著者
原田 正純
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.337-343, 2011 (Released:2016-09-14)
参考文献数
20

水俣病は1956年5月に正式に確認された。原因は水俣市にある新日本窒素肥料(株)水俣工場 (現在のチッソ(株)) の廃水に含まれていたメチル水銀が魚貝類に蓄積されたことによる。それを多食した不知火海沿岸住民がメチル水銀中毒に罹患した。有機水銀中毒であるが食物連鎖を通じて起こったというその発生の特徴から水俣病と呼ばれた。1969年になって患者および家族が原因企業を相手に裁判を起こした。判決は安全性を確認しないで工場廃水を海に流したことは違法であるとして損害賠償を支払うように命じた。この判決や世論を受けて魚貝類に含まれる水銀の安全基準を0.4ppm,メチル水銀で0.3ppmとした。さらに,1962年にはメチル水銀が胎盤を通過して胎児に影響を与えることが明らかになった。患者の正確な数は不明だが約70名が確認されている。世界各地では魚貝類に含まれる微量なメチル水銀が胎児に与える影響が注目されている。各国の報告では母親の頭髪水銀値が10~20ppmでも胎児に一定の影響を与えることが明らかになっている。2011年に水銀の環境汚染に関する国際的規制が計画された。すなわち,2013年までに水銀の規制に関する国際的な条約が模索されており,日本政府はその条約に水俣条約と命名することを提案している。しかし,水俣の問題は決して終わっていない。現状ではその命名に対して異論も在る。
著者
池内 裕美
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.186-193, 2017-05-31 (Released:2019-11-07)
参考文献数
41
被引用文献数
1

「ホーディング」(hoarding) とは,「他の人にとってほとんど価値がないと思われるモノを大量にため込み,処分できない行為」と定義され,1990年頃から臨床心理学や精神医学の領域において,特に強迫性障害 (OCD) の観点から多くの研究がなされている。しかしその一方で,ホーディング自体は誰にでも,すなわち非臨床的な人にもみられる,極めて日常的な行為であるという主張もある。 そこで本論では,より重篤な強迫的ホーディングと非臨床群を対象とした日常的なホーディングの両方に焦点を当て,ホーディングをめぐるさまざまな課題について既存研究を基に概説する。より具体的には,精神疾患や幼少期の家庭環境といったホーディングと関連する諸要因,ため込む人の特性,ため込む理由やその対象,さらにはホーディングのもたらす諸問題等について取りあげる。そして,最後にホーディングに陥らないための予防や対策について考察する。
著者
高田 秀重
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.261-269, 2018-07-31 (Released:2019-07-31)
参考文献数
42
被引用文献数
2 4

プラスチックによる海洋汚染は21世紀に入り,マイクロプラスチック問題として新局面を迎えた。汚染は海洋表層水だけでなく,海底堆積物,海洋生態系全体に広がっている。プラスチックに含まれる有害化学物質はプラスチックを摂食した生物に移行していることも確認されている。リモートな海域ではその寄与が大きい可能性が示唆された。海洋環境中でプラスチックが長期間残留し,マイクロ化すると取りのぞくこともできないことから,国際的には予防原則的な対応がとられている。海洋プラスチックの主な汚染源は陸上で大量に消費される使い捨てプラスチックである。エネルギー回収も含めたプラスチックごみの焼却やリサイクルよりも,使い捨てプラスチックの削減が優先的に進めらている。解決策は,持続的で循環型の社会形成の中に位置づけ,温暖化等の環境問題全体の解決と調和させ,物質循環の視点から考える必要がある。
著者
加茂 徹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.133-141, 2018 (Released:2019-03-31)
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

