- 著者
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江崎 行芳
沢辺 元司
新井 冨生
松下 哲
田久保 海誉
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.2, pp.116-121, 1999-02-25 (Released:2009-11-24)
- 参考文献数
- 17
- 被引用文献数
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8
10
「老衰死」の有無を考察するため, 老年者の最高グループである百歳老人 (百寿者) 42剖検症例の死因を検討した. 対象は, 最近までのおよそ20年間に東京都老人医療センターで剖検された男性9例, 女性33例で, この性別比は全国百寿者のもの (1対4) にほぼ一致する.臨床経過や諸検査値を充分に考慮して剖検結果を検討すると, これら42症例の全てに妥当な死因があった. 死因となったのは, 敗血症16例, 肺炎14例, 窒息4例, 心不全4例などである. 敗血症の半数近くは腎盂腎炎を原因としており, 肺炎の多くが誤嚥に起因していた. 悪性腫瘍は16例に認められたが, その全てに前記死因のいずれかがあり, 悪性腫瘍自体が主要死因となったものは1例も存在しなかった.超高齢者では, (1) 免疫機能の低下, (2) 嚥下・喀出機能の低下, が致死的な病態と結びつきやすい. しかし, このことと「老齢であるが故の自然死」とは関わりがない.「老衰死」なる言葉に科学的根拠があると考え難い.