著者
小竹 良文 豊田 大介 篠田 重男 牧 裕一
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.549-555, 2014 (Released:2014-09-06)
参考文献数
16

大量出血に対して,代用血漿剤は循環血液量の維持を目的として投与される.アルブミンより価格が安いが大量投与による副作用が懸念されるため,晶質液とアルブミンによる循環血液量維持のギャップを埋めるために用いることが多い.代謝が速やかで,凝固系への影響の少ない中分子量低置換度のヒドロキシエチルデンプン(HES)製剤が主流である.近年,重症敗血症患者に対して高用量を連日投与した場合,腎機能に対して悪影響があることが示されているが,大量出血に対する蘇生として用いた状況では腎機能に対する悪影響は認められていないことから,蘇生目的に限り,投与上限以下であれば腎機能に対する悪影響の可能性は少ない.
著者
青山 幸生 牧 裕一 山本 達夫 広門 靖正 永田 勝太郎
出版者
公益財団法人 国際全人医療研究所
雑誌
全人的医療 (ISSN:13417150)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.22-28, 2020-01-25 (Released:2020-07-02)
参考文献数
13

全人的医療では,身体・心理・社会・実存レベルにおいて患者を理解することが必要であり,具体的方法論として,パソジェネシスand/orサルトジェネシス的アプローチを的確に,しかもタイムリーに実践できることが求められる.さて,全人的医療の主柱のひとつである,「患者固有の資源を見出し,それを活性化していく」ことは,まさにサルトジェネシス(健康創成論)の考え方であり,「資源」は具体的な「患者力」そのものであると考えられる.さらに患者がコヒアレンス感(sense of coherence; SOC,人生への対処姿勢,人生には意味があると思える感覚)をどの程度有しているかにより,資源をうまく活用し患者力をさらに高めていけるかの決め手となる.患者力を意識しながら,治療者,患者が相互主体的関係の中でともに資源(患者力)に気づいてそれらを活性化していくところに従来のパソジェネシス(病因追究論)単独でのアプローチとの大きな違いがある.今回,45歳女性で,抗うつ薬離脱時,その副作用により約10年間にわたり心身ともに苦しめられ,その間もともとあった多くの資源をベースに,家族や友人などの暖かい傾聴,受容,支えにより自身の患者力をさらに伸ばすことができた結果,ゆっくりではあるが夢に向かっての一歩を踏み出せた症例を経験したので合わせて報告したい.