著者
狩野 敦 コーネリアス H.M.バン ベーブル
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.408-416, 1988
被引用文献数
1 10

温室トマトの決定論的生長モデルを1)葉の光合成モデル, 2)生長と呼吸の理論, および3)光合成が環境条件と葉中光合成産物の濃度に律速されているという仮説に基づいて開発した. モデルは Pascal 言語で記述され, トマトに対する二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)増与の効果をシミュレートするのに用いられた. 1983年から1984年にかけてアメリカ合衆国テキサス州カレッジステーションにて行なった2回の栽培実験の結果とモデルの出力を比較した. この栽培実験のために, 著者らは3つの2×2×10mのポリエチレンチャンバーを二重ポリエチレン温室内に構築し, チャンバー内空気のCO<sub>2</sub>濃度をそれぞれ340,700, 1000ppm(容量)に制御してトマトを栽培した.<br>モデルはトマトのCO<sub>2</sub>同化速度を低めに出力したが,果実の生育量とその収量はかなり正確に予測した.このモデルを用いて, 環境条件がトマトに与える影響を予想したり, いろいろな栽培環境における温度制御法の効果を推定したりすることが可能なことがわかった.また, このモデルが温室モデルに組み込まれることにより, 温室内で栽培されたトマトの生育や収量, 暖房熱,水やCO<sub>2</sub>の必要量などを温室外環境から推定するのに役立つと思われる.
著者
狩野 敦 内藤 雅拓
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物工場学会誌 (ISSN:09186638)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.137-142, 2001-06-01 (Released:2011-03-02)
参考文献数
6

本研究において製作したチャンバを用いて光合成速度が小さいコチョウランのCO2吸収速度の日変化を明確に測定することができた.暗期の気温を25℃とし,明期の気温を20,25,30℃とした場合,明期の気温が低いほど明期のCO2,吸収速度は大きくなったが,暗期のCO2吸収速度に差はなかった.一方,明期の気温を25℃として暗期の気温を20,25,30℃とした時のコチョウランのCO2吸収速度は,明期においては暗期の気温に関わらず処理間に差は認められなかったが,暗期においては気温が低いほど大きく推移した.これらの結果の原因について生理学的な検討を試みた.CO2吸収速度が20℃で最大であったのに対して,成長速度が一般に,より高温域に適温を持つといわれていることについて考察を試みた.本研究によって,コチョウランのCO2吸収パターンに詳細な検討が可能になったと考えられるが,さらなる理解のためには考察中に述べたような生理プロセス方面からの研究も必要だと考える.
著者
佐藤 邦夫 狩野 敦 濱島 ちさと 関 英政 加藤 博巳 田沢 義人 加藤 智恵子 猪股 正秋 佐藤 俊一 武田 豊
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.318-327, 1987-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
66

62歳男性のDouble Pylorus(以下DP)の1例を経験した.患者は心窩部痛を主訴として来院し,X線および内視鏡検査で,幽門の小彎側に十二指腸球部に通じる瘻孔と,これに接して十二指腸潰瘍を有するいわゆるDPが確認された.この患者の10年前の内視鏡所見では幽門前部小彎に変形は認めるものの,副交通路は形成されていない.本邦では近年本症の報告が相次ぎ,1985年末で本例を含め43例にのぼる.その内訳は男32例,女11例で,自覚症状は心窩部痛,吐下血が多い.平均年齢は61.4歳で,成因は先天性2例,後天性33例,いずれとも断定していないもの8例で,副交通路の位置は幽門の小彎側33例,大彎側6例,前壁側1例,部位記載不明3例である.治療法は外科的17例,保存的26例で,最近は保存的に治療されるものが多い.幽門近傍潰瘍の穿通によって形成されるとみられる後天性DPについてはPeripyloric gastroduodenal fistulaと呼ぶのが適切と考えられる.