著者
山田 耕三
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.55-61, 2005 (Released:2006-05-12)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

原発性肺癌は, その初期段階はもちろんのこと, 比較的進行した段階においても, その臨床症状を認めないことが多く, 集団検診や他疾患経過中の胸部領域の画像診断で発見されることが多く経験される. したがって, 肺癌の診断においては, その胸部CTを主体とした画像診断の役割は大きなものがあると考えられる. 最近では, FDG-PETや最新のMRIが臨床の分野へ導入され, 肺癌の質的診断への応用が試みられるようになっているが, 実際の場においては, いまだにCTがそのスクリーニングにおいても質的診断においても大きな役割をなしている. 特に, 胸部CTを用いた肺癌検診の普及の結果, 肺野型の微小病変が多数見つかっており, 高分解能CT (HR-CT) 画像による質的診断の果たす役割はますます重要なものとなっている. 本稿では画像所見と病理所見を対比しながら, 肺癌の画像診断における胸部CTを用いた質的診断や病期診断について解説する.
著者
池原 瑞樹 山田 耕三 斉藤 春洋 尾下 文浩 野田 和正 荒井 宏雅 伊藤 宏之 中山 治彦 密田 亜希 亀田 陽一
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.231-236, 2001-06-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

造影CT画像と単純GT画像におけるCT値の差によって, 肺野微小病変の質的診断を試みた報告はある. しかし造影thin-section CT (以下造影TS-CTと略す) 画像のみでのCT値の解析でその質的診断を試みた報告は少ない. 今回, CT画像上充実型を呈する肺野末梢微小病変を対象として, CT画像による質的診断を目的に造影TS-CT画像におけるCT値の解析を行った. 対象は, 最近3年間に当施設で切除された20mm以下の肺野微小病変47例である. 組織型は原発性肺癌が23例, 転移性肺腫瘍が6例であり, 非癌性病変は18例であった. CT画像は造影剤35mlを経静脈的に0.8ml/秒の速度で注入を開始し, その50秒後の画像である. CT値は病変内に真円に最も近い最小のROIを作成し, 病変の中心部と大動脈中心部の平均CT値を測定した. 結果は, 原発性肺癌では非癌性病変に比べて “病変部のmean CT値” および “病変部のmean CT値と大動脈のmean CT値の比” のいずれも高値を示し, 有意差を認めた. 以上より, 造影TS-CT画像でのCT値の計測は, 充実型を呈する肺野微小病変の質的診断に寄与する可能性が示唆された.
著者
濱中 瑠利香 村上 修司 横瀬 智之 中山 治彦 山田 耕三 岩崎 正之
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.253-258, 2011
被引用文献数
4

<b>背景</b>.Remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema(RS3PE)症候群は腫瘍随伴症候群の一つとして知られているが,肺癌に合併した報告は稀である.RS3PE症候群様症状で発症し,外科的切除を施行することで症状軽快を認めた肺癌の1例につき報告する.<b>症例</b>.79歳,男性.2009年12月頃から両下肢と足背の浮腫を認め,次第に手指と両手関節の腫脹,手関節と足関節の熱感,疼痛を自覚した.2010年4月に検診の胸部X線写真で左中肺野に腫瘤影を指摘され当院紹介となった.胸部CT画像では左S<sup>4</sup>に40×37 mmの腫瘤を認め,気管支鏡検査にて肺癌と診断された.原発性肺癌に伴うRS3PE症候群の圧痕浮腫を伴った関節炎と診断し,左上葉切除を施行した.術直後より関節症状の速やかな改善を認め,術後8か月経過し無再発生存中である.<b>結論</b>.高齢者に急速に進行する浮腫を伴った関節炎では悪性腫瘍の合併も念頭におき,全身精査を行う必要があると考えられた.<br>
著者
伊藤 宏之 中山 治彦 藤田 敦 石和 直樹 池原 瑞樹 田中 学 山田 耕三 野村 郁男 野田 和正 亀田 陽一 密田 亜希
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.132-135, 2000
参考文献数
6

症例は34歳男性。5年前に近医で右肺野の腫瘤陰影を指摘され, mucoid impactionを伴ったcystic brochiectasisと診断された。1999年3月, 健康診断で胸部異常陰影を再度指摘され, 4月26日に当院を紹介受診した。胸部CTでは, 右B^6bを中心に経約4cmの気管支に沿って拡がる樹枝状の, 内部に一部空洞を伴った充実性腫瘤陰影を認めた。この空洞にcystic brochiectasisに特徴的所見とされるair fluid levelがないことから, 気管支鏡検査を行ったところ, B^6内腔を閉鎖する赤紅色の易出血性のポリープ状腫瘤を認め, 生検によりatypical carcinoidと診断された。6月10日, 右下葉切除およびR2a郭清を施行した。摘出標本の病理組織所見においても, B^6より出現した腫瘍が気管支を拡張しつつ, 長軸方向への気管支内発育をし, 樹枝状の形態をとっていたことが確認された。また画像上腫瘍内部に認められた空洞は, 腫瘍末梢の嚢状の拡張気管支であることが判明した。
著者
服部 泰直 山田 耕三 ドミトリ シャクマトフ 野倉 嗣紀 前田 定廣 三輪 拓夫 相川 弘明
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究では距離空間に現れる位相次元の特性を調べ、その他分野への応用について研究した。その成果を以下に要約する。服部は山田との共同研究により、距離空間上に定義される二つの超限次元、大きい帰納次元lndと順序次元O-dimの関連を調べ、「距離空間Xにおいて、Xがlndを持つことと、XがO-dimを持つこととは同等であり、、かつlndX<O-dimXが成り立つ」ことを証明した。これは、F.G.Arenasの問題に対する肯定解である。距離空間の群構造に関して服部は、「実数空間上の通常の位相より弱く、点列{2n:n=1,2,...}が0に収束し、さらに位相群となる距離位相が存在する」ことを証明し、「そのような位相で線形性を保つものは存在しない」ことを証明した。これは、R.Fricの問題の解である。位相群に関しては更に、山田により距離空間の自由群の位相構造について研究され、自由群の位相構造がその近傍系により表現されることが示された。また、Shakhmatovは、コンパクト生成な距離位相群や、自由アーベル位相群における位相的性質を次元論の観点から調べた。服部は、順序空間における連続関数の拡張性について調べ、「完全正規な順序空間において、ある条件を満たせば、Dugundjiの拡張定理が成立する」ことを証明した。そして、服部はGruenhageと大田との共同研究により、順序空間の部分空間でDugundjiの拡張性を持つものを決定した。これにより、Heath-Lutzer、van Douwenの問題は完全に解決された。順序空間における完全正規性と被覆的性質については、三輪により研究された。野倉とShakhmatovは、距離空間上の超空間における連続な選択関数の存在性について研究した。吉川と前田は微分幾何学的立場より、複素射影空間内における円形の構造について研究した。服部は距離空間おけるfinitistic spacesの性質について研究し、finitistic spacesに対する万有空間の存在、及びPasynkovのタイプのfactorization theoremを証明した。相川は、調和関数と測度そして位相次元との関連について研究した。