著者
榎本 俊樹 小柳 喬
出版者
石川県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

フグ卵巣は塩漬け・糠漬けすることで毒性が低下した。また、これらのサンプルからTTX及びその類縁体である5,6,11-trideoxytetrotodoxin(TDTTX)が検出された。TTX及びTDTTXは糠漬けに伴い減少することから、TTXは分解されることで毒量が減少することが示唆された。フグ卵巣の糠漬けの菌叢について検討したところ、主要な乳酸菌は、Tetragenococcus muriaticusと同定された。さらに、Bacillus属及びClostridium属の細菌も主要な菌叢であった。これらの細菌のTTX分解への関与については、今後の研究課題として残された。
著者
上田 哲行 架谷 成美 西屋 馨 宮川 泰平 嶋田 敬介 福富 宏和 水田 陽斗 酒井 亮輝
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-10, 2019-03

絶滅危惧種イカリモンハンミョウは、日本では九州と本州だけに分布する。本州では能登半島の1カ所の海岸にのみ生息する。能登半島では一時絶滅したと考えられていたが、1994 年に現生息地の海岸で再発見された。2012 年から2018 年に行った成虫調査では、再発見当初1800 頭近い個体数が記録されていた海岸北部で最初の3年間はほとんど発見されない状態が続き、その後、緩やかに増え始め2018 年に急増したことが確認された。海岸南部と中央部では、最初の2年間は発見当初とほぼ同じ個体数が維持されており、2014 年から急速に増えたことが確認された。このように能登半島の個体群は、ここ数年は増加傾向にあるが、2010 年前後の著しい個体数低下がボトルネックとなり、遺伝的多様性が低下していることが示唆されている。
著者
東村 泰希
出版者
石川県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

低亜鉛血症は大腸がん発症のリスクとされているが、その分子機序は明らかでない。大腸がんの発症には慢性的な腸管炎症が関与する。申請者が施行した先行研究より、macrophage(Mph)において、細胞内亜鉛濃度の変化に伴い、インターフェロン応答型転写因子であるIRF5の細胞内局在が変化することを見出している。しかし、腸管炎症や大腸発がん過程におけるIRF5 の機能に関しては不明であった。申請者は本課題において、Mphが亜鉛欠乏状態に陥ることで、①IRF5の核内移行が促進→②炎症性サイトカインIL23p19の発現亢進→③炎症性リンパ球であるTh17の活性化→④大腸炎の増悪、という現象を明らかにした。
著者
大西 泰歩 柳井 清治
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.23-31, 2021

石川県に生息する絶滅危惧種ホクリクサンショウオの保全のため、1980 ~ 1990 年代の分布データから生息環境の特徴を解析し、現在の生息地から MaxEnt モデルを用いて生息適地の予測を行った。過去の生息地データから、本種は同属のクロサンショウウオやヒダサンショウウオ、そして別属のハコネサンショウウオに比べて低標高、緩勾配、年降水量が少なく、年平均気温が高く、そして積雪深(3 月)が少ない地域を好む傾向があった。ロジスティック回帰分析から、重要な生息環境要因として、最大傾斜、森林率、水田率、年降水量そして 3 月積雪深が選択された。この結果を元に MaxEnt モデルにより現在の生息適地を推定したところ、能登半島、特に羽咋市から中能登町にかけての丘陵地帯、七尾湾沿岸、そして加賀市の海岸地帯が抽出された。今後、里山と密接に結びついた生態的性質を持つ本種の保全のため、これらの地域の里山環境の保全と維持を行うことが重要となる。Here, we aimed to predict the habitat distribution of an endangered salamander, Hynobius takedai , in Ishikawa Prefecture,by building GIS and MaxEnt models using habitat data from the 1980s and 1990s. Compared with two congeners (H.nigrescens and H. kimurae ) and Onchodactylus japonicus , the historical distribution of H. takedai was associated with lower elevation, more gentle slopes lower annual rainfall, higher annual accumulated temperature, anshallow springsnow depts. H. takedai showed a preference for areas with a lower proportion of forest and higher proportion of rice paddies. H. takedai appeared to prefer swampy sites near villages in rural regions, i.e., satoyama landscapes. In logistic regression analysis, maximum slope, proportion of forest area, annual precipitation, March snow depth, and proportion of rice paddy area were important factors for predicting H. takedai occurrence. Based on these factors, we determined the amount of potential habitat available to this species in Ishikawa using a Max nt model, and found that highly suitable areas were distributed in the Noto Peninsula, especially in central Noto, and in hilly areas from Hakui to Nanao, montaneareas at the foot of Houdatsu Shimizu-cho, and the coastal area around Kaga. The distance from oak-dominated stands and March snow depth were particularly important predictor variables. Preservation of H. takedai will likely depend on the preservation of satoyama landscapes, wherein humans and nature coexist.
著者
澤田 忠幸
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.89-98, 2020-03

