著者
畠山 兆子 松山 雅子
出版者
梅花女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、現代のメディア・ミックス状況における子どもの読書指導の可能性と課題を明確にとらえるために、子どもの物語受容の根幹に潜む物語典型の内実を、最も日常的な物語体験であるテレビ視聴を軸に探ろうとした者である。本、テレビ番組、DVD、ゲームといった個別の媒体を問題にするのではなく、現代の子どもが多様な媒体を往還するなかで受け止めている<物語言語>のありようを対象テクストと子どもが出会うコンテクストの分析・検討を行うことを基本とする。それによって媒体の差異を越えて、今日の子どもの物語スキーマを解き明かす物語の構造的特徴が見えると考えたからである。具体的にはテレビ番組「世界名作劇場」から、「小公女セーラ」と「ピーターパンの冒険」を取り上げた。児童文学の名作古典とされる原作とアニメーション番組を比較研究することで放送形態によって物語がどの様な変容を遂げたか、どのように再生産されて「見る物語」として子どもの物語理解、自己認識に反映するのかを考察した。また、今日の子どものメディア環境を明らかにするため、小学生(4〜6年生)338名、中学生(1〜3年生)439名、比較の対象として大学生(1〜4年生、2校)519名のアンケート調査を行った。実施した「メディア環境アンケート」は多義に渡るもので、本報告では、<個人情報><メディア環境>(1情報を得るメディア2大切なメディア8どこでアニメを見るか9マンガを読むメディアは何か)<読んでいる雑誌・本>(17アニメを見て原作を読んだか18原作を読んでアニメを見たか)<テレビ視聴>(19誰と好きな番組を見るか21テレビの視聴時間23録画24ビデオやDVD)<ゲーム>(27PCゲームをするか35ゲームをする時間)の各項目と記述による「物語を想像して読む」のみの集計となっている。
著者
畠山 兆子
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
no.54, pp.82-95, 250, 1999-01-31

What kind of televised animation has most attracted Japanese children of today? "Pocket Monster, " which was originally made for a data-trading game for Nintendo's Gameboy, has been overwhelmingly popular. Consideration will be given to the detailed analysis of the animation's structure in comparison with its orginal game and comic scripts, which are found in children's monthly magazines such as "Korokoro Comics" and Shogakukan's "Primary Grader: 4th to 6th." In particular, major features of both the openings and the endings, as well as their broadcasting time schedules will be thoroughly examined to illustrate why "Pocket Monster" has become so popular.
著者
畠山 兆子 松山 雅子
出版者
梅花女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

「ハウス食品世界名作劇場」(1985年~1993年)放映の「小公女セーラ」と「ピーターパンの冒険」について、再話のあり方と映像表現手法の構造分析的研究は一応の成果をあげた。海外受容については、フランスで放映された「小公女サラ」の独自のオープニングを分析して、主人公像とオープニングの役割認識の違いを明らかにした。次の課題である、視聴者の映像による物語理解のあり方を国際比較するため、「ピーターパンの冒険」を使った予備調査を大学生と小学生で実施した。
著者
松山 雅子 畠山 兆子 土山 和久 田中 俊弥 香山 喜彦
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

最終年の本年度は、二度の予備調査を踏まえ、2003年2月〜3月にかけて、国語科メディア・エデュケーションを標榜した単元学習を開発、実施、検討を行った。また、前年度から継続研究である英国映画研究所教育部門開発の教授法の考察ならびにドイツにおけるメディア教育の検討を基礎研究として行い、教授法ならびに教材開発を多角的に行うよう努めた。合わせて、予備調査を踏まえた子ども用国語科学習ソフト作成への見通しをつけた。具体的には、大阪府下・兵庫県下の公立小中学校ならびに大阪教育大学附属中学校の計10校の協力を得て、大阪教育大学との連携システムを構築し、テレビ・アニメーションを用いた読解表現単元を構想し、指導法ならびに教材資料の開発、指導前、中、後指導を行い、実施、検証した。パイロット授業は、作り手の立場に立って読む・表現することを目的とした単元学習「新しい国語「名探偵コナン」の予告編を作ろう」(全8時間)で、「子どものメディア環境アンケート」を補助調査として実施した。授業展開の大要は、動画の基礎読解→動画粗筋の作成→粗筋と予告編の違いに気づく→予告編の意図、機能および視聴者を意識した予告編案の作成→大学において子どもの予告編案の映像化→相互批評会→オリジナル予告編の批評→アンケート調査であった。短編中心の物語小説教材を扱うことの多い国語科にあって、30分番組という中篇物語を作り手の立場に立って読解し、受け手を意識して予告編に再構築するという学習活動は、学習者にとって予想外の困難さを伴う、新鮮な活動と映ったようであった。動画リテラシーを全面に取り立てた授業に対する子どもの反応と学習のさまは、ワークシートの学習記録ならびに事後のヒアリングによって検証した。大学において映像化をサポートした本研究の授業法によって、設備面で困難な学校でも実施が可能になり、小中校の実践者の方々にとって具体的な意欲付けになった。
著者
松山 雅子 土山 和久 住田 勝 井上 博文 畠山 兆子 香山 喜彦 羽田 潤
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

現職教員向けメディア学習実践理論書と学習ソフトをセットした『自己認識としてのメディア・リテラシーPARTII』(学習ソフトDVD付)(松山雅子編著・香山喜彦プログラムデザイン、畠山兆子、羽田潤、粟野志保、増田ゆか、松尾澄英、土居安子分担執筆)』(教育出版、2008年8月20日、全262頁)を刊行し実践現場に寄与するべく、平成18年度から継続的行ってきた学習プログラム試案とそれに基づく小中学校および大学におけるパイロット授業、学習者反応の検討、現職研修ワークショップと指導者反応の考察を行った。
著者
香曽我部 秀幸 横山 充男 鵜野 祐介 加藤 康子 近藤 眞理子 田中 裕之 富安 陽子 長澤 修一 畠山 兆子 福井 善子 藤井 奈津子 松井 外喜子 高科 正信 香曽我部 秀幸
出版者
梅花女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

研究を始めたとき、「幼児教育・保育の実践をめざすこと」と「児童文学・絵本の創作・伝達・研究を行うこと」は密接に関連すると考えていた。だが、それぞれを目標とする若い女性には、異なる気質が見出され、簡単に2つの目標を合体できないことが、実践的研究からわかってきた。だが、5年間の実践的研究を積み重ねた結果、児童文学・絵本の創作や伝達の実践活動は、幼児教育・保育を目指す若い女性に刺激を与え、新たな技能や知見を獲得し、意欲を生み出していく現象が見出された。すなわち、児童文学・絵本の創作・伝達・研究を巡った実践的な教育は、時間はかかるものの、幼児教育・保育の教育に寄与すると考えられる。