著者
阿部 優子 石川 雅子 会田 久仁子 小林 睦子 菊池 節子 半澤 明子 角野 猛 石村 由美子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.153, 2005

<BR>目的 福島県は地理的環境などから山間部の会津地方、平野部の中通り地方、海岸部の浜通り地方の3地域に区分される。これらの地域は気候風土が異なり、それぞれの食生活にも強い地域性が存在することが知られている。しかし、近年の高速交通網の発達、人的交流などによって、その地域性も解消しつつあることも考えられる。本調査は、近年の福島県内の食生活、食文化の地域性を魚介類の種類とその調理方法において、調査・考察することを目的として実施し、先に会津地方の魚介類調査結果について報告した。今回、いわき市での食生活の特徴、魚介類の調理・加工の特徴、更に、本地方独特の魚介類の料理・加工方法などの調査結果を報告する。<BR>方法 平成15年2_から_3月にアンケート調査及び聞き取り調査を併行して行なった。調査は福島県いわき市内に10年以上居住している18世帯で、調査対象者は各世帯の主たる調理担当者に対して行った。<BR>結果 いわき市は太平洋に面した地域で、小名浜漁港をはじめとして、多くの漁港が存在し、日々多種類の魚が水揚げされている。従って、日常食としては、多種の魚介類が刺身、煮魚、焼き魚などで食されていた。また、大量に水揚げされた魚介類は塩漬け、干物、みりん干しなどに加工して販売されており、各家庭において保存食として日常的に用いられていた。行事食としては正月・祭事時に「鮟鱇鍋」、「鯛の塩焼き」「喜知次の煮付け」などが食されていた。また、土用の丑の日に「鰻の蒲焼き」が食されていた。本地方独特の料理・加工法として、「秋刀魚のぽうぽう焼き」、「秋刀魚鍋」、「秋刀魚のみりん干し」、「秋刀魚のなめろう」、「鮟鱇鍋(鮟鱇のどぶ汁)」、「鮟鱇の供酢」、「どんこ汁」、「メヒカリの天ぷら」などが食されていることがわかった。なお、本地域では一世帯あたり年間平均42種類の魚介類を食し、平均78種類の魚介類調理法が存在した。
著者
横田 和子 會田 久仁子 阿部 優子 加藤 雅子 石村 由美子 中村 恵子 津田 和加子 福永 淑子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぎたい日本の家庭料理」の主旨に賛同し,福島県内における伝統料理,及び郷土の家庭料理について文献を元に把握するとともに,調理担当者からの聞き書き調査を通して,地域の気候や風土から発生し,現在まで伝え継がれている料理,これからも伝承したい料理について知ることを目的とした。<br />【方法】前報と同様に、聞き取り調査の結果を基に、本報は福島県内の「おやつ」について考察した結果について報告する。<br />【結果】会津地方では、たぐり飴、まんじゅうの天ぷら、凍み餅、かぼちゃとじゃがいもの煮しめ、はっとうが食されていた。中通り地方の県北では凍み餅、漬物、干し芋、あんぽ柿、県中ではかりんとう、みそかんぷら、花豆の煮物、県南では、凍み餅、みそおにぎり、いなごの佃煮、かしわ餅、干し柿が食されていた。浜通り地方の相双では凍み餅、豆餅、柿餅、よもぎ大福、かしわ餅、くるみ餅、いわきでは、干し柿、蒸したさつまいも、ドーナツ、蒸しパン、いり大豆、ようかん、ところてんなどが食されていた。県北と県南と南会津で見られた「凍み餅」は、寒冷地ならではの保存食として県全域の特に山間地で食されている食材で、主食としてだけでなく、おやつとして食されていることが分かった。また、みそかんぷらも県全域で食されているが、じゃがいもの小芋を有効利用した手作りのおやつとして利用されていた。その他にも、地域で収穫される野菜や果物が加工されておやつとして食されている。さらに、「あんぽ柿」「たぐり飴」「まんじゅうの天ぷら」「はっとう」などは、郷土料理として現在でも伝承されていることが分かった。