著者
浅利 美鈴 矢野 順也 酒井 伸一
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第26回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.1, 2015 (Released:2015-10-19)

ネットアンケートを実施し、消費者の食品類の消費・廃棄に関する意識や行動について検討した。 その結果、どの食品類も1割以上、野菜・果物類は36%の人が、ほとんど手をつけないまま廃棄した経験を持つことがわかった。その原因は「食べるつもりだったが、気づくと期限が切れていた」というものが主であったが、買い過ぎや嗜好性も影響していることがわかった。期限切れ等に至る理由としては、冷凍冷蔵庫や食品庫の在庫チェックをこまめに行っていないことが一因と考えられた。期限切れした食品への対応を尋ねた結果、2~3割の人が「開封せずにそのまま捨てる」としている。このように期限表示に頼る傾向が、食品ロス発生を助長していることも確認された。多様な食品ロス削減策に対する評価を尋ねた結果、様々な策の有効性が支持される結果となった。期限表示に応じた値引きの仕組みや、量り売り・適量販売等についても、検討の余地があると考えられた。
著者
柳川 立樹 矢野 順也 浅利 美鈴 平井 康宏 酒井 伸一
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集
巻号頁・発行日
vol.28, 2017

本研究では、食品ロス発生抑制行動による環境及び経済への影響を定量化することを目的とし、事業所における食品フロー推計及び食品ロス抑制による市場影響を評価するためのモデル開発を行った。推計対象事業種はスーパー、レストラン、ホテルとした。また、現状のままである基本シナリオ(S1)と発生抑制行動を実施するシナリオ(S2)を比較することで削減コストを推定した。その結果、コスト削減効果は食品廃棄物削減による影響よりも食品仕入量の削減による影響の方が大きく、温室効果ガス削減効果と同様の傾向を示した。全国へ拡大推計した場合には、市場規模に対してレストランで2.8%(2,202億円/yr)という結果となった。このような推計値は、食品ロス発生抑制による経済的便益を勘案するための指標とできる可能性がある。本モデルの精度向上には、摂食率などの不確実性の高い仮定や抑制行動によるコスト増加影響などの調査が必要である。
著者
酒井 伸一 矢野 順也
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.55-68, 2014-01-31 (Released:2021-04-23)
参考文献数
57
被引用文献数
5 1

食品廃棄物の 3R に対する取り組みは国内外で近年目まぐるしく展開されている。本報では食品廃棄物の定義や発生量等について国内外の現状を整理し,リデュース・リサイクルの LCA に関する複数の研究事例から定量的な効果を総合的に検討した。加えて老朽化が進んでいる国内の焼却施設の施設更新に伴う都市廃棄物 (MSW) 処理戦略として,食品廃棄物の嫌気性メタン発酵の導入による国内のエネルギー回収,温室効果ガス削減ポテンシャルを推定した。食品廃棄物のメタン発酵バイオガス発電とその他都市廃棄物の高効率焼却発電を組み合わせることで,2011 年現在と比較して 2020 年には 37 %,2030 年には 64 % の発電電力量増加が期待できる。現在未利用の家庭系をはじめとする MSW 中の食品廃棄物のメタン発酵利用は,特に焼却発電が難しい規模の中小都市にとって重要なエネルギー回収,温室効果ガス削減手段となることが期待できる。
著者
浅利 美鈴 西本 早希 安藤 悠太 奥野 真木保 矢野 順也 酒井 伸一
出版者
大学等環境安全協議会
雑誌
環境と安全 (ISSN:18844375)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-10, 2021 (Released:2021-06-13)
参考文献数
28

プラスチック製品や廃棄物、マイクロプラスチックが世界的に大きな課題となり、様々な対策が検討されている。日本においても、2019年5月に「プラスチック資源循環戦略」が策定され、3R+Renewableを基本原則とし、意欲的な数値目標を含むマイルストーンを設定した上で、重点戦略に基づく様々な取組が始まっている。しかし、様々な製品への使用に対する消費者の認識は十分とは言えず、意識・行動の把握も緒に就いたところである。 そこで、幅広く、かつ具体的なプラスチック製品を対象に、消費者や企業、行政等が情報共有を進め、今後の対話や議論につなげることのできる消費者意識・行動の可視化・コミュニケーションツールとして「プラ・イド チャート」を考案した。そのチャートの活用可能性を考察することを目的に、必要なデータをアンケート調査等から得て、プロットした。 「いる/いらない」「避けられる/避けられない」という2軸からなるチャートについて消費者アンケート調査結果を元に階層的クラスター分析を行ったところ、6群に分類され、チャートにおいて、それぞれ現在の消費者意識・傾向が分かり、特に短期的な対策に向けた検討に資する知見が得られた。
著者
矢野 順也 平井 康宏 酒井 伸一 出口 晋吾 中村 一夫 堀 寛明
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.38-51, 2011 (Released:2011-03-24)
参考文献数
41
被引用文献数
11 2 2

国内都市部の一例として京都市を対象に,都市ごみ中のバイオマスである厨芥類および紙類の賦存量を推定した。厨芥類の発生量は22.2万ton-wet/年,紙類は22.3万ton-wet/年であり,ほぼ全量が焼却処理されている。これらを対象に利用システムの温室効果ガス (GHG) 削減効果およびエネルギー回収率を評価した結果,「バイオガス化 (高温乾式メタン発酵)+ガスエンジン発電 (GE)」は既存の「直接燃焼+蒸気発電」,「直接燃焼+堆肥化」よりも有利であった。また,バイオガス発電時の廃熱を利用する超高温可溶化技術を組み込んだ可溶化システムでは,現状の乾式方式に対してエネルギー回収率およびGHG削減効果で27%の向上が見込まれた。さらに,バイオガスの燃料電池利用により,GE利用の最大1.7倍まで効果向上が期待された。国内温室効果ガスの削減に向けて都市ごみ中バイオマスの高度なエネルギー変換技術の普及が望まれる。