著者
高橋 聡 三田 知子 村上 恵理 遠藤 雅士 丹波 嘉一郎 長谷川 聰 白井 克幸
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.89-94, 2023 (Released:2023-03-29)
参考文献数
15

【緒言】ブプレノルフィン経皮吸収製剤(BTDP)の自己中断により,急性オピオイド退薬症状を呈した在宅医療患者を報告する.【症例】84歳,在宅訪問診療利用中の男性.腰部脊柱管狭窄症の悪化により,4カ月前からBTDPで鎮痛されていた.症状改善傾向と考えた家人が,患者本人に無断でNSAIDs経皮吸収製剤に貼り替えたところ,約50時間後から5分ごとの頻尿や失禁,水様性下痢,発汗,血圧低下,足裏の不快感,不眠などの多彩な症状が表出された.Clinical Opiate Withdrawal Score(COWS)では12点の軽度退薬症状に該当した.発症後24時間で激しい症状はほぼ自覚されなくなり,48時間後には完全に消退した.【結論】BTDPの急速な中止による退薬症状の報告例は少ない.医学薬学的な側面のほか,在宅医療におけるオピオイド製剤使用上の社会的問題点も明らかとなった.
著者
二宮 貴一朗 大熊 裕介 海老 規之 青景 圭樹 大矢 由子 阪本 智宏 上月 稔幸 野崎 要 白井 克幸 野中 哲生 里内 美弥子 石川 仁 堀田 勝幸 滝口 裕一
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.95-99, 2021-04-20 (Released:2021-04-30)
参考文献数
19

遠隔転移を有する非小細胞肺癌の標準治療は薬物療法であり,局所治療の追加による生存延長効果は明確に示されていない.一方で,転移病変が限られていた場合(Oligometastatic disease)において,局所治療を行ったことにより長期予後が得られた症例が存在する.近年,Oligometastatic diseaseに対して局所治療の追加の意義を評価したランダム化比較試験が複数報告された.これらは,診断時から原発および限られた転移病変を有し,すべてに対して局所治療が可能な症例(Synchronous oligometastatic disease)を対象としており,いずれの試験でも有望な結果が示されている.有効な薬物療法(分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬など)の台頭や放射線治療技術の進歩により肺癌治療は多様化しており,局所治療の目的も変化しつつある.Oligometastatic diseaseに対する局所治療は,その侵襲性によるデメリットや薬物療法の中断に伴うリスクを考慮する必要があるが,新たな治療戦略の1つとなる可能性がある.
著者
白井 克幸 横尾 聡 中野 隆史 大野 達也 齋藤 淳一 武者 篤 阿部 孝憲 赤羽 佳子 小林 なお 小林 大二郎 近松 一朗
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.25-29, 2019

重粒子線治療は良好な線量分布を持ち,高い生物学的効果を有している。従来X線抵抗性と考えられている頭頸部非扁平上皮癌(腺様嚢胞癌,腺癌など)や,粘膜悪性黒色種,骨軟部腫瘍に対して,優れた局所制御率が報告されている。本邦の重粒子線治療施設は5施設と世界最多であり,その治療技術や研究開発において指導的役割を果たしている。これまでは重粒子線治療は単施設による報告に限られていたが,2014年より日本炭素イオン線治療臨床研究グループ(J-CROS)が組織され,多施設共同臨床研究を通じて頭頸部腫瘍に対する重粒子線治療の包括的な有効性や安全性が報告されてきた。これまで重粒子線治療は先進医療として行われてきたが,これらの本邦からのエビデンスをもとに,2018年から頭頸部悪性腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮癌を除く)が保険適用となっている。今回の総説では,頭頸部腫瘍に対する重粒子線治療の概要,これまでの治療成績ならびに今後の展望について概説する。