著者
大林 太良 山下 晋司 秋道 智彌 杉田 繁治 竹村 卓二 佐々木 高明 船曳 建夫 石川 栄吉
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

1987年6月までに整理された資料に基づき, 100項目の文化項目, 150民族についてクラスター分析を行なった結果, 次のような東南アジア, オセアニア諸文化の分類の樹状図が得られた. この地域の文化は大きく東南アジアマクログループとオセアニアマクログループに2分される. 東南アジアマクログループは, インドシナ=核島嶼群と, アッサム=辺境島嶼部群に分かれる. 更に, インドシナ=核島嶼部群は, インドシナ=華南亜群と東南アジア高文化亜群に分かれる. アッサム=辺境島嶼部群は, 東南アジア穀物栽培民亜群と, 周辺根菜民亜群に分かれる. 他方, オセアニアマクログループは, オセアニア栽培民群と採集狩猟民群に2分される. 後者は主としてオーストラリア原住民より成り, 顕著な下位区分は示していない. ところが, オセアニア栽培民群は, メラネシア栽培民亜群とミクロネシア=ポリネシア栽培民亜群に分かれる. 次に, 同じ資料を用いて因子分析を行なった結果, 4個の因子を認めることができた. 概して因子分析の結果は, クラスター分析の結果を支持しており,ことに東南アジア対オセアニアという二分の傾向, 穀物栽培民対根菜民の対照等を浮き彫りにしている. その後, 1988年1月までに回収された資料に基づき, 238民族のクラスター分析を行なったが, その結果は上述の150民族についての分析とほぼ同様な分類を示している. また, 238民族についても因子分析を実施中である. この他, 文化項目を単位としていかなる項目のクラスターが見られるかについても分析中であり, これらの結果はまとめて正式報告書に発表される予定である. 東南アジア, オセアニア全域にかけての文化分類については, 従来は主観的な分類がもっぱら行なわれていたが, 本研究によってはじめて統計的処理によるほぼ妥当な分類が呈示されたのである.