著者
石坂 宏
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.107-113, 2011-03-25 (Released:2016-04-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

シクラメンの園芸品種はCyclamen persicumの野生種の花の色,形,大きさを改良することにより育成されてきたが,C. persicumの育種において香りは改良されてこなかった.そこで,シクラメンの香りの育種を開始した.C. persicumの園芸品種とC. purpurascensの芳香性野生種の種間交雑によりC. purpurascensと同様の香りを発散する芳香シクラメン,‘麗しの香り’, ‘香りの舞い’および‘孤高の香り’を育成した.芳香シクラメンの香りはC. persicumの園芸品種に比較して大きく改善されたが,それらの花色の多様性は少なくなった.これまでに,芳香シクラメンの花色の多様性を増やすためにイオンビーム照射技術による突然変異育種を実施してきた.
著者
石坂 宏
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.624-629, 2009-06

サクラソウ科の中にはシクラメン属というグループがあり、その中に22種が存在する。シクラメン属のすべての種は塊茎を作るが、自然分球による栄養繁殖は行わず、種子繁殖を行う。市販されているシクラメンの園芸品種は、22種あるシクラメン属の中のCyclamen persicumという野生種の改良により作出された。C. persicumの野生種は播種後2〜3年で開花個体に成長し、開花できるようになった個体は、2月に開花し、5月に結実して、その後9月まで休眠する。休眠が終了した個体は葉を展開し、翌年の2月に再び開花する。この生育サイクルをくり返し、10年くらい生存する。 C. persicum の野生種は、花弁の長さが約2cm、花色は白、ピンクおよび純白である。主な原産地はトルコ、キプロス、ギリシア、イスラエル、チュニジアであり、1700年頃に原産地から西ヨーロッパに導入され、主にイギリス、オランダ、ドイツ、フランスで栽培と育種が行われた。
著者
石川 貴之 石坂 宏
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, 2002-03-01

Alstroemeria ligtu L. hybrid(LH, 2n=2X=16), A. pelegrina L. var. rosea(PR, 2n=2X=16)およびそれらの雑種(2n=2X=16,3X=24,4X=32)について,花粉母細胞の染色体対合とギムザCバンドパターンを調査した.LHおよびPRの花粉母細胞減数分裂の第一中期における染色体の平均対合数は,それぞれ0.04I+7.98IIと0.08I+7.96IIであった.花粉母細胞は正常に分裂し,それぞれ98.4%,94.9%と高い花粉稔性を示し,自家受粉により成熟種子を形成した.LH×PR(2n=16)の花粉母細胞の第一中期における二価染色体対合頻度は低く,平均対合数は11.18I+2.41IIであった.この雑種では,花粉母細胞の第一後期,第二後期および小胞子の一核期初期において,高頻度で染色体橋や小核が観察され,0.6%の低い花粉稔性を示し,自家受粉および両親種への戻し交雑により成熟種子を形成しなかった.一方,LH×PRの複二倍体(2n=32)の花粉母細胞の第一中期における二価染色体対合頻度は高く,平均対合数はO.82I+15.59IIであった.この複二倍体の花粉母細胞は正常に分裂し,86.3%と高い花粉稔性を示した.自家受粉により成熟種子は形成されなかったが,LHとの正逆交雑により成熟種子が形成された.また,二基三倍体(2n=24, LH×複二倍体およびPR×複二倍体)の花粉母細胞の第一中期における染色体の平均対合数は,それぞれ8.24I+7.85II+0.02IIIと8.58I+7.66II+0.03IIIであった.これらは花粉母細胞の第一後期,第二後期および小胞子の一核期初期において,高頻度で染色体橋や小核が観察され,それぞれ14.8%と13.0%の花粉稔性を示した.自家受粉により成熟種子は形成されなかったが,LHにLH×複二倍体による二基三倍体を交雑した場合のみ成熟種子が形成された.ギムザCバンド法により,LHでは花粉母細胞減数分裂の第一中期の8本中7本の二価染色体,第一後期の8組中7組の染色体からCバンドが観察されたが,PRでは観察されなかった.これらのCバンドを有する染色体は,種間雑種,複二倍体および二基三倍体でも認められた.