著者
眞溪 歩 藤巻 則夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本基盤研究(B)「変調刺激による誘発脳波・脳磁界計測」は,誘発脳波・脳磁界計測において被験者に提示する刺激に広義の変調を施し,脳波・脳磁界データから脳内処理に関係する情報を抽出する計測方法の開発を目的とした.具体的には以下の項目について研究・開発を行った.1)M系列符号を用いて人間に直接与える刺激にAM, PM変調を施し,この符号を用いた復調を行った.2)言語処理課題の対照実験に対し,実験Aの脳波・脳磁界には実験Aに関連する変調作用が反映されていると考え,それが実験Bの脳波・脳磁界に含まれているかを調べるフィルタリングを行った.3)2)における脳内での変調作用は自発脳波(α波,β波など)の位相同期にも現れると考え,刺激前後のα波の位相と誘発反応の振幅の関係を調べた.4)変調を施さない方式での脳波・脳磁界計測も行い,上記変調方式と比較した.5)1)の方式の有用性検証するために,リアルタイム動作するBrain-Computer Interface(BCI)を試作した.6)上記の手法開発過程での副産物として,信号源推定法を開発した.上記の情報抽出手段は既存の脳イメージングの枠組みにははまりにくいが,システム論の立場では重要な意味を持つ.脳がその処理において入力信号に変調を加えるなら,入力信号の変化は脳が行った処理と考えられる.計測・制御を支えるシステム論においては,信号と処理は抽象化され同一視される.この同一視の重要性は,システムのanalysisにおいてもsynthesisにおいても実証されている.本研究の提案手法では,このような立場に立脚し,上記の5)を除く項目についてはanalysisとして,5)に対してはsynthesisとして有効の可能性を示した.
著者
眞溪 歩
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,注意・不注意,意識・無意識に関する事象関連電位/磁界(ERP/ERF)計測を行うことを目的としていた.そこで,本研究を,目的を直接的に追求するための認知行動実験と,認知行動実験時のERP/ERFを計測・解析する手法の両面から構成した.計測解析手法では,脳領野間の方向付き位相共振を定量化する解析法を確立し, IEEE Tr BME誌に論文発表した.これらを用いた注意・不注意,意識・無意識が介在するERP/ERF解析では,無意識下での認知行動モデルの生成とそれが律動成分の位相共振によって実現視されていることを示唆する結果を得た.
著者
土居 元紀 陳 謙 眞溪 歩 大城 理 佐藤 宏介 千原 國宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.2203-2208, 1997-08-25
被引用文献数
37

会社やマンションなど, 不審人物の侵入を防ぎたい管理施設の入口において, より信頼性が高く利用しやすいセキュリティシステムが望まれている. そこで, 顔画像照合の結果により入口の解錠を決定する解錠制御システムを試作した. 実用的な解錠制御システム開発の観点から顔画像照合を検討し, 顔画像照合手法を, 入力画像からの顔領域の抽出, 顔領域の大きさ・傾き正規化と顔部品照合で構成した. 信頼性の高い照合実現のため, 目頭検出による精度の高い顔領域の大きさ・傾きの正規化を用いた. また, 目・鼻・口といった特徴的な顔部品を照合対象とすることにより, 眼鏡や髪型などの偽証しやすい部分を照合領域から排除している. 顔部品照合において本人のものか否かを決定するしきい値は統計的に決定した. 実際にシステムの性能について評価した結果, 本人の入室許可が92.2%, 他人の入室拒否が99.6%という照合成功率を得た.
著者
眞溪 歩
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

近年,脳機能を解明するための研究が盛んになってきており,その一例に脳神経活動の副産物として発生する磁界を多点で計測する脳磁界計測(以下,MEG,Magnetoencephalography)がある.MEGの目的のひとつは,逆問題を解き,脳神経活動を時間空間的に同定することである.この逆問題は不良設定問題であり,従来から行われている最適化による解法や,近年登場した統計的処理による解法では,それぞれ局所解に陥る,部分解能が悪いなどの問題を抱える.このような状況下で,本研究では2種類の手法を提案し,評価を行った.主な実績は,それぞれ下記のとおりである.1)ビームフォーミングによって,できるだけ高分解能に,空間的に離散化した脳内の各点の電気的活動を推定する.この段階での分解能は高くないが,各点の活動は時系列データとして得られるため,時系列間の相関をもとにクラスタリングを行い,同期して活動を行った部位ごとに表示することにする.聴覚野と運動野が時間帯をオーバーラップさせ活動するMEGデータに対し本手法を適用し,従来法では不可能であったそれぞれの活動の分離に成功した.2)必ずしも脳内の活動源推定に還元することなく,データどおしを比較し,その類似性を評価する手法としてバーチャルビームフォーミングを提案する.これは,脳内の具体的部位ではなく,特定のMEG活動のような抽象的なものをターゲットするビームフォーミングである.バーチャルビームフォーミングは,心理評価などの意識の介在する評価と異なり,MEGデータのみから脳内処理の類似性などを定量評価できる.音像定位関連MEGに対し,本手法を適用し,音源の移動幅が大きくなるにつれ,音源の出現・消失の反応と近くなることが確認された.
著者
土居 元紀 陳 謙 眞溪 歩 大城 理 佐藤 宏介 千原 國宏
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.20, no.41, pp.13-18, 1996
参考文献数
9
被引用文献数
2

This paper presents the PASSFACE system which is a lock-control system using face identification. If one can use his (her) face as a key, it will be very convenient to open a lock. The PASSFACE system identify a face image for judgment whether it should unlock a door or not. The face identification consists of two main processes ; normalization of the size and the inclination of the face image and matching of characteristic face components (eye, nose and mouth).