著者
永野 和男
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.157-162, 2006-12-20 (Released:2016-08-03)
参考文献数
18
被引用文献数
3

わが国の情報教育の目標は1997年に定められ,2002年からの学習指導要領では,情報に関する教科や科目,総合的な学習の時間で,正規のカリキュラムとして実施されるようになった.しかし,その理念や計画された内容に対して,必ずしも予定通りの実績を挙げているとはいいがたい.ここでは,わが国の情報教育は,どのような目標をもち,どのような展開が期待されてきたのか.また,問題点はどこにあり,どのように解決していかなければならないか,情報教育の創成期の理念から現状の問題点までを解説する.
著者
永野 和男 飯田 史男 奥村 英樹
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.69-84, 1993-11-20
被引用文献数
3 2

コンピュータゲーム的な環境による学習課題の実施が,年齢の低い児童や精神遅滞児の認知能力にどのような影響を与えるかを実験的に明らかにした.開発した学習用ゲームは,コンピュータとの対戦型の神経衰弱ゲームと,学習用に改良したテトリスである.約2ヵ月の実施の後,初期と後期のゲーム中の被験者の方略を分析した結果,ゲームとともに記憶方略についての学習や,図形を認知し,適切な場所へ移動する判断力がのびていることが確認された.また,事前,事後の知能テストにおいても,精神年齢の伸びが認められた,さらに,それぞれに関連する学習課題に対する達成率が未試行者に比較して伸びていることが確認された.
著者
永野 和男 園屋 高志 加藤 直樹 村瀬 康一郎 近藤 勲 生田 孝至
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は,(1)企業等の協力あるいは教師や研究グループによる自主的な活動により各地で多数試行されている「ネットワークを利用したマルチメディア情報通信を学校教育に活用する種々のプロジェクト」の動向を把握し,適切に評価することにより,今後の教育実践及び必要な条件等に関して指針を与える。(2)これまで蓄積されてきた教育情報を相互に利用できるような仕組みを開発し,マルチメディアを中心とした教育情報の組織的な流通の促進を支援する。(3)マルチメディア及び情報通信を用いた教育実践の評価の枠組みと学習の評価の枠組みを作成し,それによる評価分析により,今後の教育実践のあり方等に関する指針を示す。ことである。平成8年度は,前年度と同様,分担者を(A)小・中学校におけるマルチメディア利用・ネットワーク利用の実践に関する試行および調査検討(B)教師支援のためのマルチメディア利用・ネットワーク利用の実践に関する試行および調査検討(C)マルチメディア・ネットワーク利用に関する教育的意義と評価方法の検討の3つのグループにわけて研究を進めた。(A)班では,遠隔共同学習,メディアキッズなど先進的な事例について,経過,成果の調査,問題点の検討をもとに,インターネットで実践できるカリキュラムのモデルとして「野菜・果物データベース」とその教材を開発し,実践してその実用性を評価した。さらに,これまで提供されてきたインターネットホームページを整備し,体験版のCD-ROMを作成して,実践校などに配布,啓蒙活動を進めた。(B)班では,前年度に,蓄積された教育情報(学習素材,メディア教材など)を各大学や各教育センターなどで利用できるように条件整備を図りながら、その教育利用の方法,成果についての実態調査を進めた。(C)班では,昨年に引き続き,Internet 100枚プロジェクトの課題研究,共同学習を中心に,経過,成果を追跡調査,技術的問題点,教師の意識の変容,教員養成の方法などを明らかにした。これらの成果は,最終報告書にまとめると同時に,文部省などに対して,今後進めるべき具体的政策を提言した。
著者
富田 眞治 山口 和紀 岡本 敏雄 美濃 導彦 中西 通雄 永野 和男 今井 慈郎 岡部 成玄 三尾 忠男
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

