著者
石井 徹子
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、未熟肺動脈平滑筋細胞を用いて、1)脱分極やイノシトール3燐酸刺激による細胞内Ca濃度変化と小胞体からのCa放出を調べ、2)小胞体においてCa制御に関わっている蛋白質(リアノジン受容体、Ca-ArPase, Calsequestrin, Phospholamban)のmRNA発現、蛋白発現を調べた。実験動物:胎生31日の胎仔家兎、生後5日の新生仔家兎、生後6-12ヵ月の成獣家兎を用いた.実験標本:肺動脈単離平滑筋細胞をもちいた.各年齢群の肺動脈で径200ミクロン以下の血管よりコラゲナーゼを用い細胞を単離した.細胞内Ca分布:共焦点蛍光顕微鏡を用い、小胞体のCa分布を調べた.細胞内のCa貯蔵器官からCaを放出させる働きをもつ、カフェインやノルアドレナリンを使用して細胞内Ca貯蔵量を変化させ、細胞内Ca貯蔵量を測定した.小胞体のCaは胎仔、新生仔で、成獣に比べおおかった。カフェインで放出されるCaの量も未熟平滑筋でおおかった。分子生物学実験:肺動脈抵抗血管平滑筋における小胞体においてCa制御に関わっている蛋白質(リアノジン受容体、Ca-ArPase, Calsequestrin, Phospholamban))のmRNA発現をin situ hybhdizationにて調べた。また定量RT-PCRを施行し、PCR産物を定量したが、リアノジン受容体、Ca-ATPase, Calsequestrin, Phospholambanともに新生仔で成獣に比べおおく発現していた。このことは、新生仔ではすでに肺動脈平滑筋小胞体Ca制御機構が完成し、活発に作動していることを示唆する。