著者
石井 則久 鵜殿 俊史 藤澤 道子 伊谷 原一 谷川 和也 宮村 達男 鈴木 幸一
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.29-36, 2011-02-01
参考文献数
25
被引用文献数
1

&nbsp;&nbsp;Leprosy is suspected to develop after a long period of latency following infection with <i>Mycobacterium leprae</i> (<i>M. leprae</i>) during infancy, but definitive proof has been lacking. We found a rare case of leprosy in a chimpanzee (<i>Pan troglodytes</i>) born in West Africa (Sierra Leone) and brought to Japan around 2 years of age. At 31, the ape started exhibiting pathognomic signs of leprosy. Pathological diagnosis, skin smear, serum anti-phenolic glycolipid-I (PGL-I) antibody, and by PCR analysis demonstrated lepromatous leprosy. Single-nucleotide polymorphism (SNP) analysis verified the West African origin of the bacilli. This occurrence suggests the possibility of leprosy being endemic among wild chimpanzees in West Africa, potentially posing a zoonotic risk.
著者
與儀 ヤス子 藤村 響男 鈴木 幸一
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.197-204, 2008-09-01
参考文献数
24
被引用文献数
1

1873年のらい菌発見から長い年月に渡って多くの研究者がらい菌の動物移植実験に尽力してきたが、1960年の Shepard による foot-pad 法の開発後はめざましい成果が残された。T-Rマウス、無胸腺 (ヌード) マウスのらい菌動物移植への導入、また、アルマジロ、チンパンジーやマンガベイサルの自然発症例が報告され、ハンセン病が人畜共通伝染病であることがその後のわずか十数年で確認された。増菌されたらい菌は大量菌を必要とする分野への供給に役立ち、らい菌の動物移植研究の成果はハンセン病医学に大きく貢献した。われわれがらい菌増殖用の tool として開発したコンジェニック高血圧ヌードラット (SHR. F344-Foxn1<sup><i>rnu</i></sup>) はIL-10産生能が高く、らい菌に対する感受性能が優れていた。本ヌードラット (<i>rnu/rnu</i>) に接種されたらい菌は接種部および非接種部位に肉眼的らい性腫瘤を作りながら増殖、全身化していく独特のらい菌感染像を呈すことから、ヒトL型ハンセン病患者の実験モデル動物として有用であり、同腹仔有胸腺ラット (<i>rnu/+</i>) では、らい菌感染後24時間目頃から、らい菌特異的免疫機構の成立を示唆する像が観察され、6ヶ月後には、リンパ球に幾重にも取り囲まれて、らい菌が殺菌され排除される像が観察されたことから、らい菌の宿主からの防御機構を研究する動物モデルとしてヌードラットとともに有用である。
著者
森 修一 加藤 三郎 横山 秀夫 田中 梅吉 兼田 繁
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.47-63, 2004-02-28
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究は戦前、日本に唯一存在したハンセン病患者の自由療養地である群馬県吾妻郡草津町湯の沢部落の社会科学的分析の中から、何がハンセン病患者の隔離の二つの側面である「迫害されている患者の社会の圧力からの保護」と「感染源である患者からの社会の防衛」のダイナミズムを後者への優位に導いていったのかを明らかにすることを目的とするものである。その過程は湯の沢部落の実態の解明(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究I、II」)、自由療養地議論の展開と消滅の過程の検証と湯の沢部落の関わり(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究III」)、湯の沢部落消滅後にその精神が日本の隔離政策に与えた影響(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究IV」)などの研究の総体である。<BR>本稿では戦後、栗生楽泉園から始まる患者運動を通して、湯の沢で培われた精神は楽泉園内でも生き続け、患者運動の戦端を開き、「特別病室」を廃止、職員の不正を暴き、やがて多磨全生園と共闘し、「全国癩療養所患者協議会」を生み、絶対隔離政策と対峙する力を形成する様相を描いた。併せて、「特別病室」設置の背景、戦中を中心としての療養所内の混乱の様相とその要因を述べた。
著者
森 修一 加藤 三郎 横山 秀夫 田中 梅吉 兼田 繁
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.217-237, 2003-08-30
参考文献数
59
被引用文献数
1

本研究は戦前、日本に唯一存在したハンセン病患者の自由療養地である群馬県吾妻郡草津町湯の沢部落の社会科学的分析の中から、何がハンセン病患者の隔離の二つの側面である「迫害されている患者の社会の圧力からの保護」と「感染源である患者からの社会の防衛」のダイナミズムを後者への優位に導いていったのかを明らかにすることを目的とするものである。その過程は湯の沢部落の実態の解明(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究1、II」)、自由療養地議論の展開と消滅の過程の検証と湯の沢部落の関わり(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究III」)、湯の沢部落消滅後にその精神が日本の隔離政策に与えた影響(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究IV」)などの研究の総体である。<BR>本稿では自由療養地構想から絶対隔離政策への変遷過程を国会での議論、内務省の政策およびその意思決定過程、自由療養地議論の中の湯の沢の役割、などから描いた。加えて、自由療養地を望む患者たちの意見とその背景を示すと共に世界の隔離政策と日本の隔離政策をその歴史的過程を含みながら対比、考察した。
著者
牧野 正直
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.25-36, 2010-02-01
参考文献数
18

