著者
片岡 邦好
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.84-99, 2017

<p>本論考では,オバマ上院議員が民主党代表として大統領選への出馬を決定づけた,2008年のアイオワ州における勝利宣言の演説を題材にして,オバマ氏の言語的,身体的表象のみならず,TV放映による戦略的なメディア実践をマルチモーダル分析により考察する.それをもとに,聴衆,さらには視聴者に訴える演説の効果は,語り手個人の技能に負うばかりではなく,聴衆とメディアによる多層的な共謀関係により達成されることを検証する.その目的のために,テクスト構築,演説実践,放映実践の3層からなるパフォーマンスを想定し,(1) 演説内容がフラクタル的な3連構造に基づく詩的な意匠により練り上げられ,(2) 演説におけるオバマ氏の視線,ジェスチャー,音調的な特徴などが聴衆に発話境界を予告して双方の相互行為の達成に寄与し,(3) TV放送スタッフはそのような暗黙知を援用して歴史的勝利を伝える映像を効果的に演出していることを述べる.</p>
著者
片岡 邦好
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.61-81, 2011-09-30
被引用文献数
2

本稿では,日本人ロック・クライマーによる経路探索の議論に焦点を当てて,ランドマークの空間関係や参与者による移動の描写,そして彼らの身体表象がどのように包括的な「認知地図」の構築と変遷に関わるかを論じる.そこでまず,(1)従来曖昧なまま語られてきた「間主観的」視点を本論考の目的に沿って定義し,(2)経験基盤の異なる参与者がマルチモーダルな表象を通じて達成する視点取りの様式を考察する.そして,観察された発話と身体の協調と融合は,「当事者/観察者」および「内在的/外在的」視点の採用により特徴付けられること,さらに,異なる立地点からの間主観的視点が創発することで相互理解が進展する過程を検証し,談話において社会的に構築,維持される認識とその変遷について,「場の交換」(Duranti, 2010)の果たす役割と可能性を提案する.
著者
藤井 洋子 井出 祥子 阿部 圭子 片岡 邦好 片桐 恭弘 堀江 薫 植野 貴志子 菅原 和孝 石崎 雅人
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

この3年間の研究成果は、(1)2009年3月、2011年2月の東京国際ワークショップにて、「場の理論」についての理解を深められたこと、(2)アラビア語のデータ収集とその分析をしたこと、(3)国際語用論学会にて、日本語と英語とアラビア語の比較研究を発表したこと、(4)2009年にJournal of Pragmaticsの『解放的語用論』特集号第一号を発行できたことなどが主な成果といえる。