著者
桐明 絢 太田 晶 岡山 桜子 松浦 啓一 石崎 松一郎 長島 裕二
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.13-18, 2016-02-25 (Released:2016-03-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

市販のしらす加工品にフグ稚魚が混入した事例が,2014年9月に多数報告され,商品の回収等が行われた.フグ稚魚の毒性に関する知見は少なく,フグ稚魚が混入したしらす加工品の安全性を評価するため,混入フグ稚魚の種と毒性を調べた.2014年7~9月に各地で製造されたしらす加工品17試料を用い,ミトコンドリアDNA 16S rRNA部分領域の塩基配列から種判別を行い,LC-MS/MS分析でテトロドトキシン(TTX)を測定した.遺伝子解析の結果,15試料はシロサバフグ,2試料がナシフグと判別された.シロサバフグ試料からTTXは検出されず(10 ng/g未満),ナシフグ試料ではTTXに相当するピークが検出されたが,定量下限値(30 ng/g)未満であった.
著者
桐明 絢 石崎 松一郎 長島 裕二
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.203-208, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
25
被引用文献数
1

日本で頻発する巻貝によるテトラミン食中毒のリスク管理に資することを目的に,日本沿岸で採集した5科16種巻貝唾液腺中のテトラミン含量をLC-MS/MSで定量した.バイ以外の15種の巻貝唾液腺からテトラミン(0.700~9,410 μg/g)が検出され,本研究により,エゾバイ科ウスムラサキエゾボラ,ミクリガイ,トウイト,ヒモマキバイ,アニワバイならびにイトマキボラ科ナガニシ,コナガニシ,イトマキナガニシの唾液腺にテトラミンが含まれることが初めて明らかにされた.特に,ウスムラサキエゾボラは,調べた5個体全てがテトラミン含量1,000 μg/gを越えていたため,他のエゾボラ属巻貝と同様にテトラミン食中毒を起こす可能性が高いと考えられ,テトラミン食中毒のリスク管理上重要な種であることがわかった.
著者
臼井 一茂 石崎 松一郎 渡辺 悦生
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.339-345, 2004-07-15
被引用文献数
1 2

従来から利用率の低いクロカジキ筋肉の新規利用法を開発するため,クロカジキ筋肉の肉質に及ぼす各種塩漬処理の効果を塩分浸透性,保水力,物性および走査型電子顕微鏡(SEM)による微細構造の変化から検討した.<br>(1) クロカジキ筋肉中へのNaClの浸透は塩漬液中のNaCl濃度に強く依存するが,スクロースが共存するとその浸透率がわずかに変化した.<br>(2) NaCl溶液で塩漬処理を行なうと,クロカジキ筋肉中の保水力はNaCl濃度の増加とともに増大した.NaCl-スクロース混合溶液では,スクロースの濃度に関わりなく保水力はNaCl濃度に依存したが,NaCl単独溶液に比べわずかに保水力が増加する傾向を示した.<br>(3) NaClおよびスクロース溶液で塩漬したクロカジキ筋肉を加熱すると,硬さに顕著な差が認められた.すなわち,スクロース溶液で硬さが最も高く,NaCl溶液では低下する傾向を示し,NaClとスクロースの混合溶液では,未処理の筋肉を加熱した場合よりも相対的に低くなった.<br>(4) SEM観察により,塩漬処理に伴って筋肉の表面が全体的に滑らかになっていく様子が観察された.また,NaClの濃度上昇に伴って小さな粒状物が溶け出し互いに癒着していくことが認められた.一方,加熱後の筋肉ではタンパク質の凝集物が凝集した状態で互いに結合した,いわゆるランダム様の構造が観察された.<br>以上のことから,塩漬処理がクロカジキ筋肉の肉質改良に効果的であるとともに,その際スクロースを併用することが食味の点でも有効であると推察された.
著者
長島 裕二 石崎 松一郎 松本 拓也 寺尾 依咲 堤 一磨
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

フグの毒化機構解明のため、薬物動態解析法によりトラフグにおけるテトロドトキシン(TTX)の体内動態を調べた。TTXはトラフグ消化管から速やかに吸収され、血漿中では一部血漿タンパク質と非特異的に結合し、ほとんどが遊離型として存在すること、TTXは毒化の初期段階として肝臓に取込まれるが、肝臓におけるTTXの初回通過効果は極めて小さいことが明らかになった。cDNAサブトラクション法で、TTX投与したトラフグの肝臓で発現増大したcDNA1136クローンからトランスポーター関連遺伝子11クローンを得た。