著者
大山 太 吉村 晶子 嶋田 淳子 小島 善和 杉田 学
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.23-31, 2014-03-20 (Released:2017-08-02)
参考文献数
24
被引用文献数
1

In this paper, we discuss a communication system for disaster relief medical teams. Usually, Japanese medical teams are not equipped with communication systems specialized for disaster operations. They can only rely on common-use mobile and landline phones during disaster events. However, public lines are reported to be out of function in disaster areas during the past major disasters. We conducted experiments to evaluate communication means that can holdmedical communication links during disasters, using the new Japanese two-way communication radio system,“Digital Convenience Radio: DCR”. Our results suggested that DCR can support medical activity at sites ofdevastating disasters.
著者
清水 敬樹 杉田 学 横手 龍 関井 肇 三宅 康史 坂本 哲也 清田 和也
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.14-17, 2004-02-20 (Released:2010-06-08)
参考文献数
15

2年間の縊頚44例を対象とし年齢, 性別, 精神科受診歴, 縊頚形態, ICU入室率, 転帰などを検討した。縊頚44例中, 来院時心肺停止 (CPAOA) は36例で4例 (11%) が心拍再開したが2週間以内に全例死亡した。精神科通院歴があるのは17例 (47%) で, 13例がうつ病であった。非CPAOA8例は全例が入院, 7例が社会復帰した。心拍再開した4例は全例死亡しておりそのうち3例は脳死に陥っており, 縊頚CPAOAは予後不良と考えられた。通常の蘇生後脳症との差は, 発見までの時間の長い点, もう一つは椎骨脳底動脈領域も完全閉塞し, 低酸素に強い脳幹もdamageが大きいことが関係している可能性がある。非CPAOAは8例中7例が, 社会復帰しており, 早期発見, 及び地域精神衛生活動が予後を向上させると思われる。
著者
福岡 範恭 山田 広行 安心院 康彦 池田 尚人 尾方 純一 杉田 学 髙松 純平 中村 光伸 溝端 康光
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.580-586, 2019-08-31 (Released:2019-08-31)
参考文献数
5

救急隊員による病院前救護における疾病の観察・処置の標準化として『PEMECガイドブック2017』が出版されて以降,PEMECコースが開催されている。本稿ではコース概要と開催状況,参加者より得た意識調査結果から今後の課題について考察し報告する。2018年10月までに行われたコース受講者196名に意識調査を実施した結果,184名から有効な回答が得られた。全体的な評価で「よい」と回答した75名(40.7%)を高評価群,「まあよい」「普通」「あまりよくない」と回答した109名(59.2%)を低評価群に分類し,全体の評価に強く影響を与えたコースプログラムの各項目をロジスティック解析により分類した。その結果「アルゴリズムの理解」「インストラクターの知識」「インストラクターの解説」が評価に関連する主要な因子として明らかになった(p<0.05)。コース内容は,概ねよい支持を得ているが,インストラクターの教育技能を向上させること,アルゴリズムの理解を深める指導の必要性が示された。
著者
一瀬 麻紀 岡田 保誠 稲川 博司 小島 直樹 山口 和将 佐々木 庸郎 有野 聡 杉田 学
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.99-103, 2020-03-01 (Released:2020-03-01)
参考文献数
10

酸化マグネシウム(MgO)は下剤として頻用されており,多くの症例で安全に使用されているが,稀に高マグネシウム(Mg)血症を生じることがある。症例は60歳,男性。統合失調症で抗精神病薬とMgO 2 g/dayを内服していたが,来院13日前から排便がなかった。来院当日,排便後に昏睡・低血圧となり当院へ搬送された。各種検査では血清Mg値20.2 mg/dLであり高Mg血症による意識障害,循環不全と診断した。カルシウム製剤の持続投与と血液透析を行い血清Mg濃度は低下し,症状は改善した。抗精神病薬投与中は,抗コリン作用の腸管蠕動低下に伴うMg製剤の腸管内停滞によりMgの吸収率が高まり,高Mg血症をきたすことがある。抗精神病薬を服用中の患者では,たとえ常用量のMg製剤の内服でも,注意深い臨床症状の経過観察および血清Mg濃度のモニタリングが必要であると考えられた。
著者
杉田 学
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

【はじめに】薬剤の使用は現代医学では不可欠なものであり,その有効性と毒性・副作用については治験結果をもとに強く認識されている。一方で,治験結果から危険性を認識するように警告するようになっていても,使用する患者や医師の認識不足によって重篤な病状をおこしたり,稀と言われている副作用に遭遇したりすることもある。本発表では実際に経験した症例を2例提示し,非臨床/臨床治験を行う側と臨床で使用する医師側,それぞれの問題を考察する。【症例1】29歳男性,4年前から統合失調症で某病院精神科通院中。某日,心肺停止として当院へ救急搬送。来院時心肺停止状態,心電図は心静止,瞳孔は両側散大。直ちに心肺蘇生術を開始し,病着後10分で心拍再開しICU入室。来院直後の血糖値は854 mg/dL,血漿浸透圧は373 mOsm/L,血液/ガス分析ではpH6.558, HCO<SUB>3</SUB>-7.8 mmol/L, BE-35.4と高血糖,高浸透圧血症,代謝性アシドーシスを認めた。心停止に至る原因が他にすべて否定され,糖尿病性ケトアシドーシスによって心停止に至ったと考えた。患者に糖尿病の既往はなく,前医に問い合わせたところ1ヶ月前にOlanzapineが開始され,薬剤開始後2週間,1ヶ月後(今回の来院3日前)の採血で既に高血糖,多飲・体重減少の高血糖を示唆する所見があったにも関わらず主治医は認識していなかった。本症例を含め同薬と因果関係が否定できない重篤な高血糖,糖尿病性ケトアシドーシス,糖尿病性昏睡が9例(死亡例2例)報告されたため注意喚起がなされ,本邦での発売元は同薬剤を,糖尿病患者やその既往歴のある患者への投与を禁忌とした。【症例2】79歳男性, 意識障害を主訴に来院。高血圧,慢性腎臓病,糖尿病で降圧剤,Vildagliptinを内服。来院時の意識はJCS3-R,簡易血糖測定で34 mg/dl,Whipple3徴を満たしたため低血糖性昏睡と診断。DPP-4阻害薬は作用機序から血糖依存性に作用するため低血糖発作のリスクは低いとされるが,本症例の如く単独でも低血糖となり得る。【考察】症例1では医師側の認識不足が,症例2では稀な副作用が,重篤な病態を起こした。開発現場と臨床現場それぞれで情報を密にやりとりすることが必要であり,非臨床/臨床治験の結果を紐解く作業が臨床現場にも求められる。