著者
梅森 宮加 梅澤 敬 堀口 絢奈 土屋 幸子 春間 節子 副島 友里恵 沢辺 元司 鷹橋 浩幸
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.271-275, 2017
被引用文献数
2

<p><b>目的</b> : High-grade urothelial carcinoma (HGUC) の診断精度を向上させるため, 標本作製法の改良を試みた.</p><p><b>方法</b> : 自然尿 491 検体を対象とし, 遠心管ウイングタイプと従来遠心管を使用し BD サイトリッチ<sup>TM</sup>法で標本作製を行った. 2 種類の遠心管における, 正常の上皮細胞数と異型細胞の検出率を算出し, 疑陽性例を再評価し組織診断と比較した.</p><p><b>成績</b> : 上皮細胞数の中央値は, 遠心管ウイングタイプが 37.5 個, 従来遠心管が 14.0 個, 異型細胞の検出率はそれぞれ 13.6%, 2.7%であり, 遠心管ウイングタイプで共に向上した (p<0.001). 疑陽性例の再評価では, 陰性 6 例, 異型細胞 53 例, 悪性疑い 74 例, 悪性 2 例であった. 異型細胞 15 例中 9 例 (60%) と悪性疑いの 35 例中 24 例 (69%) が組織診で HGUC と診断された.</p><p><b>結論</b> : 標本作製に遠心管ウイングタイプと BD サイトリッチ<sup>TM</sup>法を用いることで, 細胞回収量と異型細胞の検出率向上に寄与する.</p>
著者
江崎 行芳 沢辺 元司 新井 冨生 松下 哲 田久保 海誉
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.116-121, 1999-02-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
17
被引用文献数
8 10

「老衰死」の有無を考察するため, 老年者の最高グループである百歳老人 (百寿者) 42剖検症例の死因を検討した. 対象は, 最近までのおよそ20年間に東京都老人医療センターで剖検された男性9例, 女性33例で, この性別比は全国百寿者のもの (1対4) にほぼ一致する.臨床経過や諸検査値を充分に考慮して剖検結果を検討すると, これら42症例の全てに妥当な死因があった. 死因となったのは, 敗血症16例, 肺炎14例, 窒息4例, 心不全4例などである. 敗血症の半数近くは腎盂腎炎を原因としており, 肺炎の多くが誤嚥に起因していた. 悪性腫瘍は16例に認められたが, その全てに前記死因のいずれかがあり, 悪性腫瘍自体が主要死因となったものは1例も存在しなかった.超高齢者では, (1) 免疫機能の低下, (2) 嚥下・喀出機能の低下, が致死的な病態と結びつきやすい. しかし, このことと「老齢であるが故の自然死」とは関わりがない.「老衰死」なる言葉に科学的根拠があると考え難い.
著者
村山 繁雄 齊藤 祐子 金丸 和富 徳丸 阿耶 石井 賢二 沢辺 元司
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.483-489, 2005
被引用文献数
1

老化・痴呆の克服を目指し, 在宅高齢者支援病院と併設研究所が共同で, ブレインバンクシステムを構築した. 法的基盤としては, 死体解剖保存法18条と, 病院剖検承諾書をもとに行う, 共同研究を前提とした. 共同研究申し込みの内容に対しては, 論文審査と同様の守秘義務のもと, 外部委員による事前審査を行うこととした. 共同研究者の適格性については審査の上, 研究所協力研究員に委嘱するかたちをとった. 倫理面では, 病院・研究所及び, 共同研究先の倫理委員会の承認を前提とした. その上で, バンク管理者, 神経病理診断責任者, 臨床情報提供者が, 共同研究者となることを条件に, 共同研究を開始した. 標本採取には, 神経病理担当医が, 開頭剖検例全例に対し, 臨床・画像を判断の上, 採取法を決定した. 凍結側の脳については, 割面を含む肉眼所見を正確に写真に残し, 代表部位6箇所を採取, 神経病理学的診断を行った. 凍結については, ドライアイスパウダー法を採用した. 反対脳については, 既報通り (Saito Y, et al: 2004) 検討した. 現在までの蓄積は, 脳パラフィンブロック6,500例以上, 凍結脳 (部分) 1,500例以上, 凍結半脳450例以上で, 30件以上の共同研究を実行中である. 欧米のブレインバンクとはシステムは異なるが, その哲学である,「篤志によるものは公共のドメインに属し, 公共の福祉に貢献しなければならない」を共有する点で, ブレインバンクの名称を用いることとした. 依然として, 大多数の日本の研究者が, 欧米のブレインバンクに依存している事態の打開のためには, このシステムが市民権を得るよう, 努力していく必要がある. そのためには, 同様の哲学を有するもので, ネットワーク構築を行うことにより, 公的研究費を得る環境作りが必要である. ブレインバンクの重要性が人口に膾炙された上で, 患者団体との提携をめざすことが, 現実的と思われる.
著者
沢辺 元司 村松 正明 田中 紀子 池田 仁子
出版者
(財)東京都老人総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は遺伝子多型解析という最新の手法を用いて、心筋梗塞、脳血管障害などの基礎病態である動脈硬化症の発生に関係する遺伝子を同定する事である。対象症例はセンターで行われた約2,000例の連続病理解剖症例であり、冠状動脈、脳動脈などの全身10動脈の動脈硬化度と各種遺伝子多型の関連を解析した。その結果、炎症性サイトカイン、葉酸代謝に関係する酵素、リポタンパクの遺伝子が動脈硬化症に関係していることを見つけた。