著者
古村 和恵 宮下 光令 木澤 義之 川越 正平 秋月 伸哉 山岸 暁美 的場 元弘 鈴木 聡 木下 寛也 白髭 豊 森田 達也 江口 研二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.237-245, 2011 (Released:2011-11-16)
参考文献数
13
被引用文献数
3 4

より良い緩和ケアを提供するために, がん患者やその家族の意見を収集することは重要である. 本研究の目的は, 「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」(OPTIM)の介入前に行われた, 進行がん患者と遺族を対象とした質問紙調査で得られた自由記述欄の内容を分析し, がん治療と緩和ケアに対する要望と良かった点を収集・分類することである. 全国4地域の進行がん患者1,493名, 遺族1,658名に調査票を送付し, 回収した調査票のうち, 自由記述欄に回答のあったがん患者271名, 遺族550名を対象とした. 本研究の結果から, がん患者と遺族は, 患者・医療者間のコミュニケーションの充実, 苦痛緩和の質の向上, 療養に関わる経済的負担の軽減, 緩和ケアに関する啓発活動の増加, 病院内外の連携システムの改善, などの要望を持っていることが明らかとなった. Palliat Care Res 2011; 6(2): 237-245
著者
森田 達也 野末 よし子 宮下 光令 小野 宏志 藤島 百合子 白髭 豊 川越 正平
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.317-322, 2012 (Released:2012-04-13)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究の目的は, 在宅特化型診療所とドクターネットの両方が存在する1都市におけるがん患者の自宅死亡率の推移を明らかにすることを通じて, 在宅特化型診療所とドクターネットの地域緩和ケアにおける役割についての洞察を得ることである. 緩和ケアの地域介入研究が行われた1地域でがん患者の自宅死亡率を2007年から2010年まで取得した. 自宅死亡率は, 2007年の7.0%から2010年には13.0%に増加した. 自宅死亡総数に占める在宅特化型診療所の患者の割合は49%から70%に増加したが, 在宅特化型診療所以外の診療所が診療したがん患者の自宅死亡数も63名から77名と減少しなかった. 在宅特化型診療所と一般の診療所のドクターネットは排他的に機能するものではなく, 両方のシステムが地域に存在することにより自宅で過ごすがん患者の緩和ケアの向上に寄与する可能性が示唆された.
著者
白髭 豊
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.401-407, 2016 (Released:2017-11-06)
参考文献数
3
被引用文献数
2

長崎在宅Dr.ネットを中心とした口腔機能の維持・向上,栄養改善に関する多職種連携を紹介する.2003年に発足したDr.ネットは,都市部の診療所連携を推進して医師の負担感の軽減を図る一方,多職種間で様々な連携を行なってきた.結成当初より独自の管理栄養士派遣システムを作り, 2 名の管理栄養士が複数の診療所において外来および訪問栄養指導を実践した.Dr.ネットと管理栄養士の連携を普遍化した形で,長崎県栄養士会は2004年10月『ながさき栄養ケアステーション』を組織し,栄養士を診療所,病院,医師会などの依頼により斡旋・派遣するシステムとなった.また,在宅でできる簡単なレシピ集作りを行なうとともに2005年10月には胃ろうに関する研修会を実施し,知識・技術の普及に努め,2012年には,「在宅における胃ろう管理の手引き」を作成し,地域の関係職種が力を合わせて,病院,在宅でバラバラだった指導方法等をまとめた.Dr.ネット医師と歯科医師,歯科衛生士,栄養士とが緊密な連携を行ない,口腔機能の維持・向上に取り組んだ. これらの活動によって,管理栄養士が在宅で利用者家族とともに調理し,誤嚥性肺炎の再発予防に寄与するとともに,介護者の自信と安心につながった.在宅でできる簡単なレシピ集も高齢者の栄養改善に役立った.また,胃ろうに関する研修会によって,経験のなかった医師でも在宅で胃ろう交換・管理が困難なく出来るようになり,胃ろう管理の手引きとともに一般医のレベルアップへつながる取り組みとなった. 嚥下能力の低下により体重・食事量が減少している特養入所中の要介護高齢者に対しては,歯科医の指示のもとに歯科衛生士が介護職員に指導して咀嚼訓練を行った結果,口唇などの口腔周囲筋力や摂食嚥下状態が改善し,食事摂取量と体重の増加が認められた.また,脳梗塞の後遺症で経口摂取が顕著に減少した要介護高齢者に対しては,耳鼻科医の嚥下評価の後に実施した栄養士による嚥下食指導,歯科医による入れ歯の調整,歯科衛生士による口腔ケアの定期導入により食欲や咀嚼が改善し,胃ろう導入を回避できた.このように医師,歯科医師,歯科衛生士,栄養士などの多職種連携を有機的に展開することで,口腔機能の維持・向上,栄養改善で着実な成果が得られた.
著者
森田 達也 古村 和恵 佐久間 由美 井村 千鶴 野末 よし子 木下 寛也 白髭 豊 山岸 暁美 鈴木 聡
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.382-388, 2012 (Released:2012-07-31)
参考文献数
22

本研究の目的は, 患者所持型情報共有ツール『わたしのカルテ』の利用状況を明らかにすることである. 配布数, 医師706名・看護師2,236名の質問紙調査, 医療福祉従事者40名に対するインタビュー調査, 事例を分析した. 年間平均1,131冊が配布され, 15%の医師, 16%の看護師が使用した. 医療者の体験としては, 現状として【一部では使われているが全体には広がらない】, 効果として【患者の自己コントロール感が上がる】【医療福祉従事者間の情報共有になる】, 普及しない理由として【患者にとって利益がない・負担が大きい】【関係する地域の職種すべてが使用する必要がある】ことが挙げられた. 11病院で運用が試みられたが, 3年間継続した運用ができたのは2病院のみであった. わが国の多くの地域において, 患者所持型情報共有ツールを短期間に地域全体に普及させることの実施可能性は低いことが示唆された.
著者
森田 達也 野末 よし子 花田 芙蓉子 宮下 光令 鈴木 聡 木下 寛也 白髭 豊 江口 研二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.121-135, 2012 (Released:2012-02-22)
参考文献数
19
被引用文献数
5

本研究の目的は, 地域緩和ケアプログラムが行われた地域の医師・看護師の体験した変化を収集することである. OPTIMプロジェクト介入後の医師1,763名, 看護師3,156名に対する質問紙調査の回答706件, 2,236件を対象とした. 自由記述の内容分析を行い, それぞれ327, 737の意味単位を同定した. 好ましい変化として, 【チーム医療と連携が進んだ】 ([相談しやすくなった][名前と顔, 役割, 考え方が分かるようになった]など), 【在宅療養が普及した】 ([在宅移行がスムースになってきた]など), 【緩和ケアを意識するようになり知識や技術が増えた】が挙げられた. 意見が分かれた体験として, 【病院医師・看護師の在宅の視点】【活動の広がり】【患者・家族・市民の認識】が挙げられた. 地域緩和ケアプログラムによるおもな変化は, チーム医療と連携, 緩和ケアの意識と知識や技術の向上, 在宅療養の普及であると考えられた.