著者
矢野 大仁 中山 則之 大江 直行 三輪 和弘 篠田 淳 吉村 紳一 岩間 亨
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.2-7, 2013 (Released:2013-07-16)
参考文献数
41

脳腫瘍関連てんかんについて、疫学、機序、治療などの観点で文献レビューを行った。低悪性度グリオーマ患者の70~90%がけいれんで発症するが、術後の発作消失率は約75%と報告されている。脳腫瘍関連てんかんの制御予測因子は、内科的制御、てんかん罹患期間1年未満、腫瘍の全摘出などで、側頭葉腫瘍では全摘出に海馬切除や皮質切除を追加すると発作消失率が高まり、手術時期に関しては発症3年未満で制御率が高まる。薬物治療では旧来薬にレベチラセタム(LEV)やガバペンチンの追加が推奨され、LEVは単独治療よりもバルプロ酸に追加すると効果が高い他、術後にはフェニトインの代替薬となる。LEV単独治療でも制御率は高く、社会生活の質改善にも奏功することが報告されている。Synaptic vesicle 2 A(SV 2 A)はLEVの結合蛋白であり、腫瘍や周辺脳においてSV 2 A蛋白の発現が高ければ奏功率が高いとされる。
著者
榎本 由貴子 吉村 紳一 高木 俊範 辻本 真範 石澤 錠二 岩間 亨
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.251-258, 2014 (Released:2015-02-03)
参考文献数
24
被引用文献数
2 3

要旨: 【目的】緊急脳血管内治療時における抗血小板薬のローディングドーズ投与後の血小板反応性の経時的変化をVerifyNow system を用いて測定し,予定治療症例と比較検討する.【方法】2011 年6 月から2013 年12 月の間にクロピドグレル300 mg とアスピリン200 mg のローディングドーズ投与を行った急性期脳主幹動脈閉塞症;acute 群13例と,クロピドグレル300 mg のローディングドーズ投与のみを行った予定治療群;elective 群10 例.投与前,投与6・24・48〜72 時間後にVerifyNow を用いてaspirin reaction unit(ARU),P2Y12 reaction unit(PRU),% inhibition を測定し,その経時的変化を検討するとともに,24 時間後の低反応性(PRU>230,% inhibition<26%,ARU>550)に関連する因子について検討した.【結果】クロピドグレルの効果はelective 群では24 時間後に十分得られていたが,acute群では48 時間後以降も不十分であった.一方,アスピリンの効果は内服6 時間後には十分発現されていた.クロピドグレル低反応性(15/23 例:65.2%)はacute 群(p=0.0018)とbody mass index(p=0.005)に関連が認められた.アスピリン低反応性はacute 群の13 例中3 例(23.1%)に認め,年齢(79±1.73 vs 68.5±14.5,p=0.049)のみ関連が認められた.【結論】ローディングドーズ投与法は早期に効果が発現される投与法であるが,急性期脳梗塞においてはクロピドグレルの効果が発現されにくい可能性が示唆された.
著者
坂井 昇 坂野 喜子 中島 茂 郭 泰彦 岩間 亨 吉村 紳一
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

近年、脳虚血による細胞障害にアポトーシスが関与することが報告され注目されている。そこで我々は脳虚血の病態を解明するために、低酸素刺激による神経細胞死に注目し、アポトーシス関連因子を中心として細胞内シグナル伝達機構についての解析を行ってきた。従来、低酸素や虚血による細胞死はネクローシスと考えられてきたが、近年一部の細胞死がアポトーシスであることが報告されており、我々もこれまで神経系細胞のモデルとしてラット褐色細胞腫細胞株(PC12細胞)を用いた低酸素負荷でのシグナル伝達経路の解明を行った結果、低酸素によりアポトーシスとネクローシスの両方の細胞死が誘導され、その過程でセラミド産生とカスパーゼの活性化の関与を唱えてきた。さらにその後の研究でPC12細胞に存在するPLD2が低酸素刺激によって細胞が死に向かう前段階で活性化される知見を得ており、外因性のPLDによって細胞死が抑制されたことから、PLD2が虚血性脳血管障害において今後治療のターゲットとなる可能性が示唆された。また、抗酸化剤であるグルタチオン(GSH)の前投与によりセラミド産生に重要な中性スフィンゴミエリナーゼ(SMase)活性とともにその下流のカスパーゼ3の活性化が抑制されることで細胞死が有意に抑制されることが判明し、細胞の酸化・還元のレドックス制御をしているGSHが中性SMase活性の上流で細胞死を調節していることが推測された。これは一方で神経細胞死への活性酸素(ROS)の関与も示唆しているが、活性酸素種のひとつである過酸化水素によるPC12細胞の細胞死は低酸素刺激による細胞死とはセラミド産生の有無で異なり、同じ細胞でも低酸素と過酸化ストレスに対する細胞死の誘導には異なった経路が存在することとなり、低酸素負荷による神経細胞死のROSの発生との関連も併せて、今後の重要な検討課題考えられた。