本研究では、「キャリア教育」の法制化に関する一連の施策や各大学での教育改善の動向を踏まえ、地方 A 大学の 3 年次生を対象として、就職活動前の汎用的技能(PROG)の個人差を規定する要因について、キャリア意識および自己調整学習方略の習得度、インターンシップ経験の有無との関連から検討を行った。その結果、PROG のリテラシーは、全国国公立大学理系の傾向と同様、1 年生よりも3 年次生で高かったが、コンピテンシーでは違いは認められず、国公立大学理系の全国平均と同等もしくは低い傾向にあることが示された。また、3 年時の夏休みまでにインターンシップや教育実習に参加したか否かによっては、コンピテンシーの高低に違いは認められず、自身の将来について展望と設計をもっている者、インターンシップを通じて課題の意図ややり方を考え、計画的に取り組むメタ認知的な自己調整学習方略を習得した者ほど、コンピテンシーが高いことが示唆された。本結果は、キャリア教育の設計の観点から議論された。
著者
海老原 充 榊田 星史 泉 徳和
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学年報 : 生産・環境・食品 : バイオテクノロジーを基礎として (ISSN:18819605)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.23-30, 2008-03-31

環境問題の影響は、人間生活のみならず多くの動植物にも及び、様々な動植物種が絶滅の危機に瀕している。2003年に絶滅した日本産のトキをはじめとして、鳥類も例外ではない。こういった絶滅危惧種、あるいは生物資源の維持にためには、性的単一形が多く見られる鳥類の性別鑑別技術が欠かせない。本研究では、これまで鳥種別の条件にて行われることが多かったダチョウ、エミュー、ヒクイドリ、レアなどの走鳥類(平胸類)の雌雄鑑別を同一の条件で行える技術を確立するとともに、より簡便な羽軸からの安定したDNA調製を試みた。ダチョウ4個体、エミュー44個体、ヒクイドリ5個体、レア4個体、合計57個体から羽軸を採取しDNAを調製後、PCRによる雌雄鑑別を行ったところ、50個体において可能であった。雌雄鑑別が困難であった7個体中5個体は、同一個体の異なる羽軸を用いて再度DNAを調製することで雌雄鑑別が可能であった。さらに、雌雄鑑別に用いた性染色体特異配列kWl由来のPCR増幅物は、ヒクイドリ科に属するヒクイドリとエミューにおいてのみ、Z染色体上で重複が起きていることが観察された。これにより、ヒクイドリ科に属するヒクイドリとエミューのkW1配列は、系統分類上、ダチョウ科やレア科と分岐したのちに重複が起きたこと、さらに鳥類の性決定はZ染色体の発現量の影響を受けることから、性決定候補遺伝子探索のマーカーになる可能性が示唆された。
著者
宮口 和義 田口 師永
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.105-111, 2022

本研究は児童を対象に、二重跳び最高記録を調査するとともに、前跳びによる 30 秒間および 10 秒間スピード跳びを測定し、両者の関係を検証するとともに、二重跳び習得に向けた明確な指標を提示することを目的とした。対象は 1 年から 6 年の小学生 1022 人(男子 538 人、女児 484 人)だった。二重跳びが 1 回以上跳べる児童は 1 年では 19.7% であったが、3 年で88.8%、6 年では 93.7% となっていた。5、6 年生でも 6% の児童が 1 回も跳べないことがわかった。二重跳びと 30 秒間スピード跳びとの間に中程度(r=0.45)の、10 秒間スピード跳びとの間に低い相関(r=0.37)が認められた。二重跳びのレベル別にスピード跳びの記録を比較した。その結果、30 秒間で 70 回以上跳ぶことができれば、二重跳びを 1 回跳べることが示唆された。二重跳びの練習方法の一つとしてスピード跳びが有効であることがわかった。
著者
三宅 克英
出版者
石川県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

加賀地方や能登地方の水辺林に生息するアカテガニから消化管抽出液を作製し、そのバイオマス分解能力を解析した。セルラーゼ活性やリグニン分解活性を検討したところ、非常に強いグアヤコール酸化活性、つまりリグニン分解活性を検出することができた。またこのアカテガニやヨコエビなどの甲殻類からバイオマス分解能力のあるアカテガニ消化管由来細菌群を単離同定し、そのセルラーゼ活性やリグニン分解活性も検出することができた。単離した細菌群は一つずつでは、消化管抽出液の活性には遠く及ばないが、群集として機能させることで、強い活性を再構成することが可能と考えている。
著者
北市 仁 中谷内 修 柳井 清治
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-8, 2022