炭素繊維強化プラスチック (CFRP) は軽くて丈夫で,自動車等に用いた場合に車両を軽量化して燃費を向上させることができる。炭素繊維は製造時にエネルギーを多く消費するが,リサイクルすることにより自動車等のライフサイクルエネルギーを大幅に削減できると期待されている。CFRP から炭素繊維を回収する方法としては,物理的あるいは化学的な手法が数多く提案されている。炭素繊維は不活性なガス雰囲気中では加熱しても引張強度等の物性劣化はほとんどないが,酸素,水蒸気,強酸等によって物性が劣化すると報告されており,炭素繊維にダメージ与えずにプラスチックを取り除くことがリサイクルの重要な技術的課題となっている。炭素繊維のリサイクルを普及させるためには,回収された炭素繊維を用いた製品の開発や,回収された炭素繊維の品質やトレーサビリティーを表示する標準規格化等の社会システムの整備も重要である。
著者
葛良 忠彦
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.273-280, 2010 (Released:2014-12-19)
参考文献数
21

現在,包装材料として,プラスチックが主要な材料となっている。プラスチックが適用されている包装材料の形態は,フィルム包装,シート成形容器,射出成形容器,ブロー成形容器など,その種類は多様である。包装材料としてのプラスチックは,ガラス,金属,紙に比べて,その歴史は比較的新しい。フレキシブル包装としては,セロファンの単層フィルム包装から始まり,現在バリア包装として,多層フィルムが多用されている。シート成形容器は,スーパーマーケットでのプリパックに適用されるようになり,普及した。ブロー成形容器は,食用油,液体調味料の容器として適用されるようになり,現在では,飲料容器として地位を確立した。包装材料には,多くの機能が要求されるが,ガスバリア性は特に重要である。現在,種々のバリアー材料やバリア化の技術が開発されている。包装材料はその使命を終えると廃棄される。このため,3R (リデュース,リユース,リサイクル) を基本とする包装設計が行われている。
著者
岸 恵美子
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.194-199, 2017-05-31 (Released:2019-11-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

いわゆる「ごみ屋敷」とは,ごみ集積所ではない建物で,ごみが積み重ねられた状態で放置された建物,もしくは土地を指す。居住者が自ら出したごみだけでなく,近隣のごみ集積所等からごみを積極的に運び込む「ため込み」の行為がある場合は,特に対応が困難である。いわゆる「ごみ屋敷」の人たちの多くは,セルフ・ネグレクトといわれる。筆者らは,文献検討と研究成果から,セルフ・ネグレクトを「健康,生命および社会生活の維持に必要な,個人衛生,住環境の衛生もしくは整備又は健康行動を放任・放棄していること」と定義した。支援者が対応に困難を感じる事例は多いが,実際には,本人が「困りごと」を抱えているのである。「支援を求める力が低下,あるいは欠如している人」ととらえ,ごみを片づけることを目標とするのではなく,信頼関係を構築し,本人の「自己決定」を尊重し,安全で健康な生活へと導くことが支援として重要である。
著者
齋藤 優子 白鳥 寿一
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.204-213, 2022-05-31 (Released:2023-05-31)
参考文献数
43

リチウムイオン電池 (LIB) は今後ますます市場拡大が見込まれ,将来の廃棄量増大が懸念されることからその資源循環のあり方に国際的な関心が高まっている。そうした中で近年,欧州連合 (EU) ではサーキュラーエコノミーを目指した資源循環やカーボンニュートラル推進と関連づけたリチウムイオン電池にかかわる制度の促進の動きがみられる。 本稿では EU の電池関連制度の変遷を概観し,フランスの電池指令の運用実態を事例として紹介する。
著者
野田 松平
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.387-392, 2019-11-30 (Released:2020-11-30)
参考文献数
6

