著者
登田 龍彦
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学教育学部紀要 人文科学 (ISSN:0454613X)
巻号頁・発行日
no.55, pp.165-178, 2006

本稿の議論の構成は以下の通りである。先ず第2節では、項の概念規定を行う。とりわけ、虚辞(expletive)、疑似項(pseudo-argument)、項の区別を手始めに、意味論的項(semantic argument)と統語論的項(syntactic argument)、そして構文文法でいうところの動詞の項(argument of verb)と構文の項(argument of construction)について触れた後に、There構文の主語に生起する虚辞(expletive)のthereは、構文の項に属すると主張する。第3節では、Goldberg(2001,2005,2006)の構文文法での項省略分析の不備を指摘する。第4節では、認知論的視点から項省略についての代案を提起する。最後に議論をまとめる。