本年(2009年)は、わが国においてハンセン病患者の公的機関への隔離・収容が開始されて丁度100年目にあたる。すなわち、政府は1907(明治40)年法律第11号「癩予防ニ関スル件」を公布し1909(明治42)年それを施行、放浪する患者の隔離・収容を開始した。</br> この小論で、わが国のハンセン病医療史において最も重要な事項の一つである、この法律の成立にかかわった医師、政治家、官僚がどのようなものであったかを検証した。するとこれは意外に少人数のエリート集団であり、一人ひとりが学閥・同門・同郷などといったしがらみで強く結びつけられていたことが明らかになった。</br> また、この法律は、二回の改正を経ながら89年間維持・継続されることになったが、この維持・継続のためには光田健輔を中心とした系類や光田イズムを信奉し続けた多くの療養所所長たちが浮かび上がって来た。</br> 全療協が主張する「100年の"記念"でも"祝賀"でもなく"総括"である」という言葉を重く受け止めたい。
著者
後藤 正道 石田 裕 儀同 政一 長尾 榮治 並里 まさ子 石井 則久 尾崎 元昭
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.157-177, 2000-11-30
参考文献数
34
被引用文献数
15 2

日本ハンセン病学会・医療問題委員会・治療指針と治癒判定基準に関する小委員会(指針委員会)では、学会としての標準的なハンセン病治療指針について検討を行い、以下の方針を決定した。すなわち、WHOの多剤併用療法(MDT)を基本とし、少菌型では6ヶ月間のWHO/MDT/PBで良いが、多菌型(MB)の治療を1年間で終了する1997年改訂の治療方針では、菌数の多い症例には不充分であると判断した。そこで、(A)MBで治療前に菌指数BI(3+)以上の場合、原則としてWHO/MDT/MBを2年間継続する。(A-1)2年間終了後、菌指数の低下が十分(BIが2段階以上低下)あるいはBI(3+)未満ならば、その後は抗炎症作用のあるDDSとB663の2剤で、菌検査が陰性で活動性病変が見られなくなるまで維持療法を行う。(A-2)2年間終了後、菌指数の低下が不充分(BIの低下が2未満)またはBI(2+)以上ならば、菌検査が陰性で活動性病変が見られなくなるまでWHO/MDT/MBを続ける。また、(B)MBで治療前にBI(3+)未満あるいは発症後極めて早期(6ヶ月以内)でBI(3+以上)の場合には、原則としてWHO/MDT/MBを1年間行う。(B-1)治療開始後1年以内に菌陰性化して活動的臨床所見がなければ、維持療法なしで経過観察とする。(B-2)菌陽性あるいは活動性臨床所見があれば、WHO/MDT/MBをあと1年間行うこととした。診断の概略、治療の目的と注意点、薬剤の特徴、障害の予防などについても要点を記載した。
著者
小原 安喜子
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.345-351, 1998-07-31
参考文献数
4
被引用文献数
1

ハンセン病(以下ハ病と略す)医療は既に指摘があったとおり大きく変動している。今、医療史の検証にたえる化学療法を形成することは、ハ病医療に携わる者への時代的課題といえよう。国の内外に蓄積されている基礎研究の成果、臨床経験を結集してこの課題を担い、国際化の進む日本でグローバルなハ病コントロール完了に向けて責任を果すことに努める学会であることを願う。<BR> ハイチ共和国中部は、最初からMDT-WHOにより治療が行なわれた。又、WHOが提案した教育入院を実施した数少ない地域の一つである。コントロール開始から15年になるこの地のハ病に関わって6年、ここで経験したことを化療を軸にふり返ると共に流行パターンについての考察を試みる。
著者
成田 稔 小野田 育代 時崎 掬子 茅野 タヅ子 高崎 敬子 坪倉 功子 須波 紀久美
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.277-285, 1998-07-31
被引用文献数
1 1

柄沢のボケの臨床的判定法を基本にして、老人たちと最もかかわりの深い看護婦や介護員らにとってわかりやすい5段階評価票を作成し、全生園と愛生園との65歳以上の老人を対象に痴呆の有病率を調査した。 その結果は、生理的なボケを含むと考えられる軽の軽を除くと、全生園の14.39%に対して愛生園は5.72%と極端な差を認めた。この理由を、両隣との交流に難のある全生園と、それが容易な愛生園との不自由者棟の造りの違いから考えてみた。また一般の老人に比較して、ハンセン病療養所では痴呆の有病率がかつては低かったにもかかわらず、最近では逆に高いか、あるいは高くなりつつあるのは、絶対隔離の時代に培われた孤独に耐える強い精神力が、40年、50年の長い年月を経て次第に弱まり、そこを支える子どもや孫が傍にいないことに関連づけてみたが、今後いっそうの検討が必要であろう。
著者
儀同 政一 並里 まさ子 熊野 公子 後藤 正道 野上 玲子 尾崎 元昭
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.65-67, 2004-02-28
被引用文献数
5 1

日本ハンセン病学会は、2000年に「ハンセン病治療指針」<SUP>1)</SUP>発表し、化学療法をはじめ診断と治療、後遺症の予防と治療についてのガイドラインを、2002年には、治療指針に基づいて治療を受けた患者の「ハンセン病治癒判定基準」<SUP>2)</SUP>を示した。ハンセン病の治療は、治療指針またはWHO/MDT(1997)<SUP>3)</SUP>に基づいて治療されるが、すでにMDT3薬中2薬に対しては多くの耐性報告がある。その対応策としてニューキノロン系薬であるオフロキサシン(OFLX・商品名タリビット)が多用された結果、OFLX耐性も増加してきている。厚生労働省「新興・再興感染症研究事業ハンセン病感染の実態把握及びその予防(後遺症の予防を含む)・診断・治療法に関する研究」の一環として、ニューキノロンの使用基準に関する小委員会はOFLXの耐性症例を調査しOFLX耐性の発生を防止する方法を検討した。その結果を踏まえて、小委員会はここにニューキノロンの使用指針を提示する。