著者
越智 鬼志夫 片桐 一正
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.399-403, 1974
被引用文献数
2

幼齢林である高知県須崎市灰方と浦の内,和歌山県西牟婁郡串本町潮岬と老齢林である香川県高松市屋島の任意に選んだ枯損木から脱出した成虫の体の大きさ等を調査したところ,次のような結果を得た。1) 各測定値(頭幅,前ばね長,後ばね長,後たい節長,後けい節長,体重)の大きさは,平均値で幼齢林のものが小さく,老齢林のものが大きくなっているが,形状比(後たい節長/頭幅,後ばね長/後たい節長)は,ほとんど変わらない。2) 前ばね(さやばね)長は,モードでは老齢林のものが右に移行しているが,全体的にみた場合,右傾歪偏の型となっている。3) 体重は測定値の中で一番バラツキが大きかったが,老齢林のものほど重い個体が多くなっている。4) 後ばね長と乾体重の関係は,飽和型曲線となっていて,老齢林のものは体重の重い個体が多いので,幼齢林の延長線上にプロットされる個体が多くなっている。したがって,両者の比も老齢林のものが大きい。
著者
鈴木 和夫 福田 健二 井出 雄二 宝月 岱造 片桐 一正 佐々木 恵彦 斯波 義宏
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1989

1.材線虫病感染後の光合成・蒸散などのマツの生理的変化と萎凋・枯死機構との関連について検討を加えた結果、これらの生理的変化はキャビテーションが或る程度以上進行した後に、水ストレスの発現と同時に、あるいは、それ以降に生ずる現象であることが明らかにされた。2.材線虫の病原性と電解質の漏出現象との関連について細胞レベルで検討した結果、病原力の強弱に応じてマツ組織への影響が異なり、その強さに応じて電解質の異常な漏出が生じることが明らかにされた。3.材線虫病感染組織で産生されるセルラーゼについて検討した結果、このセルラーゼは真核生物起源であり、生きた細胞からの電解質の漏出を高めることが明らかにされた一方、抵抗性マツでは、この電解質の漏出は殆ど見られない。4.強・弱病原線虫を用いて、マツ組織細胞の応答について組織化学的に検討を加えた結果、DAPI染色によって組織細胞の生死の判定が容易となり、この方法を用いて病原性の差異を判別することが可能となった。5.誘導抵抗性の発現について検討した結果、誘導抵抗性はマツ樹体にストレスがかからない条件下、すなわち気象環境によるストレスと弱病原線虫によるストレスが、あるバランスを保った時にのみ誘導される現象であると考えられた。