著者
坂井 翔太 小澤 憲司 犬塚 将之 矢ヶ﨑 礼香 矢野 大仁 大江 直行 安江 志保 遠渡 沙緒理 小関 道夫 望月 清文
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1481-1487, 2020-12-05

急性に出現した複視の神経学的検査によってびまん性正中グリオーマと診断された小児の後天性内斜視症例を報告する。症例は11歳,女児。急性に複視を自覚し,近医を受診。急性内斜視が疑われたため,精査目的で当科を紹介初診した。初診時矯正視力は右1.5,左1.2で,両眼とも前眼部,中間透光体,眼底には特記すべきことなかった。対光反応には両眼とも遅延はなく,眼振はなかった。眼位は,近見30Δ,遠見35Δの共同性内斜視であり,明らかな眼球運動制限は認められなかった。Hess赤緑試験でも,両眼とも内方偏位していたものの,眼球運動の制限はなかった。頭部MRIにおいてびまん性正中グリオーマが疑われたが,神経学的には意識は清明で髄膜刺激症状や脳圧亢進徴候もなく,運動障害,感覚障害は伴っていなかった。直ちに局所放射線治療を行い,腫瘍は縮小してきたが,現在ニムスチン塩酸塩を用いた髄内局所薬剤送達による化学療法を追加して治療中である。内斜視は,びまん性正中グリオーマによる開散麻痺によって急性に発症したものと推定された。脳腫瘍を起因とする小児内斜視の発症頻度はまれなものと思われるが,急性発症の後天性内斜視は頭蓋内腫瘍によって発症する可能性があるため,頭部画像診断を必ず行い鑑別診断をすべきである。
著者
矢野 大仁 中山 則之 大江 直行 三輪 和弘 篠田 淳 吉村 紳一 岩間 亨
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.2-7, 2013 (Released:2013-07-16)
参考文献数
41

脳腫瘍関連てんかんについて、疫学、機序、治療などの観点で文献レビューを行った。低悪性度グリオーマ患者の70~90%がけいれんで発症するが、術後の発作消失率は約75%と報告されている。脳腫瘍関連てんかんの制御予測因子は、内科的制御、てんかん罹患期間1年未満、腫瘍の全摘出などで、側頭葉腫瘍では全摘出に海馬切除や皮質切除を追加すると発作消失率が高まり、手術時期に関しては発症3年未満で制御率が高まる。薬物治療では旧来薬にレベチラセタム(LEV)やガバペンチンの追加が推奨され、LEVは単独治療よりもバルプロ酸に追加すると効果が高い他、術後にはフェニトインの代替薬となる。LEV単独治療でも制御率は高く、社会生活の質改善にも奏功することが報告されている。Synaptic vesicle 2 A(SV 2 A)はLEVの結合蛋白であり、腫瘍や周辺脳においてSV 2 A蛋白の発現が高ければ奏功率が高いとされる。
著者
矢野 大仁 SAWADA Motoshi SHINODA Jun FUNAKOSHI Takashi
出版者
日本脳神経外科学会
雑誌
Neurologia medico-chirurgica (ISSN:04708105)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.450-453, 1995-07-15
被引用文献数
15 26

症例は27歳男性。突然の激しい頭痛にて発症した。来院時、昏迷状態で軽度の頭痛と右不全麻痺を認めた。CTにてくも膜下出血と左前頭葉に脳内血腫を認めた。左内頚動脈写にてA4に紡錘状の拡張を認め、解離性動脈瘤と診断した。第3病日、動脈瘤の切除術を施行した。動脈瘤は硬くひょうたん型を呈していた。末梢領域に対する血行再建術は行っていない。病理にて中膜-外膜間で解離した解離性動脈瘤と判明したが、原因は不明であった。術後も軽度の右不全身麻痺などを認めたが、次第に改善し、術後約40日で独歩退院した。前大脳動脈に限局した解離性脳動脈瘤の報告は稀で、特に治療方針につき文献的考察を加え報告した。