著者
伊藤 宏之 中山 治彦 藤田 敦 石和 直樹 池原 瑞樹 田中 学 山田 耕三 野村 郁男 野田 和正 亀田 陽一 密田 亜希
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.132-135, 2000
参考文献数
6

症例は34歳男性。5年前に近医で右肺野の腫瘤陰影を指摘され, mucoid impactionを伴ったcystic brochiectasisと診断された。1999年3月, 健康診断で胸部異常陰影を再度指摘され, 4月26日に当院を紹介受診した。胸部CTでは, 右B^6bを中心に経約4cmの気管支に沿って拡がる樹枝状の, 内部に一部空洞を伴った充実性腫瘤陰影を認めた。この空洞にcystic brochiectasisに特徴的所見とされるair fluid levelがないことから, 気管支鏡検査を行ったところ, B^6内腔を閉鎖する赤紅色の易出血性のポリープ状腫瘤を認め, 生検によりatypical carcinoidと診断された。6月10日, 右下葉切除およびR2a郭清を施行した。摘出標本の病理組織所見においても, B^6より出現した腫瘍が気管支を拡張しつつ, 長軸方向への気管支内発育をし, 樹枝状の形態をとっていたことが確認された。また画像上腫瘍内部に認められた空洞は, 腫瘍末梢の嚢状の拡張気管支であることが判明した。
著者
鈴木 喜裕 小川 伸郎 石和 直樹 伊藤 隆明
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.283-287, 2002-08-20
被引用文献数
8

背景.われわれは肺門リンパ節癌にて,リンパ節切除後に原発巣を切除した稀な症例を経験したので報告する.症例.症例は41歳男性.右肺門部リンパ節未分化癌の術後経過観察中,7年目のCTにて右S^6に小結節を認めたため右肺癌疑いにて2000年1月7日手術を施行した.結節は大きさ約10mmでS^6に存在し,迅速診断で腺癌と診断され,下葉切除とリンパ節郭清を行った.病理組織学的には中分化腺癌で一部低分化像を示し,前回のリンパ節組織像と類似していた.また免疫染色で,surfactant apoprotein(SA-P)はいずれの腫瘍も陰性,p53蛋白はいずれの腫瘍も過剰発現が認められた.また肺癌の組織診断マーカーとして有用とされているthyroid transcription factor-1(TTF-1)はいずれの腫瘍も陽性であった.組織像や免疫染色の結果から臨床所見および経過を考慮すると,今回の病変を原発巣とする肺癌のリンパ節転移と考えられ,病期はpT1N1M0 stage IIA と診断した.肺切除後2年になるが無再発生存中である.結論.原発不明肺門リンパ節癌に対しての治療としては,積極的にリンパ節切除およびリンパ節郭清を行い,長期にわたる厳重な経過観察を行い原発巣が認められたならば,原発巣の切除を行うことが良いと思われる.