著者
神森 眞 田久保 海誉
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.365-368, 2004-07-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
16
被引用文献数
1

テロメアは染色体末端に存在し, 染色体の安定に貢献している. また, 正常培養細胞における細胞老化はテロメア短縮によって説明されている. 今回, 我々は組織切片を用いたテロメア長測定法を開発したので, テロメア長測定法を中心に記述し, テロメア研究の進歩について述べる. 従来は, 細胞や組織から抽出したDNAを制限酵素で切断し泳動像のピーク値などをテロメア長としていた. 1996年に培養細胞を用いた細胞分裂中期 (metaphase) の染色体個々のテロメア長測定が quantitative fluorescence in situ hybridization (Q-FISH) により可能となり, 癌組織では, 特異的に限られた染色体のテロメアが短縮していることが報告された. 培養細胞や末梢血のテロメア測定は flow cytometery による flow FISH が行われ, 多くの白血病細胞におけるテロメア代謝が明らかにされた. 組織切片を用いたテロメア長測定法 (tissue FISH) は, 少数の論文の中で紹介されていたが良好な結果を得ることが困難であった. 我々の研究グループにより確立された組織切片を用いたテロメア長の測定法を紹介し, この方法は測定が容易であると同時に, 組織像と対比できる点で利点が大きく, 今後の組織のテロメア代謝の解明に貢献すると思われる.
著者
江崎 行芳 沢辺 元司 新井 冨生 松下 哲 田久保 海誉
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.116-121, 1999-02-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
17
被引用文献数
8 10

「老衰死」の有無を考察するため, 老年者の最高グループである百歳老人 (百寿者) 42剖検症例の死因を検討した. 対象は, 最近までのおよそ20年間に東京都老人医療センターで剖検された男性9例, 女性33例で, この性別比は全国百寿者のもの (1対4) にほぼ一致する.臨床経過や諸検査値を充分に考慮して剖検結果を検討すると, これら42症例の全てに妥当な死因があった. 死因となったのは, 敗血症16例, 肺炎14例, 窒息4例, 心不全4例などである. 敗血症の半数近くは腎盂腎炎を原因としており, 肺炎の多くが誤嚥に起因していた. 悪性腫瘍は16例に認められたが, その全てに前記死因のいずれかがあり, 悪性腫瘍自体が主要死因となったものは1例も存在しなかった.超高齢者では, (1) 免疫機能の低下, (2) 嚥下・喀出機能の低下, が致死的な病態と結びつきやすい. しかし, このことと「老齢であるが故の自然死」とは関わりがない.「老衰死」なる言葉に科学的根拠があると考え難い.
著者
田久保 海誉
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

患者データベースの解析から、母親から胆道閉鎖症の女児、男児への移植は拒絶反応の低いことがわかった。また、レシピエント年齢が低いことが、免疫抑制剤からの離脱に有利であることが示唆された。年齢の高いドナーからの移植では、レシピエントの肝細胞のテロメアの短縮が高度であることがわった(Q-FISH法による測定)。移植片のテロメアは免疫学的によくコントロールされている症例では、延長する症例がみられた。母親からの男児への移植片中には多数のY染色体陽性細胞(主に血管内皮細胞)が観察された。しかし、ケラチン陽性細胞ではきわめて少数であった。