著者
石倉 菜穂 石井 智恵美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第50回大会・2007例会
巻号頁・発行日
pp.69, 2007 (Released:2008-01-08)

目的 アメリカ合衆国(以後アメリカとする)では成人の64%が過体重か肥満といわれており、大きな社会問題となっていることはよく知られている。近年、日本の食生活も欧米化され、野菜摂取量が減少したことによる健康上への負の影響が取沙汰されるなか、アメリカでは1980年代より1人当りの年間野菜供給量を着実に増やし、現在では日本のそれをはるかにしのぐ量の野菜を消費している。これはアメリカ人の健康と健全な食生活を守るために1980年より出され5年ごとに改訂されている「アメリカ人のための食生活指針」とその内容に忠実に従った学校教育における食物学習の効果であると推測できる。しかしながら、肥満の問題に明確な解決が得られた訳ではなく、それは依然としてアメリカが抱える大きな問題である。そこでアメリカ人の食習慣、アメリカ人のための食生活指針及び学校食物教育の内容を経時的に調べることによりその理由を検討すると共に、子供たちの食習慣に対するアメリカの新たな取り組みについても紹介する。 方法 アメリカ人の食習慣は文献及び国連の食糧需給表に示されるデータにより把握した。アメリカ人のための食生活指針は初版の1980年より最新版の2005年までの全ての指針を対象とした。学校教育における食物学習の内容は主にアメリカの小学校で必修である保健の教科書1~6学年までの教師用(Teacher’s Edition)を用い,学年別に3社の教科書の内容を比較検討した。 結果および考察 アメリカ人の食生活指針の中で特徴的なのは砂糖及び砂糖を多く含む食品と脂質を多く含む食品の扱いである。これは学校食物教育でも顕著に示されている。すなわち、これらは摂ってはいけない食品として扱われている。低学年の学習内容にあっては砂糖や砂糖を多く含む食品は虫歯になるので、中学年以上では更に肥満や心臓病の原因になるので摂ってはいけないと説明されている。砂糖及び砂糖を多く含む食品と脂質を多く含む食品はFood Guide Pyramid(My Pyramid)には示されるものの食品群には分類されず「食品ではない」という扱いである。野菜については1980年と1985年の食生活指針には特に記述はなく、1990年以降「穀物や野菜、果物を沢山摂りましょう」という記述がなされるようになった。この頃からアメリカ人一人当たりの年間野菜供給量に明確な増加が認められるようになった。小学校の教科書ではおやつの項目で生野菜のスティックを奨励するなど指針の内容に対応した学習が考えられた。 アメリカの「食」における主要な食品は肉類であることはよく知られていることであるが、食生活指針に肉に関する記述は1980年より2000年までない。2005年に改訂された指針には「肉や豆(乾燥)、牛乳、乳製品は、低脂肪、または無脂肪のものを選ぼう」という記述が見られる。Food Guide Pyramidの指導の中では1990年以降、1日の摂取目安量が示された。しかしながらアメリカ人1当りの肉の年間供給量は1961年の89.0kgから増え続け2003年には124.0kgになった。日本人1人当りの年間供給量は2003年で44.3kgであるので、その3倍近い肉を消費していることになる。1999年、FDAは大豆タンパク質の摂取は心臓病の予防に効果があるとして大豆タンパク質を含む食品のラベルに健康表示をすることを承認した。これ以後、アメリカ人による大豆消費は増大した。 アメリカ人の健康に対する意識は高く、健康にとって良いものを積極的に摂ろうとする姿勢も見て取れる。しかしながら肉の消費を抑制する積極的な指導があまりなされていないことが結果的に食事全体の量を増やし肥満の抑制に目立った効果がないように思われる。
著者
石井 智恵美
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of The Faculty of Education (ISSN:08332144)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.298-276, 2019-12-20

名古屋市蓬左文庫所蔵の茶会記『茶会集』を前報告に引き続き、今回は茶会3を評釈する。この茶会は将軍家光が毛利甲斐守秀元に命じて江戸城内の山里御数寄屋で開いたものである。この時の山里は秀忠が将軍であったときに古田織部に命じて作事させたものであるが、この茶会に際して特に作り替えたりはせず、茂った枝を払い、枯れた木を植え替えたりして、そのまま使ったことが『毛利家記』に記されている。この茶会の正客は家光、相伴客は阿部備中守正次、永井信濃守尚政、堀田加賀守正盛、柳生但馬守宗矩であったが、その他、御殿での饗応を受けた御供の衆は一千余人、山里にての振舞を受けた者は三百余人と記されており、大規模な茶会であった。
著者
石井 智恵美 鈴木 敦子 倉田 元子 表 美守
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.984-987, 1990-12-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
22
被引用文献数
2

アントシアニン色素の熱安定性を明らかにするため,ナス果皮の凍結真空乾燥粉末およびこの粉末より0.1%塩酸-メタノールで抽出した粗色素液を用いて検討した.色素抽出液のアントシアニンの熱分解は50℃と60℃で,また凍結乾燥粉末のそれは100℃, 120℃で行い,経時的なアントシアニンの残存率を測定した.得られた結果はアントシアニンの分解の速度論的データ(k, 4△G≠, Ea, △艾H≠, △S≠)を用いて示した.1) 0.1%塩酸-メタノール液中の総アントシアニンの褪色は,熱安定性を検討する上で変化が明確であり再現性も良い.特にナスニンは光の影響を受けにくかった.2) 凍結真空乾燥粉末を用いた場合は, 100℃, 120℃加熱とも60分までは総アントシアニン残存率,反応速度とも大きな変化が見られなかった.加熱時間が120分になると, 120℃加熱において速やかなナスニンの分解が観察された.
著者
石井 智恵美
出版者
文教大学
雑誌
文教大学教育学部紀要 (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
no.46, pp.151-160, 2012

禅宗寺院において開山忌や様々な行事に際して執り行われる斎座「四ッ頭」は、開山様が居られるが如く厳粛に会食をするというものであり、禅宗の中でも特に臨済宗を中心に伝えられているものである。この儀式が一般にはあまり知られていないのは、参加者は僧侶のみであり、また、長く非公開であったためである。寺院の開創より毎年の開山忌に行われてきたと伝えられているこの儀式は、古式の食事作法を伝えるものとも言われているので、この儀式に用いられる料理と菓子について、江戸時代の料理書を参照しながら料理の内容や成立時期等について考えていく。鎌倉・室町時代に成立したと考えられている料理書はあるが、料理ごとに使用材料等の詳細が記載されるようになるのは江戸時代に入ってからである。