著者
平田 祐太郎 石井 美恵子
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【目的】クリティカルケア領域の看護師が記録した肺音聴診結果を表す用語の実態調査と、記録された用語と看護師の背景との関連を明らかにする。【方法】実態調査では看護師の記録を対象に肺音聴診結果を表す用語について適切用語記録率を算出した。質問紙調査ではA県医療機関ICU所属看護師に対し基本属性と共に不適切用語14カテゴリーを使用する際の意識について4段階評定法で評価を行い、そのうち肺音に直接関連する6カテゴリーの平均点を合計し不適切用語合計点を算出した。また看護記録実施者に影響を与える要因についても調査を行った。適切用語記録率の関連要因を探るため、従属変数を適切用語記録率、独立変数を基本属性としt検定、一元配置分散分析を行った。また適切用語記録率と不適切用語合計点の相関についてPearsonの相関係数を算出した。【結果と考察】研究同意を得た看護師46人のうち質問用紙の回収率は100%、有効回答率は97.8%であった。実態調査では全カテゴリーの適切用語記録率は71.0%であったが、そのうち「呼吸音」カテゴリーでは適切用語記録率が16.4%と低く不適切用語の全てが「エア入り」であった。適切用語記録率との関連を認めたのは認定看護師教育課程でフィジカルセスメント学習経験をもつ群であり、十分な時間をかけたActive Learningによる学習経験が関連していると考えられた。看護記録は先輩看護師の記録や指導など周囲からの影響を受けている傾向が観察され、「エア入り」についても記録を簡素化するために作られた造語であり先輩看護師からの伝承により使用されていると推測された。適切用語記録率と不適切用語合計点は相関を認めたことから不適切用語に関して正しい知識で修正できれば適切用語記録率にも影響されることがわかった。【結論】実態調査では全カテゴリーの適切用語記録率が71.0%であった。「呼吸音」カテゴリーでの適切用語記録率は16.4%であり、そのうち不適切用語の全てが「エア入り」という用語であった。適切用語記録率はフィジカルアセスメントを認定看護師教育課程で学習した群との関連が認められ、さらに不適切用語合計点とは相関を認めた。看護記録に影響を与える要因としては先輩看護師の指導や記録などがあることが考えられた。このことから認定看護師が適切な用語による看護記録を継続し看護師へ指導することで正しい知識が伝承され、適切な用語による記録が可能となると示唆された。