石川県に生息するサクラマスの野生集団および県内で飼育される種苗集団に対して、マイクロサテライト10遺伝子座を用いて遺伝的集団構造の把握を試みた。石川県内の8水系10河川集団から採集した野生サクラマス145個体と県内の漁業関係機関等から提供してもらった4系統群の人工種苗サクラマス20個体をそれぞれ遺伝子解析に供した。その結果、調査した野生サクラマスの各集団は遺伝的多様性が高く保持されていることがわかった。また帰属性解析の結果から、野生サクラマス集団は3つの遺伝的クラスターに分けられた。このうち2つのクラスターは加賀地方と能登地方に由来する地理的なクラスターであったが、残り1つのクラスターは人工種苗の放流によって人為的に作られたクラスターであることが示唆された。このことから、石川県の野生サクラマス集団は過去に人工種苗放流による遺伝的撹乱を受けた可能性があると考えられた。
著者
有賀 健高
出版者
石川県立大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

福島県での生産量が多い農林水産物及び水の計10品目に関して、日本全国の約8700人の消費者を対象にアンケートを実施し、福島第一原子力発電所事故後の風評被害の実態について探った。アンケートデータを分析した結果、放射線に関する知識がなく、原発から遠方に住むため普段原発近辺の食品をあまり目にしない消費者ほど原発近辺の食品を買うのを避ける傾向があり、こういった消費者は風評に影響されやすい可能性が示唆された。一方、放射線の危険性についての知識があり、風評ではなく自分の判断に基づいて購買を回避している消費者の場合は、風評ではなく実害もあるという考えから購買を回避している面もあることが明らかとなった。
著者
宮口 和義
出版者
石川県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、日本では子どもの体力・運動能力の低下に比例して転倒による子どもの事故や怪我が増えている。以前に比べ咄嗟時の反応が鈍くなっていると思われる。保育園で有効な運動プログラムを提供するためにも、遊びの反応時間への影響について検討しておく必要があろう。鬼ごっこやサッカーのような動的な遊びは、反応スピードと全身運動の敏捷性を発達させることがわかった。特に鬼ごっこを好む園児は左右の切り替え動作を含む敏捷性能力に優れているといえる。また、ラダー運動は今日の子ども達の各反応動作の改善に有効であることが示唆された。さらに、草履の着用はバランス能力に関わる足裏形成や立位姿勢の改善に有効であることがわかった。
著者
石倉 瑞恵
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.95-103, 2022

社会主義はジェンダーを克服し、女性の解放を導いたのか。本稿では、旧チェコスロバキアにおける労働者としての女性像の変容に着目し、社会主義期の女性解放の本質を検証した。社会主義は、伝統的な家制度を解体して女性の雇用を促進させたが、その施策のすべてが女性解放ではなく、健全な社会主義国家建設を意図していたため、働く女性の増加に伴い少子傾向が顕在化すると、施策は女性解放から後退し、結婚、家族、子育てこそが社会主義の課題であると社会主義の本質を再解釈した。女性像は、社会主義初期のイメージである国営農場に働く生産労働者から変容した。社会主義後期における女性像は、労働力の主力であるブルーカラーと相反する。すなわち、家事・育児を担い、男性においては評価されない優美さを持ち合わせ、男性の職業領域を犯すことがない労働者、前社会主義的な女性像であり、男性にとっての好ましい他者であることが明らかになった。
著者
山中 麻帆
出版者
石川県立大学
巻号頁・発行日
2021-03-21

令和2年度
著者
楠部 孝誠 馬場 保徳 北野 俊 谷内 貴幸 高月 紘
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.27-35, 2019-03

近年、プラスチックごみによる海洋汚染問題が地球規模の重要課題となっている。特に、海洋に流出したプラスチックは破片化することで海洋生態系に物理的、生理学的な影響を与えている。わが国でも2009 年に制定された海岸漂着物処理推進法が2018 年に改正され、マイクロプラスチック対策に乗り出したところである。筆者らは石川県沿岸におけるマイクロプラスチックの現状把握のため、2010 年と2016 年に8 つの海岸で調査を実施した。調査したすべての海岸でマイクロプラスチックが検出され、その中でも発泡プラスチック製品の破片がその多くを占めた。海岸漂着ごみとともにマイクロプラスチックに対する早急な対策が求められる。
著者
宮脇 長人
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-9, 2018-03

