著者
牧野 正直
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.25-36, 2010-02-01 (Released:2011-09-02)
参考文献数
18

本年(2009年)は、わが国においてハンセン病患者の公的機関への隔離・収容が開始されて丁度100年目にあたる。すなわち、政府は1907(明治40)年法律第11号「癩予防ニ関スル件」を公布し1909(明治42)年それを施行、放浪する患者の隔離・収容を開始した。 この小論で、わが国のハンセン病医療史において最も重要な事項の一つである、この法律の成立にかかわった医師、政治家、官僚がどのようなものであったかを検証した。するとこれは意外に少人数のエリート集団であり、一人ひとりが学閥・同門・同郷などといったしがらみで強く結びつけられていたことが明らかになった。 また、この法律は、二回の改正を経ながら89年間維持・継続されることになったが、この維持・継続のためには光田健輔を中心とした系類や光田イズムを信奉し続けた多くの療養所所長たちが浮かび上がって来た。 全療協が主張する「100年の“記念”でも“祝賀”でもなく“総括”である」という言葉を重く受け止めたい。
著者
勝川 千尋 原田 七寛 津上 久弥 牧野 正直
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.1160-1166, 1993-11-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
10

皮膚科領域の各種感染症治療における, ホウ酸利用の可能性について検討を行った。この目的のため, 標準菌株および臨床患者から分離された病原微生物に対するホウ酸の抗菌力の測定を行い, 以下の成績を得た。1.検査したすべての細菌および真菌が, ホウ酸1%(wt/vol) の濃度で発育が阻止され, 高濃度のホウ酸に耐性の菌は認められなかった。2.ホウ酸の各種微生物に対する発育阻止濃度は0.125%-1%の範囲に分布し, 菌種毎に以下のような特徴がみられた。同一菌種間は似た発育阻止濃度値を示したが, 同じ属であっても菌種が異なると, 発育阻止濃度も異なった値を示した。総じてグラム陽性菌に対する発育阻止濃度が高く, グラム陰性菌に対しては低かった。しかし, ブドウ球菌属中のStaphyloooccus aureusだけは異なり, Staphylococcus epidermidis やStaphylococcus hominis などのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌に対する発育阻止濃度が高いのに対して, S. aureusに対しては低かった。3.S. aureusは近年, 多剤耐性化が問題となっているが, ホウ酸の発育阻止濃度はmethicillin-resistant S. aureus (MRSA) およびmethicillin-sensitive S. aureus (MSSA) の間に差は認められなかった。また, 他の菌種もホウ酸に対して耐性化の傾向は認められなかった。今回検査したすべての細菌および真菌に対する発育阻止濃度が1%以下であることから, 2-3%の低濃度での安全性の高い利用方法を考案することにより, ホウ酸を再び活用できる可能性があると考えられた。特にMRSAに対して耐性化の傾向の認められない点はMRSA感染予防の1つの打開策となり得ることを示唆している。
著者
牧野 正直
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.25-36, 2010-02-01
参考文献数
18

本年(2009年)は、わが国においてハンセン病患者の公的機関への隔離・収容が開始されて丁度100年目にあたる。すなわち、政府は1907(明治40)年法律第11号「癩予防ニ関スル件」を公布し1909(明治42)年それを施行、放浪する患者の隔離・収容を開始した。</br> この小論で、わが国のハンセン病医療史において最も重要な事項の一つである、この法律の成立にかかわった医師、政治家、官僚がどのようなものであったかを検証した。するとこれは意外に少人数のエリート集団であり、一人ひとりが学閥・同門・同郷などといったしがらみで強く結びつけられていたことが明らかになった。</br> また、この法律は、二回の改正を経ながら89年間維持・継続されることになったが、この維持・継続のためには光田健輔を中心とした系類や光田イズムを信奉し続けた多くの療養所所長たちが浮かび上がって来た。</br> 全療協が主張する「100年の"記念"でも"祝賀"でもなく"総括"である」という言葉を重く受け止めたい。