著者
金井 理紗 山里 將仁 玉城 昭彦 大城 健誠 上原 忠司 真栄城 兼誉
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.889-894, 2017-06-20 (Released:2017-06-20)
参考文献数
18

【目的】原発性自然気胸は思春期以降の長身の痩せた男性に好発する疾患であり,15歳以下の小児では比較的稀である.今回は当科の経験症例を基に,小児症例での臨床像を後方視的に検討した.【方法】2006年4月から2011年12月までに,小児外科が関係した15歳以下の小児自然気胸症例7例11側(異時性両側4例)を対象とした.検討項目は臨床像,身体的特徴,既往歴,CT所見,手術所見,術後経過とした.また対側発症については同時期に治療した成人症例と比較検討した.【結果】症例の内訳は男児6例,女児1例で,7例中6例が15歳であり平均14歳7か月であった.同時両側発症症例はなく初発時は右側3例,左側4例であった.肺虚脱度は軽度2例,中等度4例,高度1例で,中等度以上の4例に胸腔ドレーンを挿入し,2例で手術まで空気漏れが持続した.患児の身体的特徴はBMIやRohrer指数から痩せ型であることが分かった.特に既往歴や家族歴は認めなかった.全例がCT所見で明らかな責任囊胞のある手術適応症例と判断し,video-assisted thoracic surgery(以下VATS)を行った.手術では病変部の肺部分切除を行い,胸膜補強を追加した.患側部位の術後再発例はなかったが,術後早期の対側発症を4例に認めた.小児症例での対側発症は成人症例より有意に高かった(p=0.0002).【結論】自験例では男女比や体型は成人症例と同様の傾向が見られた.術後同側の再発は認めず,VATSによる肺部分切除と胸膜補強は小児症例でも有用であった.しかし術後早期の対側発症は成人症例より有意に多く,十分留意すべきだと考えられた.
著者
阿部 仁美 百名 伸之 中西 浩一 浜田 聡 屋冝 孟 屋良 朝太郎 上原 朋子 屋良 朝雄 玉城 昭彦 佐辺 直也 新垣 京子
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.168-172, 2020

<p>症例は生来健康な1歳男児.主訴は咳嗽,発熱,多呼吸.レントゲン所見から横隔膜ヘルニアが疑われ紹介となり,血液検査および画像検査にて感染を合併したCPAMと診断された.抗菌薬投与により症状は改善したが,その後症状が再燃したため肺部分切除術を施行した.病理検査で胸膜肺芽腫の診断に至り,切除断端は陰性であった.腫瘍細胞の遺伝子解析でDICER1遺伝子にホモ変異が検出されたが,生殖細胞変異は認めなかった.術後化学療法(IVADo療法)を施行し,終了後9か月時点で寛解生存中である.胸膜肺芽腫は稀な予後不良の悪性腫瘍であり,一部では様々な悪性疾患に関連するDICER1遺伝子変異を有する.本症例より嚢胞性肺病変の鑑別診断として,胸膜肺芽腫を念頭に置くべきである.また今後再発や遠隔転移の可能性も含め,長期的なフォローを要する.</p>