液状食品の濃縮法として、凍結濃縮法は蒸発法や膜濃縮法と比較して最も高品質が得られるものの、これまでにあまり実用化されていない。凍結濃縮法の一つである界面前進凍結濃縮法について、そのいくつかの技術的課題を克服することによって、その実用化への可能性を見出すことができた。本方法の最大の特長は濃縮前後において成分分布プロフィールがほとんど変化しないことである。本方法をいくつかの石川県特産品に適用した。その結果、加賀棒茶高品質濃縮品、高濃度濃縮日本酒(アルコール濃度 27.1 vol%)、補糖不要のブルーベリーワイン、ルビーロマンワインなど、これまでにない高品質濃縮食品新素材を提案することができた。
著者
山下 良平 甲野 真莉子
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
no.1, pp.23-29, 2018-03

地域に残る希少価値が高い資源を、その周辺の環境を含めて、後世に伝えるべく如何にして維持保全していくかが、今日の農山漁村の大きな課題である。多くの地域では、資源に関心が高い一部の住民が率先して取り組みをすすめるも、多くの住民の参加が得られないという共通の問題を抱えている。本研究では、海にまつわる環境資源の保全活動を今以上に活性化させたい地域を事例として、地域住民が有する環境資源の保護意識を規定する要因を、空間的指標と心理的指標から検討した。分析の結果、環境保全活動への積極性は、年齢や性別ではなく、海が癒やしの場所であるという認識が共通して強く作用していたことが明らかとなった。その他では、寄付などの経済的な貢献は沿岸部に居住する住民ほど意欲的であり、直接的に環境保全活動に参加する意欲は、海が生業の場である(あった)ことや、自慢の地域資源であるという認識の有無が強く作用していた。
著者
上田 哲行 架谷 成美 西屋 馨 宮川 泰平 嶋田 敬介 福富 宏和 水田 陽斗 酒井 亮輝
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-10, 2019-03

絶滅危惧種イカリモンハンミョウは、日本では九州と本州だけに分布する。本州では能登半島の1カ所の海岸にのみ生息する。能登半島では一時絶滅したと考えられていたが、1994 年に現生息地の海岸で再発見された。2012 年から2018 年に行った成虫調査では、再発見当初1800 頭近い個体数が記録されていた海岸北部で最初の3年間はほとんど発見されない状態が続き、その後、緩やかに増え始め2018 年に急増したことが確認された。海岸南部と中央部では、最初の2年間は発見当初とほぼ同じ個体数が維持されており、2014 年から急速に増えたことが確認された。このように能登半島の個体群は、ここ数年は増加傾向にあるが、2010 年前後の著しい個体数低下がボトルネックとなり、遺伝的多様性が低下していることが示唆されている。
著者
石黒 盛久
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
no.3, pp.65-72, 2020-03

従来マキアヴェッリにとり宗教は政治的道具に過ぎないと目されてきた。本稿はこの通説に反駁し、宗教が彼の政治思想に果たす決定的役割を提示する。元来国家の創設とは法の付与に基づく。かかる行為が政治的と共に宗教的行為であるのは明白だ。武力の独占がマキアヴェッリの政治論の核心だと見られてきたにもかかわらず、ローマ宗教を素材に国家の始原を論じる『ディスコルスィ』I-11 において彼が、武力の独占者ロムルス以上に、宗教の創始者ヌマの貢献を評価している点に注目しよう。君主は、神の勢威と己れが独占する暴力との相互作用を通じ、神と人民の〈誓約〉の仲介となる。この〈誓約〉に由来する依存的心理の呪縛による超越的倫理の内面化を媒介に、国家の永続が保障される。マキアヴェッリにおける国家確立の過程のかかる分析において、宗教とりわけ神に対する依存心理産出の傾向の強いキリスト教は、政治の道具ではなくその核心を担う要素と見なされる。
著者
柳井 清治 石田 元彦 矢野 俊博 中口 義次 中谷内 修
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学年報 = [Ishikawa Prefectural University] Annual Report (ISSN:18819605)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.15-34, 2015-10-01

Crop damages by wild boar have been drastically increased in this decade in Ishikawa Prefecture. Comprehensive study against crop damage by them has been carried out for two years by three departments and one institute in Ishikawa Prefectural University. The environmental factors of crop damage were extracted by GIS analysis and MaxEnt model was used to predict where the damages break out. Microsatellite analysis revealed that most of wild boar population in Noto peninsula came from Western Toyama Prefecture. Questionnaire surveys for local farmers suggested that pasturage retarded crop damage by wild boars. Finally, using an appropriate disinfectant in the process of processing, transportation and consumption make it possible for us to utilize wild boar meat safely.