著者
田島 聖士 園田 央亙 小林 誉
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.119-128, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
59

AI(Artificial Intelligence)を用いたダブルチェックを行うことが医療の標準化に寄与できるとされている。歯科および口腔外科診療において日常的に撮影されるパノラマエックス線画像は,顎口腔領域の状態を把握できる標準化された画像である。今回われわれはパノラマエックス線画像を用いた根分岐部病変を検出するAIシステムを開発したので報告する。教師用データとして,根分岐部病変を認めるパノラマエックス線画像10,640枚を用い,深層学習アルゴリズムの転移学習により,根分岐部病変を自動検出するDCNN(Deep Convolutional Neural Network)を構築した。評価用データとして下顎大臼歯に根分岐部病変の所見が認められるパノラマエックス線画像170枚を用いた。正答率,感度,特異度,適合率,再現率,F値を評価した。結果は,正答率は96.4%,感度は95.6%,特異度は97.1%,適合率は96.3%,再現率は95.6%,F値は0.96であった。パノラマエックス線画像を用いたDCNNの深層学習により根分岐部病変を検出するAIシステムは,歯科医療従事者および患者にも有益なものと考えられる。
著者
田島 聖士 小野寺 勉 阿部 公喜 海老沢 政人 飯塚 浩道
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.344-350, 2013
参考文献数
12

2011年3月11日,東日本大震災が発生し甚大な災害となったが,海上自衛隊(海自)は災害派遣命令により宮城県沖に多数の自衛艦を派出した.被災地では歯科医療機関の被害もあったため,海自移動歯科班を歯科診療支援要請に基づき,3月26日から4月21日まで宮城県本吉郡南三陸町および気仙沼市大島において歯科診療支援を実施した.一方,現地歯科医師会歯科班は3月20日から4月25日まで各避難所を往診車にて巡回診療を行った.現地歯科班と海自歯科班は協働して歯科診療支援を行い,避難所等における診療実績および質問紙調査から,震災直後の歯科診療ニーズ,口腔清掃状況ならびに現地歯科班と海自歯科班の診療連携について調査した.調査対象は初診患者数455名,延べ患者数584名,疾患内訳はう蝕31%,歯周疾患23%,脱離17%,義歯不適10%,根尖性歯周炎9%,義歯紛失2%であった.災害対策本部があった志津川ベイサイドアリーナにおける経時的な受診調査では,震災直後から最多疾患であったう蝕は調査期間中増加傾向を示し,歯周疾患は2〜3週以降減少傾向を示した.主訴発現に関する調査では震災直後から震災後1週の主訴発現は全体の12%であったが,その内75%は急性症状を伴っていた.本調査から震災直後における歯科診療ニーズが確認できたが,現地歯科班による避難所等の情報収集能力と海自歯科班の機動性や装備を生かすことにより相互補完的な支援が可能であることが示唆された.