡錘形、大きさは中、いもの揃いは中、外観はやや上である。いも収量、でん粉歩留は"コガネセンガン"や"シロユタカ"より高く、でん粉収量は"コガネセンガン"や"シロユタカ"を大きく上回る。黒斑病にはやや弱く、サツマイモネコブセンチュウにはやや強、ミナミネグサレセンチュウには中の抵抗性を示す。貯蔵性はやや難である。暖地の畑作地帯に適するが、当面、でん粉原料用や焼酎原料用として鹿児島県や宮崎県を中心に普及する。