著者
伊藤 宏之
出版者
大正大学
巻号頁・発行日
2022

2021年度
著者
伊藤 宏之 河合 正弘
出版者
財務省財務総合政策研究所
雑誌
フィナンシャル・レビュー (ISSN:09125892)
巻号頁・発行日
vol.153, pp.76-122, 2023 (Released:2023-08-24)
参考文献数
42

本論文は,為替レート制度と国際金融のトリレンマ制度に焦点を当てて,国際通貨体制の変遷を明らかにする。為替レート制度は,為替レート変動の程度や為替レート安定化のアンカー通貨が何かによって決まり,トリレンマ制度は為替レートの安定性,金融市場の開放度,金融政策の独立性の程度の組み合わせによって決まる。伝統的なFrankel-Wei(1996)やその修正版であるKawai-Pontines(2016)の推定式から,為替レートの安定性の指数(推定式の二乗平均平方根誤差(RMSE))を得ることができるだけでなく,各国にとっての為替レート安定化の対象であるアンカー通貨を特定することができる。金融市場の開放度は,各国の対外資産と対外負債の和の対GDP比,対貿易比によって示すことができる。金融政策の独立性は,各国の短期金利が海外金利と国内外の経済要因(国内のGDPギャップやインフレ率,海外の成長率や原油価格)のどちらにどの程度反応するかによって示すことができる。トリレンマのいずれの指数も0から1の間をとるものとして測定される。 100か国以上の諸国における為替レート制度の分析から,世界全体や各地域における主要通貨圏(米ドル圏,ユーロ圏,英ポンド圏,日本円圏,中国人民元圏)と自由な為替フロート制を採用する経済圏の規模およびその変遷を求めることができる。また,各国のトリレンマの組み合わせがどのように変化してきたかをトリレンマ三角形に図示することで,直観的な分析が可能になる。本論文から,いくつかの興味深い結果が得られる。 第1に,米ドル圏の世界経済シェアは依然として世界最大であるものの,ユーロ圏の出現と近年における人民元圏の急速な台頭により,低下する傾向にある。同時に,為替フロート制を採用する経済圏の世界シェアは拡大する傾向にある。第2に,一部の例外(ユーロ地域諸国など)を除き,先進国と新興・発展途上国の両者は,為替レートの柔軟性と金融市場の開放度を高める方向で,トリレンマ制度を選択してきた。今日,自由な為替フロート制,開放的な金融市場,独立した金融政策の維持という「コーナー制度」を採用する国は,先進国,新興・発展途上国の間で広がりを見せている。その一方,安定的な為替レート,閉鎖的な金融市場,独立した金融政策の維持という別の「コーナー制度」を採用する先進国は存在しない。また,安定的な為替レート,開放的な金融市場,独立した金融政策の放棄という3つ目の「コーナー制度」を採用する先進国はユーロ地域などに存在するが,それを採用する新興・発展途上国はごく少数に限られる。その一方,これら3つのコーナー制度以外の組み合わせ(「中間領域」を含む)を選択する国も多い。第3に,先進国と新興・発展途上国の両者に最良のマクロ経済パフォーマンスをもたらすトリレンマ制度は存在しない。
著者
向井 潤 栗田 隆夫 上撫 忠広 原 肇 豊岡 武裕 伊藤 宏之
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.18, no.65, pp.41-46, 1994

我々は、ツイステッド・ネマチック(Twisted Nematic)構造を固定化した光学機能性高分子液晶フィルム(LCフィルム)を開発した。本フィルムにおいてねじれ角とリターデーション、さらには複屈折の波長分散特性を制御し、最適化することにより、高コントラストのS TN液晶ディスプレイを実現することができる。また、ねじれ角、リターデーション等を制御することにより、ツイステッド・ネマチックだけでなく様々な構造をとることができ、コレステリック・フィルム等への応用が期待できる。
著者
池原 瑞樹 山田 耕三 斉藤 春洋 尾下 文浩 野田 和正 荒井 宏雅 伊藤 宏之 中山 治彦 密田 亜希 亀田 陽一
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.231-236, 2001-06-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

造影CT画像と単純GT画像におけるCT値の差によって, 肺野微小病変の質的診断を試みた報告はある. しかし造影thin-section CT (以下造影TS-CTと略す) 画像のみでのCT値の解析でその質的診断を試みた報告は少ない. 今回, CT画像上充実型を呈する肺野末梢微小病変を対象として, CT画像による質的診断を目的に造影TS-CT画像におけるCT値の解析を行った. 対象は, 最近3年間に当施設で切除された20mm以下の肺野微小病変47例である. 組織型は原発性肺癌が23例, 転移性肺腫瘍が6例であり, 非癌性病変は18例であった. CT画像は造影剤35mlを経静脈的に0.8ml/秒の速度で注入を開始し, その50秒後の画像である. CT値は病変内に真円に最も近い最小のROIを作成し, 病変の中心部と大動脈中心部の平均CT値を測定した. 結果は, 原発性肺癌では非癌性病変に比べて “病変部のmean CT値” および “病変部のmean CT値と大動脈のmean CT値の比” のいずれも高値を示し, 有意差を認めた. 以上より, 造影TS-CT画像でのCT値の計測は, 充実型を呈する肺野微小病変の質的診断に寄与する可能性が示唆された.
著者
肺癌放射線治療計画用のリンパ節部位アトラス作成委員会 小宮山 貴史 板澤 朋子 玉置 幸久 西村 恭昌 中山 優子 伊藤 宏之 大出 泰久 楠本 昌彦 坂井 修二 鈴木 健司 渡辺 裕一 淺村 尚生
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.189-205, 2015
被引用文献数
1

肺癌の放射線治療ではCT画像に基づく三次元放射線治療計画が行われており,リンパ節部位の照射野設定は重要である.現在の肺癌取扱い規約のリンパ節マップはInternational Association for the Study of Lung Cancer(IASLC)mapに準拠したものである.放射線治療計画においては,CTの連続横断像を用いてリンパ節部位を設定する必要がある.そこで,日本肺癌学会と日本放射線腫瘍学会と共同で,肺癌放射線治療計画のためのリンパ節部位のCTアトラスを作成した.
著者
伊藤 宏之 中山 治彦 藤田 敦 石和 直樹 池原 瑞樹 田中 学 山田 耕三 野村 郁男 野田 和正 亀田 陽一 密田 亜希
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.132-135, 2000
参考文献数
6

症例は34歳男性。5年前に近医で右肺野の腫瘤陰影を指摘され, mucoid impactionを伴ったcystic brochiectasisと診断された。1999年3月, 健康診断で胸部異常陰影を再度指摘され, 4月26日に当院を紹介受診した。胸部CTでは, 右B^6bを中心に経約4cmの気管支に沿って拡がる樹枝状の, 内部に一部空洞を伴った充実性腫瘤陰影を認めた。この空洞にcystic brochiectasisに特徴的所見とされるair fluid levelがないことから, 気管支鏡検査を行ったところ, B^6内腔を閉鎖する赤紅色の易出血性のポリープ状腫瘤を認め, 生検によりatypical carcinoidと診断された。6月10日, 右下葉切除およびR2a郭清を施行した。摘出標本の病理組織所見においても, B^6より出現した腫瘍が気管支を拡張しつつ, 長軸方向への気管支内発育をし, 樹枝状の形態をとっていたことが確認された。また画像上腫瘍内部に認められた空洞は, 腫瘍末梢の嚢状の拡張気管支であることが判明した。