著者
石塚 賢治 山野 嘉久 宇都宮 與 内丸 薫
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.666-672, 2015 (Released:2015-08-07)
参考文献数
14

Human T-lymphotropic virus type-I (HTLV-1)は成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL),HTLV-1関連脊髄症/熱帯性痙性脊髄麻痺などの原因ウイルスで,主に授乳や性交渉によって感染が成立する。本研究では国内4施設におけるHTLV-1感染者(キャリア)対応の実態を調べた。キャリア外来標榜施設では,献血時もしくは妊娠時の検査でHTLV-1感染を知り,HTLV-1関連疾患発症の有無についての検査やHTLV-1感染に伴う不安への説明や相談,関連疾患に対する説明を希望し受診する場合が多かった。受診者の約半数はHTLV-1感染を2年以上前に告知されており,近年のHTLV-1やキャリア外来への社会での認知から,キャリア自身の意識が変わったことが受診につながったものと考えられる。一方で,HTLV-1高度浸淫地域においてはかかりつけ医によって十分な対応がなされている可能性が高いと考えられた。HTLV-1非浸淫地域にある2施設ではHTLV-1キャリアと診断された受診者の50%以上が両親とも出生地は九州以外であり,HTLV-1キャリアは九州出身者に多いとされてきた事実の変貌が明らかになった。今後HTLV-1キャリア数は減少するものの,居住地の偏在は少なくなると考えられ,医療ニーズに適切かつ効率よく対応する体制の構築が重要である。
著者
竹下 盛重 中村 昌太郎 石塚 賢治 石塚 賢治
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

日本のEATL(腸管症関連T細胞リンパ腫)では大部分がII型であり、その多くはCD56+, CD8+T細胞リンパ腫であった。その非腫瘍部位の粘膜には、腫瘍性のIEL(上皮内リンパ球)が約70%にみられ、また反応性IELが多くみられる腸管症病変が約50%に認められた。腫瘍細胞はC-METの反応が約80%に、またリン酸化MAPKが90%、C-MYCが約40%、BCL2が70%強に認められた。また、FISH によるC-METの増幅は65%、C-MYCの増幅が71%に認められた。EATLでは、C-MET/MAPK系やC-MYC/BCL2系を介する細胞の増殖維持が腫瘍化に関与していると推測した。