著者
櫻井 美代子 田代 和子
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的:認知症の親を施設に預ける決心をするまでの家族の心理的変化を明らかにする。対象:親の施設入所を決断した都市部と農村部に在住する子介護者10名(女性8名、男性2名)。半構造的面接調査を行い、分析には修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。結果:家族は自宅介護の限界を感じた時、社会規範による使命感と罪悪感に苦しみ葛藤する一方で、親との親密な時間を共有することにより親子関係が喚起されていた。この喚起体験が介護者の罪悪感を薄め、親の全てを受け入れ感謝する気持ちに変化していた。入所後も罪悪感を引きずらないためにも介護過程の中でこの気づきを体験できる家族支援の重要性が示唆された。
著者
櫻井 美代子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b>目的</b> 関東地方の東京都・神奈川県・千葉県・埼玉・茨城・栃木・群馬における、粉食の中のそば粉食に注目し、関東の地域性について、料理の呼称、日常性・非日常性等の違いがあるかを目的とする。 <b>方法</b> 中心的資料として、大正の末期から昭和初期を対象に全国的に記載のある聞き書き『日本の食生活全集』(農村漁村文化協会)より関東7都・県(7冊)を使用し、そば粉食の料理の呼称・内容について、日常性や非日常性に注目し、調査検討を行った。<br> <b>結果</b> これまでに、粉食の中の小麦粉食の&ldquo;うどん&rdquo;に注目し全国の地方別に食べ方等について、また関東における小麦粉食・そば粉食についても報告を行った。今回は粉食の中のそば粉に視点おき関東地方において調査・検討を行った。 &nbsp;そばを粒食ではなく粉にしての利用の仕方には、どちらの県においても、そば麺・そばがきがみられた。そばがきは、ほぼ日常において用いられており、そばねりやそばかっき、おっつけかき、そばねっとなど違う呼称もみられた。 そば麺は、日常の他、暮れの年越しそばとしてや正月などの行事に用いられ、婚礼・葬式の人生儀礼、人寄せや来客時にふるまわれていた。麺に打つつなぎととして、小麦粉ややまといもが用いられていた。 なかには、栃木では、じゃがいもと共に搗いたそばもちもみられた。 &nbsp;
著者
櫻井 美代子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

【目的】小麦粉より作られるうどん・そうめんなどの麺類のほかに、すいとんや団子類・まんじゅう類・パン類にも加工されるほか、食品のつなぎや衣などに使用されている。このうち日常食・行事食のいずれにも使われ、地域的特徴のみられるうどんをとりあげ、その種類呼称、調理法用途などについて調査を行った。また、日常のうどん食が継承されている相模原市津久井地区のうどんとの関係についても検討したい。資料としては、大正末期から昭和初期の聞き取り調査をまとめた、『日本の食生活全集』(農山漁村文化協会)47冊を中心に調査・検討を行った。<br>【結果及び考察】 うどんは、ほぼ全国的に食されており今回は、「うどん」の呼称に注目し、以下のように分類した。①地名や形態の呼称。「讃岐うどん」や「稲庭うどん」のように地域名があるものや「ひもかわうどん」のようにうどんの形態をあらわしてあるもの。②うどんをゆであげててから食す、「釜あげうどん」や汁に野菜やうどんを煮こんだ「にこみうどん」などうどんの調理法と用途による違い。③日常食と行事食<br>以上の分類により、地域に根づいた呼称があるうどんが各地で存在している。煮こみうどんでも、ゆでこぼしてから煮こむものと、煮汁に直接いれて煮こむものと調理性の違いによるものがあった。日常では、煮こみにする時には季節の野菜などを共に煮て食され、毎日夜うどんを常食している地域も存在した。日常食以外でも、盆や祭り・正月などにうどんが供えられたり、人寄せの時に振る舞われたりしていた。多くは、行事や接待に使用する時には、ゆでこぼしたうどんを使用することが多く、てんぷらや野菜の煮たものなどを添え、つけ汁で薬味を添えて食することが見受けられた。
著者
櫻井 美代子 大越 ひろ 増田 真祐美 大迫 早苗 河野 一世 津田 淑江 酒井 裕子 清 絢 小川 暁子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】 食文化視点より次世代に伝え継ぎたい日本の家庭料理を掘り起こすことを目的とする。<br /><br />【方法】 神奈川県内の主だった14地域である横浜市中区・横浜市泉区・川崎市多摩区・鎌倉市・三浦市・大和市・相模原市(旧津久井)・伊勢原市・秦野市・小田原市・大磯町・山北町・真鶴町・清川村の地域を中心に調査を行った。それらの地域の年配者に昭和年35年前後から昭和45年前後の食生活について聞き取り調査を行った。それらの料理内容をまとめ,文献による補足調査を行い,検討を行った。<br /><br />【結果・考察】<br />神奈川県は、立地により海・山の産物を利用した料理が多くみられた。水田を多く所有する地域ばかりでなく,水田や畑作からの裏作として,小麦・蕎麦・豆類が作られている地域も多く存在する。<br />その中で今回は,間食(おやつ)に注目し報告を行うこととする。神奈川県全域で小麦粉製品の所謂,粉物が多く登場する。行事(祭り等)での頻度が多い酒まんじゅうやまんじゅう類の他,小正月,どんど焼き等でのまゆ玉飾りがあげられる。月見の十五夜や十三夜に供えるだんごの他,日常では、春先のよもぎだんごや草の花だんご,へらへらだんごなどのだんご類のいろいろな種類がうかがえる。そのだんご類の材料としては,米粉,小麦粉,さつまいも粉などが使われている。行事等で供えられただんごは,きなこやあん,砂糖醤油などをつけて食されていた。また,日常のおやつとしては,蒸しパンや庭木として育てられた果物類なども間食としてあげられる。
著者
櫻井 美代子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.126, 2003

【目的】近世・近代の家庭における食生活の実態を知るため、主婦の日記を資料としてそこに記載されている食品・食物を調査・検討行うことでその時代の食生活の一端を考察してきた。今回は地域の異なる二つの日記を比較することで、その食生活の特徴の違いを検討することを目的とする。【目的】『小梅日記』を中心にし、これとほぼ同時期に書かれた江戸近郊の日記である『大場美佐の日記』を比較することで地域的特徴などの違いを検討した。【結果】『小梅日記』・『大場美佐の日記』には日常の細々とした事柄が記載され、その中でも共に贈答品が多く登場し、食品・食物の割合は約80%であった。『小梅日記』では魚介・海藻類が最も多く、その内容は鯛・かつお・いな・ちぬ・さば・あじ・伊勢海老など多種類の記載があり、野菜・果物類では竹の子・松たけ、柿・梨・西瓜・郁李・仏手柑・利夫人橘などがみられ、穀類ではすし・餅類などで、嗜好品では酒・酒券・菓子などの記載がみられた。一方『大場美佐の日記』では魚介・海藻類鮎・肴・かつぶしが多く、野菜・果物類では柿・里芋・竹の子・さつま芋・真桑瓜などで、穀類ではそば・そば粉・赤飯・すし・うどん・うどん粉・餅類などがみられ、嗜好品の酒・にごり酒・菓子は多く用いられていた。どちらの日記も穀類,魚介・海藻類,野菜・果物,嗜好品類が多く記載されており、その中で江戸近郊の大場家ではみられなかった魚券・酒券が紀州川合家では使用されていた。また記載はすくない獣鳥肉類の中で大場家では記載がなかった牛肉は、川合家では寒中見舞いなどの贈答品として使用されていた。