著者
牧野 由香里 福田 惠子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.79-92, 2005

本研究は, 遠隔ネットワーキングによる授業改善の実践共同体において, 高等教育の現場教師が共同体に参加する過程(カリキュラムの体験, 実施, 評価)を分析した.その結果, 古参者の象徴的な働きかけに対して新参者が価値的コミットメントと解釈の努力で応える, という条件が満たされる場合, 物理的空間を共有しない遠隔地においても, 十全的参加者が授業設計の熟練に至る可能性が示唆された.
著者
牧野 由香里 永野 和男
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.225-235, 2002-03-20
被引用文献数
7

新しい教育課程ではコミュニケーション能力の育成を重視しているが,理論的な枠組みや具体的な教育方法は十分に検討されていない.著者らは,理論と演習体験を結びつけたコミュニケーション教育カリキュラム(スピーチ演習パッケージ)を間発した.平成9年度から平成11年度の3年間に大学生を対象に行ったカリキュラム開発の分析結果から,次の3点が明らかになった.(1)論理体系と説得表現の活用能力(日本と欧米に発達した論理体系および説得表現を場面や聞き手の状況に応じて使い分ける能力)の育成に成果を得た.(2)自己評価の能力(スピーチが含む要素を論理体系のカテゴリーごとに分類し,優れた点や問題点を判断する能力)の育成に成果を得た.(3)自己評価能力の育成は,論理体系の活用能力の育成に貢献し,その学習効果は教師の評価を一方的に受ける体験を上回った.
著者
牧野 由香里
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.89-98, 2004
参考文献数
9
被引用文献数
5

本研究は,論理構築力とメディア活用能力の分析を中心に,グループ学習(スピーチ演習カリキュラム)の学習者一人一人に対する効果について考察する.関西大学の外国人留学生を対象とした実施(2002年〜2003年の計2回)における分析から,グループ学習の成果として,論理構築力の向上が確認できた.ただし,この効果について,(1)使用言語(第一言語/第二言語),(2)言語運用能力(日本語能力レベル),(3)学習環境(対面授業/オンライン学習)との関係性は確認できなかった.このことから,グループ学習の効果(ここでは論理構築力の向上)は,学習者のメディア活用能力に必ずしも依存しないことが示唆された.