著者
田中 開 井上 正仁 寺崎 嘉博 長沼 範良 池田 公博 笹倉 宏紀 井上 和治
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、主として治罪法以降の刑事訴訟関係立法や実務の運用に関する貴重な資料を、その散逸・滅失が危ぶまれる現時点において、収集・整理することが、現行法の解釈に際してのみならず、将来予想される刑事訴訟法の全面改正を検討するについても、有益と考えられることに鑑み、主として治罪法以降の刑事訴訟法典の立案・制定の過程、および、実務の状況を跡付けようとの意図のもと、実施されたものである。その結果、寺崎嘉博教授による、「任意処分と強制処分との区別について・再論」などの論稿が生み出され、また、井上正仁ほか編『日本法律学事典』(第一法規)および井上正仁・渡辺咲子・田中開編著『刑事訴訟法制定資料全集-昭和刑事訴訟法編(2)』(信山社)の出版作業が進行中であるなどの成果を得た。また、本研究では、単に歴史を振り返るにとどまらず、刑事訴訟法の基本原理・原則や基本問題について再考するとともに、現在進められている、また、今後進められるべき刑事手続の改革についても検討を行い、(1)刑事免責、(2)ハイテク犯罪関係立法、(3)証人保護、などに関し、一定の成果を公表することができた。3年間の研究の中において痛感したことの一つは、古く貴重な文献・資料をデジタル化などの方法により早急に保存することが緊急の課題だということである。折角、遠方の大学図書館に赴きながら、貴重な資料につき、保存上の理由から、複写ができなかったこともあった。また、第二次世界大戦中の空襲により貴重な立法資料が焼失してしまったこと、など、予期せぬ障害に遭遇することもあった。ともあれ、前述のような一定の成果が得られた。研究期間は満了したが、今後さらに、研究を深め、更なる成果の公表につとめたい。
著者
田中 開 大澤 裕 川出 敏裕 寺崎 嘉博 井上 正仁 佐藤 隆之
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究において、我々は、近時問題化している銃器犯罪に関する諸問題につき、実地調査、資料収集、研究会などを行い、その成果のいくつかを公表した。研究した項目は、(1)少年犯罪と銃器、(2)銃器犯罪と民間ボランティア活動、(3)銃器犯罪について今後導入・活用されるべき捜査手法(4)情報提供者や証人の保護、(5)被害者や被害関係者の保護、(6)警察官による銃の使用、(7)諸外国における銃器情勢、であった。とりわけ、少年犯罪と銃器という問題を研究したきっかけは、本研究を開始した1999年4月に、アメリカ、コロラド州にあるコロンバイン・ハイスクールにおいて、少年が銃を乱射して多数の生徒や教師を殺傷するという事件が発生したことであった。少年による銃器を使用した凶悪犯罪は、近年における銃器の一般人への拡散傾向に照らすと、わが国においても、将来的には起こりうる重大な問題である。また、研究の過程で、(a)銃器犯罪の撲滅に向けて、民間ボランティア活動などの各種防犯・啓発活動との連携などによる銃器犯罪対策を考えていくべきこと、(b)おとり捜査、コントロールド・デリバリー、通信傍受をはじめとする捜査手法の活用や工夫が重要であること(捜査手法のなかには、とりわけ薬物犯罪と共通するものが少なくない。外国の例においても、薬物の不法取引と銃器は密接な関連を有している)、(c)情報提供者や証人の保護が肝要であること、(d)被害者・被害関係者の保護を進めるべきこと、(e)警察官による銃の使用の許否・限界につき再検討すべきこと、などの課題が認識された。また、諸外国における銃器情勢については、従来研究していなかったドイツの銃器情勢について調査研究ができたことが、一つの成果である。
著者
三井 誠 大澤 裕 田中 開 酒巻 匡 長沼 範良 井上 正仁
出版者
神戸大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本研究は「1984年警察・刑事証拠法」および「1985年犯罪訴追法」の制定によってもたらされた、イギリスにおける刑事司法制度の大改革の全体像を分析するものである。両法典の制定前の状況、法改革の提言、圧力団体の動向、イギリス議会・委員会での審議過程、法律制定後の実務上の変化などの調査結果は、わが国刑事司法のあり方を再考するための重要な素材となろう。1.第1年度には、両法典を翻訳したうえこれを出版するとともに、上記の関連基礎資料・文献の収集・分析をひとわたり終えることができた。2.第2年度には、前年度の基礎作業をふまえて、両法典を6分野に別けて各担当者を定め、各担当者が、担当部分について従前の法と実務法改革の提案、同辺圧力団体・マスコミの動向、1984年法律審議過程と法律成文との関係、法律制定後の実務の様相、新しい判例の動きをふまえたうえで、その調査・分析結果を報告し、それを素材に全員で討議するという方法を数回繰り返した。3.また、両法典成立後、「刑事裁判法」の全面改正はじめ、いぜん刑事司法をめぐるイギリスの状況は流動的であるので、英国の諸機関や滞英中の研究者をとおして最新情報を逐次入手した。4.報告と全体討議が終了した部分については、担当者が論文を作成し、順次、法律雑誌『ジュリスト』に提起連載の形式で発表することとし、937号(1989年7月1日号)より隔号に連載予定である。5.わが国刑事司法制度への影響についてはなお検討を要するが、イギリスにおける捜査、訴追活動の改革は質量ともに重要な意義を有するだけに、日本刑事司法の改善に、制度面でも運用面でも、いくつかの貴重な示唆を与えるであろうことは疑いないといえる。