著者
砂川 博
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.37, no.10, pp.64-73, 1988

後醍醐天皇、楠木正成、護良親王の間に、西大寺流律僧殊音文観が介在したことは周知の事実である。その文観に対する『太平記』の筆致は概ね好意的で、背後に西大寺流律僧の関与が思われる。また、楠木正成の千早・赤坂合戦談についても同様のことが指摘できる。一方、『太平記』成立に深く関わったと目される恵鎮円観に対する筆致も極めて好意的で、絶賛の趣をもつ。恵鎮は、黒谷流の天台円頓戒を伝持する律僧で、法勝寺は鎮護国家の道場であった。『太平記』は国土安穏・天下泰平の祈祷に従った西大寺流律僧らの様々の語りなどに拠りつつ、同じ職掌をもつ天台系の律僧の手によって、太平への祈りをこめて作られたのではないか。
著者
砂川 博
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.39-48, 1987-12-10 (Released:2017-08-01)

戒律振興・殺生禁断を主張する中世律僧が、旺盛な勧進活動を基礎として、非人救済・作道・架橋・造寺造塔・顕密寺院の再建に当ったことは周知の事実である。彼ら中世律僧は、聖霊回向・追善を事とする僧衆と、遺骸の埋葬に従う三昧聖としての八斎戒衆の二つの階層に分かれていた。一方、八斎戒衆は中世律宗寺院の勧進活動の担い手でもあった。勧進聖でもあった八斎戒衆が、一紙半銭の喜捨を衆庶に仰ぐ際、勧進にまつわる或る種の語りを行ったであろうことは容易く想像される。本稿は、『太平記』の成立基盤の一郭に、大和西大寺流の律僧、具体的には般若寺の八斎戒衆の語りの存したことを摘出するものである
著者
砂川 博
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.25-35, 1995-06-10

延慶本の文覚発心譚に見える文覚(盛遠)像に中世律僧のイメージが揺曳し、また、渡辺橋や東山の上人の庵室、四天王寺などがそれぞれ物語の展開上重要な意味もち、併せて東山の上人が狂言まわし的な役割をもつのは、作者が大和西大寺系の勧進聖や彼らの活動の場を重ね合わせながら物語を構想・趣向したためではなかろうか。
著者
砂川 博
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.39-48, 1987-12-10

戒律振興・殺生禁断を主張する中世律僧が、旺盛な勧進活動を基礎として、非人救済・作道・架橋・造寺造塔・顕密寺院の再建に当ったことは周知の事実である。彼ら中世律僧は、聖霊回向・追善を事とする僧衆と、遺骸の埋葬に従う三昧聖としての八斎戒衆の二つの階層に分かれていた。一方、八斎戒衆は中世律宗寺院の勧進活動の担い手でもあった。勧進聖でもあった八斎戒衆が、一紙半銭の喜捨を衆庶に仰ぐ際、勧進にまつわる或る種の語りを行ったであろうことは容易く想像される。本稿は、『太平記』の成立基盤の一郭に、大和西大寺流の律僧、具体的には般若寺の八斎戒衆の語りの存したことを摘出するものである
著者
砂川 博
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.1-10, 1987-06-10

『明徳記』の作者を時衆とする見解は角川源義氏によって唱えられ、最近では冨倉徳次郎氏がこれを支持している。一方、金井清光氏は山名氏が遊行派か四条派何れかの時衆に帰依していた事実を明らかにされている。本稿は金井氏の指摘を踏まえた上で。『明徳記』改稿本の山名満幸最期談の構想を分析、作者圈に四条派時衆の介在することを想定した。
著者
具志堅 美智子 オムラー 由起子 宇都宮 典子 呉屋 秀憲 糸数 ちえみ 益崎 裕章 辻野 久美子 砂川 博司 与儀 洋和 比嘉 盛丈 喜瀬 道子
出版者
琉球大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究(1)では2型糖尿病者6名を対象としてCGMS装着者にインタビュを行い、グラウンテッド・セオリー・アプローチにて分析した。CGMS装着体験は自らの病と真摯に対峙する機会となり、偏った食行動の気づきを得ていた。気づきは食行動改善のモチベーションを高めていた。研究(2)では20名を対象としてCGMS前後の糖尿病負担感情調査(PAID)の測定にて検証した。PAID総点数の平均はCGMS前25.62±16.2後21.8±14.9で有意差は認められないものの負担感情は軽減傾向にあった。患者背景因子との関連では有職群において「糖尿病の治療」の負担感情が有意に軽減していた(p<0.05)。