高等教育機関は独立行政法人化を含めた大学改革の中に在り、「教育」「研究」「社会貢献」の3つの課題に対し、鋭意検討中である。大学教育・研究の高度化・個性化と共に組織の活性化の中で、IT革命への積極的な対応を求められている。これはマルチメディア環境を多用することを念頭に置いており、目指す方向は、我々の研究領域と合致する。本研究組織も現状と今後を眺望し、(1)情報リテラシ教育、(2)専門課程教育、(3)教員養成向け教育、(4)新教育方法、の4つのグルーブを編成し、以下の多くの成果を得た。(1)は工学的な技術論理、情報倫理の基本理念の提言、情報リテラシ教育授業の研究、情報処理教育用適応型教材に関する研究、PC教育教材のDVD試作およびWebベースで行うe-Learningのコース設計・開発・管理を行う統合ソフトに関する研究などの成果を得た。(2)については、学部向け情報リテラシ教育の最適化の研究、学部に適合した高度情報リテラシ教育教材の開発、専門科目の高度教材開発研究をマルチメディア環境の基で行って成果を得た。なお、これらの研究は実践教育の評価を踏まえた統合的な研究である。(3)の分野では、高校の情報教育の目標、担当教師の職能、教師向けの情報教育素材の開発・研究、情報科教員を目指す受講学生の知識と情報教育内容を連携させる知識ベースシステムの開発など、マルチメディア環境を活用した研究成果を得た。(4)の新しい教育方法では、情報教育に止まらず、大学教育全般を対象とした遠隔教育についての研究を推進し、受講対象を大学以外に拡げ、Web環境を活用した講義・個別・探求型・グループなどの学習に適したe-Learning環境の開発、同一大学内におけるWeb環境下での遠隔教育実践に対する評価、他教育機関と連携した所謂バーチャルユニバーシティにおける遠隔連携ゼミでの相互の学生の意識解析。さらにマルチメディア環境を活用した国際的な遠隔双方向講義の実施結果から、受講学生の意識調査に基づく遠隔講義システムの研究・評価などの成果を得た。なお、本研究の一環として、一般情報教育の高度化を目指したテキストを現在作成中である。
著者
永野 和男 天花寺 博司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.1-11, 1986-12-20

学習反応データの処理については,これまで統計的手法が主であったが,学習診断においては,教師の扱っている情報のほうが,実際にコンピュータにデータ化し入力できる情報より質・量ともに上回っているため,教師が主観的に判断した値や,判断過程そのものをパラメータとして扱えるようにする必要がある.本研究では,学習項目の関連情報と学習反応データをあらかじめ蓄積しておいた場合に,これに基づいて,教師の学習診断をシミュレートするシステムを開発した.このシステムは,1)会話形式で定義した項目関連構造から自動的に診断ルールを生成し,これを用いて診断を実行する,2)学習反応データに対応する下位目標の達成度を求める場合には,必ず教師の主観的判断を問い合わせる,3)判断ルールを蓄積しておき,以後の診断に再利用できる,4)教師でも利用できるように,なめらかな日本語会話で動作する,の特長をもつ.このシステムが実用にたえるものであるかを評価するために,実際の中学校数学の授業で収集した34時間分の学習データを用いて,1クラス全員について,診断を試みた.その結果,ほとんど教師の予測と一致した診断結果が得られた.このシステムは,教師の入力した診断ルールにより,診断過程をシミュレートしていることになるが,エキスパートシステムのようにベテラン教師の診断をまねるのではなく,教師自身に診断過程を明示し,意識化させる訓練システムとしての機能ももつことがわかった.
著者
牧野 由香里 永野 和男
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.225-235, 2002-03-20
被引用文献数
7

新しい教育課程ではコミュニケーション能力の育成を重視しているが,理論的な枠組みや具体的な教育方法は十分に検討されていない.著者らは,理論と演習体験を結びつけたコミュニケーション教育カリキュラム(スピーチ演習パッケージ)を間発した.平成9年度から平成11年度の3年間に大学生を対象に行ったカリキュラム開発の分析結果から,次の3点が明らかになった.(1)論理体系と説得表現の活用能力(日本と欧米に発達した論理体系および説得表現を場面や聞き手の状況に応じて使い分ける能力)の育成に成果を得た.(2)自己評価の能力(スピーチが含む要素を論理体系のカテゴリーごとに分類し,優れた点や問題点を判断する能力)の育成に成果を得た.(3)自己評価能力の育成は,論理体系の活用能力の育成に貢献し,その学習効果は教師の評価を一方的に受ける体験を上回った.
著者
笠井 俊信 永野 和男 溝口 理一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.570-584, 2015-05-01 (Released:2015-05-01)
参考文献数
22