太陽光発電設備の大量導入が進み,寿命に到達して大量のパネルが廃棄されはじめるとされる2030 年代が来る前に,九州では 2020 年度に点検・保守により交換される廃棄パネルが年間約 200 ton (2 MW に相当) に上ると推計されている。われわれは,その廃棄パネルのリサイクルを推進すべく,2018 年「福岡県太陽光発電 (PV) 保守・リサイクル推進協議会」を設立し,廃棄パネル回収システムを含む「廃棄パネルリサイクルシステム」の構築を始めた。現在,クラウドを通して会員間で情報を共有し,IoT を活用した効率的回収を目指す「スマート回収支援システム」を開発中である。実証試験により本システムの有効性を確認した後,2020 年度には電子マニフェストとの連携も可能とし,本システムの充実化を図る。ここで重要なことは,本リサイクルシステムの持続性であり,そのためには前記協議会が自立して持続可能な機関になる必要があり,並行して自立化のための独自技術開発を始めたところである。
著者
二瓶 泰雄 片岡 智哉
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.309-316, 2018-07-31 (Released:2019-07-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本報では,海洋プラスチックごみやマイクロプラスチックの発生源と考えられる陸域・河川ごみの動態を示すために,多くの現地調査事例に基づいて,河川におけるごみ (川ごみ) の輸送状況やごみ組成を示すとともに,日本の河川におけるマイクロプラスチック汚染状況の実態を取りまとめた。その結果,川ごみは出水時に大量に輸送され,川ごみ全体の 6 %がプラスチック等の人工系ごみであった。マイクロプラスチックに関しては,全 23 河川で発見されたこと,流域の市街化が進んでいる河川のほうがマイクロプラスチック汚染が進んでいることも示された。さらに,海洋プラスチックごみおよびマイクロプラスチック対策としての河川におけるごみ捕捉技術の可能性について言及した。
著者
大神 広記
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.408-412, 2019-11-30 (Released:2020-11-30)
被引用文献数
1

太陽電池発電設備は,耐用年数まで使用され,リユースやリサイクルが行われるものだけでない。近年,自然災害による太陽電池発電設備の損壊事故も多数発生している。自然災害により太陽電池発電設備にどのような事故が起きているのか,電気事業法における事故報告から,紹介する。 2018 年度に起こった,平成 30 年 7 月豪雨,台風 21 号,北海道胆振東部地震,台風 24 号による太陽電池発電所の事故報告は,計 48 件である。平成 30 年 7 月豪雨では,設備の立地地域における浸水や土砂崩れ等によるパネルやパワーコンディショナーの損傷といった被害が多い。台風では強風や高潮によるパネルの飛散や水没が多数発生。北海道胆振東部地震では,地震による地面の隆起,地割れ,液状化等に伴う架台,パネルの損傷や,パワーコンディショナーの短絡,地絡による運転機能喪失が発生した。
著者
石川 雅紀
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.106-114, 2019-03-30 (Released:2020-04-28)
参考文献数
15

海洋プラスチックごみ問題では,動的側面,国際的側面,問題・対策の多様性が重要であり,対策を考える上では,原因となる製品を A) 通常の使用状況でマイクロプラスチックとして排出する製品 ( 長寿命製品・短寿命製品 ),B) 散乱・不法投棄された後,その後マイクロプラスチック化する製品,C) 海洋に直接流出し,その後マイクロプラスチック化する製品に分類することを提案した。 対策の方向性としては,周辺途上国への日本の廃棄物管理制度確立の経験,技術,ノウハウ等の提供,支援,および,浮遊ごみの回収,および A) 群の製品 ( 歯磨き粉,洗顔料,タイヤ,人工芝,ドアマット等 ) に対する対策である。これらの製品の場合は,廃棄物問題として捉えられてこなかった問題であり,ただちに調査・研究するとともに,フローを抑制する対策が必要である。C) 群の漁具については,プラスチック使用量,排出量,産業廃棄物としての処理量等,基本的な情報がまったくなく,現状の把握が喫緊の課題であり,早急に調査を進めることが必要である。
著者
栗田 弘幸
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.171-176, 2009 (Released:2013-12-18)
参考文献数
2

