著者
高橋 純一 玉木 宏樹 山脇 望美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.283, pp.17-22, 2012-11-07

本研究では,健常大学生(n=353)を対象として,自閉症傾向(AQ:Autism-spectrum Quotient),愛着スタイル(内的作業モデル尺度),及び社会スキル(KiSS-18)との関連について検討した。AQは5因子(社会スキル,細部への注意,注意の切り替え,コミュニケーション,想像力),内的作業モデル尺度は3因子(安定型,アンビバレント型,回避型),KiSS-18は単因子構造から構成されたものである。最初に,自閉症傾向と愛着スタイルとの関連について検討した結果,高自閉症傾向群(AQ≧26得点)の方が低自閉症傾向群(AQ≦25得点)よりも安定型傾向が低く,逆に,アンビバレント型及び回避型傾向が高かった。次に,自閉症傾向と社会スキルとの関連について検討した結果,高自閉症傾向群の方が低自閉症傾向群よりも社会スキル得点が低かった。以上を踏まえて,自閉症傾向及び愛着スタイルの個人差が社会スキル得点に及ぼす影響について検討した。その結果,高自閉症傾向群において,安定型傾向が低い者,あるいはアンビバレント型傾向と回避型傾向の低い者の社会スキル得点が最も低かった。一方で,自閉症傾向が高くとも,安定型傾向が高い場合,あるいはアンビバレント型傾向と回避型傾向が低い場合においては,社会スキル得点は必ずしも低くはならないことが分かった。したがって,自閉症傾向と社会スキルとの関連は,愛着スタイルの個人差に依存して変容し得る可能性が示唆される。
著者
玉木 宏樹
出版者
島根大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

【研究目的】去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の標準治療としてドセタキセル(DTX)が使用されるが、徐々に耐性を示し予後不良となる。当院では、DTX耐性CRPCに対し、DTXにサリドマイド(Tha)を併用することで再び前立腺特異抗原の低下を認めた症例を経験している。既に我々はヒト前立腺癌PC3細胞(PC3)を用いた曝露実験において、Tha単剤では抗腫瘍効果がほとんど認められないにも関らず、Tha/DTX併用においてはDTX単剤と比較して抗腫瘍効果が増強することを報告している。また、併用による抗腫瘍効果の増強と抗癌剤の細胞外排出機構ならびに耐性化に関与するとされている多剤耐性遺伝子1(MDR1)との関連性は低いことを報告している。本研究では、抗癌剤による癌細胞の細胞死に関連している内因性アポトーシスに及ぼすサリドマイドの影響を検討する目的にて、PC3ならびにDTX耐性PC3(DR-PC3)を用いた研究を行った。【研究方法】DR-PC3はPC3をDTX50nMで4ヶ月以上培養することで確立した。Cell viabilityの測定はWST-8を用いて行った。アポトーシスの解析はAnnexin V-FITC/PI染色後、FACS Calibur flowcytometerにより行った。目的とするタンパク質の発現はイムノブロットで確認した。アポトーシス抑制タンパク質であるBcl-2、Bcl-xLとの関連性は、これらに対するsiRNAのトランスフェクションによりタンパク質の発現を選択的に抑制した状態で確認した。【研究成果】DR-PC3に対するDTXのIC_<50>(Half maximal inhibitory concentration)は800nMでありPC3におけるIC_<50>6.25nMと比較して約100倍の抵抗性を示した。PC3においてsiRNAのトランスフェクションによりBcl-xLの発現を抑制した結果、DTXによるcell viabilityの有意な低下ならびにアポトーシスの著明な増加を認めた。これらの結果、Bcl-xLがPC3のDTX感受性の増強に関与していることが示唆された。現在、ThaがBcl-xLの阻害に影響を及ぼしている可能性について、PC3ならびにDR-PC3を用いて検討を行っている。これらの検討により、DTX耐性CRPCのDTX感受性を回復するための薬剤としてのThaの有用性が明らかとなる。
著者
玉木 宏樹
出版者
島根大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

【研究目的】サリドマイド(Tha)は多発性骨髄腫の適応で国内承認されたほか,種々の悪性腫瘍で有効性が報告されている.内分泌療法抵抗性前立腺癌においてもドセタキセル(DTX)との併用により臨床的有用性を示したとの報告があるが,その基礎的検討は十分に行われていない.そこで,ヒト前立腺癌細胞を用い,Tha単独あるいはDTXとの併用時における抗腫瘍効果について検討した.【研究方法】ヒト前立腺癌細胞は,アンドロゲン非依存性細胞株(PC-3)を用いた.PC-3は常法に従い継代培養し実験に用いた.PC-3を96穴プレートに播種後24hr培養し,Tha,DTXを単独あるいは併用にて一定時間曝露した.細胞生存率を蛍光ホモジニアス法を用いて測定し,種々の条件における抗腫瘍効果を比較した.【研究成果】1.Tha単独曝露:Thaの抗腫瘍効果は濃度・時間に非依存的であり,Tha 10μMにおける72hr曝露後の細胞生存率は約80%であった.2.DTX単独曝露:濃度・時間依存的に細胞生存率の低下を認め,DTX 10nMにおける24hrおよび72hr曝露後の細胞生存率は約60%および約40%であった.3.Tha前曝露後のTha/DTX併用曝露:DTX 10nM単独曝露群と比較して,DTX曝露期間中のみTha 10μMを併用した群では約10%,DTX曝露72hr前からThaを曝露した群では約30%,さらにDTX曝露期間中にもThaを併用した群では約50%の細胞生存率の低下を認め,Thaの前曝露およびDTXとの併用により抗腫瘍効果の増強が示された.これはThaのDTXとの併用における臨床的有用性を支持するものであった.また,DTX耐性PC-3を作製し,耐性化細胞におけるTha併用の有用性およびTha併用による抗腫瘍効果の増強メカニズムについて検討を行っている.