In order to facilitate learners' knowledge refinement process, it is effective to let them externalize their knowledge. However, in a domain of the instructional design in which existence of knowledge and its necessity are not sufficiently articulated or recognized, it is not easy for teachers who are also learners of how to externalize their knowledge. In this study, we have built a system called ``FIMA-Light'' which uncovers knowledge that teachers must have applied in their lesson plans from global to local viewpoints instead of them. FIMA-Light makes use of the OMNIBUS ontology which describes various instructional knowledge for attaining educational goals extracted from instructional/ learning theories. And, FIMA-Light automatically generates what we call I_L event decomposition trees by interpreting a given lesson plan based on the OMNIBUS ontology. Then, FIMA-Light facilitates teachers' deep reflection and helps them to refine their lesson plans by providing them with decomposition trees. We report some results of an experiment carried out for evaluation of the quality and the effectiveness of I_L event decomposition trees.
著者
永野 和男 大谷 尚 岡本 敏雄 吉崎 静夫 藤岡 完治 生田 孝至
出版者
鳴門教育大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

若い学問としての教育工学は,概念規定を性急に行うよりは教育分野におけるさまざまな問題解決を繰り返し,その中で徐々に,その対象や方法を明らかにしていくという方略で発展してきた。しかし,その後,コンピュ-タの普及によって,研究の対象や方法がさらに拡大し,これまでの枠組みだけでは通用しなくなってきている領域もある。そこで,この段階で,それぞれ第1線級で活躍している若手研究者が中心になって,これまでの研究をレビュ-し,研究方法論そのものについてその方向性を明確にしておくことは極めて重要な研究課題であった。研究の方法としては,分担者全員による合宿研究会を企画し,討論を中心として問題点を掘り下げていくという方法をとった。第1年次においては,2回の合宿研究会,教育工学会の自主シンポジウムなどを企画し,その内容についてまとめた記録を中間報告書「教育工学の研究方法を考える」として印刷し,検討資料として教育工学関係の研究者約200名に配布した。また、今年度は,それぞれの研究者集団を授業研究、システム開発、基礎研究の3つのグル-プにわけ、それぞれの研究方法を軸としながら、教育工学が求めている研究者像を明らかにし,その具体的な研究者養成カリキュラムを考えていくという方向で検議を進めていった。これらの討論記録は、中間報告書と最終報告書にまとめ教育工学の研究者約300名に配布した。報告書では、教育工学が単に1つの方法論をもった研究集団ではなく、別々の方法論と対象をもった研究者の集まりであることや、教育工学の研究開発と実践研究との問題、基礎研究と実用研究の問題など幅広い論議がなされているだけでなく、問題解決のための具体的な提案、研究者養成のための内容や方法などの提案もなされており、我が国の教育工学の学術的発展にとってきわめて意義深い成果が得られた。
著者
小田 和美 永野 和男 渡部 昌邦
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.18, pp.47-48, 2002
被引用文献数
1

Web上の学習用素材資源が、次第に充実してきている。静止画、動画、いずれも今は、ネットワークの回線スピードの制約を受けているが、いずれ技術的な問題は解決されるだろう。そこで問題になるのは、著作権問題を含めた、管理と運用である。現在は、多くの資源の教材利用が、著作権による使用制限を受け、利用の際の自由を失っている。だからといって、素材資源のフリーなダウンロードを許可すると、営利目的等の不正使用を招く。教育界として、教育目的の教育実践者による素材の使用・改良の自由を保障するマーク及びルールを決め、広くその認識を広めることは、今後の教育コンテンツの有効活用にとって、必要であろう。そこで筆者らは、そのためのマークを提案・作成し、既に幾つかのコンテンツにおいて実際にマークの使用を開始している。