清水建設が環境ビジョンの一施策として推進しているCDM/JIプロジェクトであるコーカサス,中東,中央アジア,東南アジア地域での埋立処分場メタンガス回収プロジェクトを紹介する。現在,3案件の国連登録を完了し,3案件を国連登録中である。
著者
中俣 友子 阿部 恒之
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.304-308, 2018-07-31 (Released:2019-07-31)
参考文献数
24

本論は,著者が過去に行ったごみのポイ捨て対策のための研究 (実験室実験・現場実験) を紹介し,海洋ごみ対策に関してささやかな提言を試みたものである。実験室実験では,スライドを提示して一対比較でごみの捨てやすさを判断してもらった。現場実験では,宮城県仙台市と名取市の間を流れる名取川河畔に看板を設置し,ごみの量を実際に比較した。両実験とも,監視カメラの有無,先行ごみの有無,景観の違い (草むら・更地・花壇),看板の違い (無・目の絵・監視カメラ撮影画像) の 4 要因を検討した。その結果,監視性の確保,記述的規範への配慮,領域性の確保,情緒的ブレーキが有効なごみ対策になりうることが明らかになった。海洋ごみについても同様の対策が有効であると推測されるが,対策の対象地がごみに悩む現場にとどまらず,海の向こうにまで広がっていることが問題を複雑化している。
著者
河口 真理子
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.275-285, 2017-07-31 (Released:2019-08-29)
参考文献数
21

社会の持続可能性を高めるためには,企業のサプライチェーンを通じた環境社会配慮が不可欠だが,そのためには消費者と投資家からの働きかかけが必要である。エシカル消費が拡大すれば企業はエシカル商品開発に努力するし,ESG 投資の一環でサステナブルなサプライチェーンを投資家が評価するようになれば,企業は経営戦略の一環として取り組む。エシカル消費,ESG 投資いずれも日本での普及度は低いものの,最近いずれも注目度が上がっている。エシカル消費という言葉は知らなくても,環境や社会に配慮した買い物に賛同する消費者は 6 割以上にのぼる。ESG 投資は日本版スチュワードシップ・コード (SSC) とコーポレート・ガバナンスコード (CGC) 導入により,2014 年から 2016 年にかけて 7 倍以上に急拡大。しかし世界シェアでは 2%にすぎない。ESG 投資は倫理感ではなく運用パフォーマンス向上につながるとされ年金基金等,長期投資家の関心が高いことから今後も拡大が期待される。
著者
田中 めぐみ
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.169-176, 2010 (Released:2014-10-07)
参考文献数
13

環境配慮型ファッションにおいて先行する米国の動向と欧米事例,環境配慮型ファッションの概要をまとめた。エコファッションの起源ともされる1960-70年代のヒッピーファッション,90年代の米アパレル・小売企業の環境・社会問題への目覚め,そして2000年代半ばに入りこれまでのエコファッションのイメージを覆すセンスの良い環境配慮型ファッションが登場し,さらに環境のみならず社会問題までを含んだサステナブルファッションが価格の高低問わずファッション業界全体に浸透するまで,時系列で米国サステナブルファッションの歴史と動向を追った。また,サステナブルファッションが抱える課題と日本のファッション業界が今後進むべき道を簡単に記した。
著者
吉田 英樹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.283-286, 2009 (Released:2013-12-18)
参考文献数
9

埋立地において,埋立地ガスの組成と温度は,内部での好気性・嫌気性微生物反応を反映する指標であり,安定化インデックスとして重要である。埋め立てが終了した処分場で,打ち込み型ガス抜き管を設置した後の埋立ガス組成と温度の測定事例について紹介した。一部のガス抜き管で好気性微生物反応の活発化による炭酸ガスの増加・温度上昇が起こっていることや,全体として嫌気性微生物反応が支配的であることを示すとともに,打ち込み型のガス抜き管では安定化促進の効果が限定的であることを示した。現在,多くの研究者によって行われている化学的・生物学的好気性反応導入による安定化促進事例についても紹介した。最後に温度の鉛直方向の分布や時間的変化を示し,安定化のインデックスとしての温度の重要性について示した。