著者
熊澤 茂則 中村 純 太田 敏郎 矢崎 一史 宮城 健 福本 修一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.35-42, 2010-01-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
19

健康食品素材として利用されているプロポリスは,ミツバチが植物の特定部位を集めてつくった樹脂状物質であり,採集される地域によりその含有成分が異なる.最近,未解明であった沖縄産プロポリスの起源植物が,分析化学と生物行動学的研究手法によりトウダイグサ科の常緑樹木オオバギと同定された.そして,このオオバギが高い抗菌活性と抗ガン活性を有していることも見いだされ,新たな有用植物資源としての可能性に期待がかけられている.
著者
矢崎 一史
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

ABCトランスポーターは高等植物において大きな遺伝子ファミリーを形成し、シロイヌナズナでは123種の遺伝子が見いだされている。本研究においては、シロイヌナズナに22種類存在するABCBタイプのトランスポーターの内、AtPGP4(AtABCB4)とAtPGP21(AtABCB21)を取り上げ、これらが植物体におけるオーキシンの軸方向への移動にどのように関与しているか、分子レベルでその輸送能を解明することを目的とした。これまで、AtPGP4が根端と根の表皮細胞で強く発現し、IAAの根端からの求基的輸送に関与することを明らかにした。今年度は、AtPGP4と最も相同性の高い類似遺伝子AtPGP21に関して解析を行った。Promoter::GUS植物体の解析により、AtPGP21はAtPGP4の発現が全く見られない根の中心柱で発現していたが、それが内鞘細胞特異的であることが明らかになった。根以外では、葉や花弁など側方器官の付け根で強く発現していた。また幼植物体に限っては葉肉細胞でも強い発現が認められた。このタンパク質に特異的なペプチド抗体を作製して、膜の分画とウエスタンブロットにより局在膜を調べた所、細胞膜局在であることが明らかとなった。シロイヌナズナの膜画分を用いて検出されたバンドは140kDaであり、糖鎖などの修飾はないものと思われた。IAA感受性の酵母変異株を用いて、AtPGP21を発現させ、AtPGP21のオーキシン輸送機能の解析をIAAの感受性試験にて行った。その結果、コントロールに比べ、AtPGP21を発現させた形質転換酵母株は、それぞれIAAおよびIAAアナログの5-FI存在下でより高い感受性を示した。このことは、AtPGP21がAtPGP4と同様、取り込み方向にIAA分子を輸送していることを示唆している。
著者
小原 一朗 矢崎 一史
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.248-256, 2011

植物の香りは人間生活の中に深く入り込み,様々な場面で暮らしを豊かにしている.植物の芳香成分の中でも,特にモノテルペンと総称される揮発性有機化合物は,ハーブや花の複雑な芳香成分の主要なグループを形成する.我々は,近年発展が著しい植物分子生物学の知見を応用し,ハーブの一種であるシソ由来のリモネン合成酵素遺伝子を,芳香成分を作る樹木であるユーカリに導入した.その結果,ユーカリオイルの芳香成分の蓄積量を最高で約5倍に増加させることに成功した.本稿では,こうした香りのエンジニアリングにおいて基礎研究が極めて重要な役割を果たしたこともあわせて報告する.