著者
山村 明子 田中 淑江
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.524-538, 2023 (Released:2023-10-06)
参考文献数
73

主婦が社会化され始めていた1960年代を中心に, 主婦に提案されていた家庭着を検討することで, 変わりゆく生活の中で求められていた主婦の在り方を論じる. 主な一次史料として, 朝日新聞および読売新聞に掲載された家庭洋裁の指南記事を使用する. さらに, 家庭婦人の装いと生活の関連や他者からの視線等を同時期の婦人雑誌『主婦と生活』から調査する. 提案された家庭着からは家事労働に従事する姿, くつろぐ姿, そして他者に対して体面を保つ姿が見いだされた. 主婦の家庭着とは, 家庭を明るく, 楽しいものに, または穏やかなくつろぎを演出する役割も担っていた. それは主婦本人のみならず, 家族をも気持ちよく過ごさせるためのデザインであった. 同時期のマイホーム主義の風潮ともあいまって, 主婦は家庭という空間で家族のためだけの親密な存在であることを家庭着によって演出し, 生活の彩り, 家族の団らんを創出した.