著者
櫻井 美代子 田代 和子
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的:認知症の親を施設に預ける決心をするまでの家族の心理的変化を明らかにする。対象:親の施設入所を決断した都市部と農村部に在住する子介護者10名(女性8名、男性2名)。半構造的面接調査を行い、分析には修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。結果:家族は自宅介護の限界を感じた時、社会規範による使命感と罪悪感に苦しみ葛藤する一方で、親との親密な時間を共有することにより親子関係が喚起されていた。この喚起体験が介護者の罪悪感を薄め、親の全てを受け入れ感謝する気持ちに変化していた。入所後も罪悪感を引きずらないためにも介護過程の中でこの気づきを体験できる家族支援の重要性が示唆された。
著者
伊藤 ふみ子 田代 和子 Fumiko Itoh Kazuko Tashiro
雑誌
淑徳大学看護栄養学部紀要 = Journal of the School of Nursing and Nutrition Shukutoku University (ISSN:21876789)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.69-77, 2020-03-16

【目的】独居高齢者の社会的孤立に関する文献を概観することでその動向を明らかにし、独居高齢者に対する課題を検討する。【方法】CiNii Articlesを用い「高齢者」、「独居」、「社会的孤立」をキーワードに検索し得られた53文献のうち、会議録・報告書を除く21文献が検討対象となった。【結果】独居高齢者に関する研究は、社会福祉学が最も多く次いで看護学であった。その他、リハビリテーション学や情報学といった多様な分野での研究がみられたが、協働・連携して研究に取り組んでいるものは少なかった。研究内容は「社会的孤立・孤独死の実態とその要因の検討(15文献)」、「社会的孤立対策の取り組みの実態(3文献)」、「孤立死予防活動をしている民生委員の体験(1文献)」、「社会的孤立に至るプロセス(2文献)」の4分類に整理された。【考察】独居高齢者の支援には各々の分野が連携・協働して研究に取り組むことの重要性が示された。性差では男性の独居高齢者において、社会的孤立におかれている場合が多く性役割意識関係や仕事で培われたプライドが影響していることが推測された。今後の孤立予防対策として、退職前から地域社会での交流を促すような対策を講じる必要がある。
著者
田代 和子 小板橋 恵美子 平澤 マキ 村杉 恵子 岡本 あゆみ 鵜野 澄世 本吉 杏奈 Kazuko Tashiro Emiko Koitabashi Maki Hirasawa Keiko Murasugi Ayumi Okamoto Sumiyo Uno Anna Motoyoshi
雑誌
淑徳大学看護栄養学部紀要 = Journal of the School of Nursing and Nutrition Shukutoku University (ISSN:21876789)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.19-29, 2019-03-31

本研究の目的は、大学と地域住民が連携協働する「認知症カフェ」の開催が利用者にもたらす成果および継続的な運営に向けた課題を明らかにすることである。認知症カフェ継続利用者6名に対しグループインタビューを行った結果、35のコードから11サブカテゴリー、さらに5つのカテゴリーである【認知症の情報や予防の共有ができる場】【学生ボランティアとの異世代間交流を通した自尊感情の高まり】【安心・安全な地域の居場所】【連携がもたらす多彩なプログラム効果】【継続利用を可能にする両者の連携と課題】を生成した。連携協働による成果では、“学ぶ・相談する”については大学がもつ認知症に関する知識の提供ができ、一方で地域の特性を生かした“楽しむ”を主としたアクティビティの提供により、両者のもつ利点を結集できたことが利用者のニーズと合致し、成果へと繋がった。また、学生ボランティアの接待や傾聴を通した異世代間交流は利用者の自尊感情の高まりに繋がり高評価を得た。利用の継続要因として、開催地との関連が示された。高齢者にとって徒歩圏内にある場は重要であり、利便性がある安心・安全な地域の居場所であったことが利用者の継続利用に繋がった。