著者
吉村 誉史 張 吉天 大畑 恵資 伊東 真哉 松原 義人 寺田 泰二
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.532-537, 2014-05-15 (Released:2014-06-13)
参考文献数
11

肺ヒストプラズマ症は国内ではまれな真菌感染症であるが,輸入真菌症としてその報告が近年散見されるようになっている.今回我々は,中米滞在後の帰国時健診で発見された肺ヒストプラズマ症の1手術例を経験したので報告する.症例は55歳,女性.海外ボランティアとして2年間ホンジュラスに滞在し,帰国時健診で胸部異常陰影を指摘され,当科を受診した.胸部CTでは左肺下葉胸膜に接して26 mm大の腫瘤を認めた.気管支鏡検査では診断に至らず,胸腔鏡下左肺下葉部分切除術を施行した.病理組織所見は,同心円性層状構造がみられる類円形腫瘤で凝固壊死組織からなっていた.Grocott染色では腫瘤中心部に卵円形真菌を認め,肺ヒストプラズマ症と診断した.
著者
高橋 剛士 福瀬 達郎 倉橋 康典 木場 崇之 高橋 鮎子 福田 正順 妻鹿 成治 板東 徹 田中 文啓 平田 敏樹 越久 仁敬 長谷川 誠紀 寺田 泰二 池 修 和田 洋巳 人見 滋樹
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.685-689, 1999-07-15 (Released:2009-11-11)
参考文献数
11

上肢に症状を呈したBuer墓er病に対して胸腔鏡下交感神経切除術が奏功した一例を経験したので報告する.症例は46歳, 男性.一日約40本, 25年の喫煙歴があった.約半年前から両上肢の指末梢側を中心として痺れ, 冷感が出現し始めた.Buerger病との診断にて星状神経節ブロック術を受けたが症状の改善は一時的で, 疼痛も増悪してきたため両側胸部交感神経節切除術を施行した。術直後より癖痛, 痺れ, 冷感の著しい改善を認め, 術後6週間を経た時点では痺れ, 冷感は全く認められず, 術前潰瘍化していた指の完全治癒を認めた.サーモグラフィーにても上肢末梢皮膚温の著明な上昇を認めた.レーザードップラー血流計を用いて指末梢側の組織間血流を計測したところ, 症状の改善とよく一致して血流の増加を認めた.このことからBuerger病における術前術後の組織間循環の評価に際してレーザードップラー血流計が有用であると考えられた.
著者
岡田 春太郎 郷田 康文 太田 紗千子 髙橋 守 渋谷 信介 寺田 泰二
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.50-53, 2021-02-20 (Released:2021-02-26)
参考文献数
8

背景.原発性腹膜癌は卵巣癌,卵管癌とともにミュラー管由来腺癌と総称される疾患である.今回,両側の横隔膜上の脂肪組織内に転移が認められた原発性腹膜癌症例を経験したので報告する.症例.78歳女性.皮膚筋炎と診断され,間質性肺炎の評価のためのCTで横隔膜前縁の脂肪組織内に右側34 mm,左側49 mm大の腫瘤と,下大静脈や腸骨動脈周囲に多数の腫瘤が認められ,悪性リンパ腫が疑われた.生検目的で胸腔鏡下に右側の脂肪内の腫瘍を摘出し,病理検査で漿液性癌が認められた.婦人科臓器由来の腫瘍転移が疑われ,婦人科で腹腔鏡下両側付属器摘出と腸間膜腫瘍摘出が施行され,両側付属器には腫瘍は認められなかったが,腸間膜上の腫瘍は横隔膜上脂肪組織内のものと同じ組織像であり,原発性腹膜癌と診断した.卵巣癌は横隔膜直下の腹膜から横隔膜を浸潤して胸腔へのリンパ節へ転移する経路が報告されているが,本症例も同じ転移経路で横隔膜上のリンパ節に転移したと考えられた.結論.原発巣が明らかでない横隔膜上の腫瘍性病変が認められる症例は,炎症性疾患や悪性リンパ腫の他,原発性腹膜癌などの悪性腫瘍のリンパ節転移についても検討する必要がある.