著者
島袋 充生 山川 研 益崎 裕章 佐田 政隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.983-988, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

遊離脂肪酸はエネルギー基質であると同時にさまざまなシグナル分子の基質でもあり,インスリン作用,インスリン合成・分泌に影響を与える.肥満症にともなう過剰な遊離脂肪酸は,耐糖能を悪化させる.遊離脂肪酸によるインスリン作用の障害を(広義の)脂肪毒性,インスリン分泌能に及ぼす悪影響を膵β細胞脂肪毒性(狭義の脂肪毒性)と呼ぶ.最近,脂肪組織以外の臓器に蓄積する脂肪(異所性脂肪)の動態に注目が集まっており,各臓器で何らかの病的意義を有する可能性がある.
著者
益崎 裕章 小塚 智沙代 屋比久 浩市
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.665-674, 2012 (Released:2012-11-13)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

世界に冠たる長寿の島,沖縄が日本屈指の肥満県,糖尿病県に転じ,平均寿命の凋落が続いている(沖縄危機).軽度肥満の段階から糖尿病発症リスクは7倍に上昇することが知られており,過剰な脂肪組織の前には生活習慣の地道な改善努力も虚しいものとなる.人類が誕生してから今日までの歴史を1年に置き換えたカレンダーの中で “飽食の時代” は最近のわずか3分間の出来事である.人類の祖先は繰り返す寒冷と飢餓,旱魃を生き抜くため栄養や塩分が得られるときに蓄えて逃さない仕組みを構築してきた.生命の知恵の結晶ともいえる省エネ・倹約体質が,今日の飽食・高塩分・運動不足・ストレス社会でメタボリックシンドローム急増の基盤となっている.
著者
益崎 裕章 高山 千利 島袋 充生 松下 正之 小塚 智沙代
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

慢性的な高脂肪餌の摂取が食欲中枢の視床下部において小胞体ストレスを亢進させることにより、高脂肪餌への嗜好性をさらに高める悪循環の分子機構をマウス病態モデルで明らかにした。玄米含有餌を与えたマウスの解析から、玄米に特異的かつ高濃度に含有される生理活性物質、γオリザノールが経口摂取後、脳に移行し、小胞体ストレスを軽減する分子シャペロンとして機能することが明らかとなった。γオリザノールは高脂肪食によって糖尿病を来したマウスの膵島(インスリン分泌細胞)における小胞体ストレスの亢進を緩和し、β細胞の保護と機能回復に貢献することも明らかとなり、天然食品由来成分を活用する新たな医学応用の基盤が確立出来た。
著者
屋比久 浩市 益崎 裕章 高山 千利 島袋 充生 幸喜 毅
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

若齢期における人工甘味料摂取が、視床下部小胞体(ER)ストレスを介して、成獣期の肥満感受性(レプチン抵抗性)を高める可能性が示唆された。分子シャペロンを人工甘味料と共投与することで、視床下部 ER ストレスが低下し、さらに成獣期以降、高脂肪食に対する嗜好性をも軽減することが確認された。 マウスの embryo から摘出した全脳の primary culture においては、人工甘味料が ER ストレス関連遺伝子の発現をかなり亢進させた。これは人工甘味料が視床下部 ER ストレスにダイレクトに寄与することを示唆する所見である。
著者
益崎 裕章 屋比久 浩市 山川 研
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.1027-1033, 2012 (Released:2013-05-10)
参考文献数
8

高尿酸血症は痛風関節症,痛風結節,尿路結石症,痛風腎に代表される尿酸塩沈着症を引き起こす.一方,肥満症・メタボリックシンドロームには無症候性高尿酸血症が高頻度に随伴する.痛風発作,関節炎予防のための尿酸値管理という従来の枠組みを超えて,生活習慣病・慢性腎臓病に伴う高尿酸血症が心血管疾患や脳卒中などの血管イベントのリスクを増大させ,脂肪組織や血管の組織機能障害を誘導する可能性が注目されている.
著者
具志堅 美智子 オムラー 由起子 宇都宮 典子 呉屋 秀憲 糸数 ちえみ 益崎 裕章 辻野 久美子 砂川 博司 与儀 洋和 比嘉 盛丈 喜瀬 道子
出版者
琉球大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究(1)では2型糖尿病者6名を対象としてCGMS装着者にインタビュを行い、グラウンテッド・セオリー・アプローチにて分析した。CGMS装着体験は自らの病と真摯に対峙する機会となり、偏った食行動の気づきを得ていた。気づきは食行動改善のモチベーションを高めていた。研究(2)では20名を対象としてCGMS前後の糖尿病負担感情調査(PAID)の測定にて検証した。PAID総点数の平均はCGMS前25.62±16.2後21.8±14.9で有意差は認められないものの負担感情は軽減傾向にあった。患者背景因子との関連では有職群において「糖尿病の治療」の負担感情が有意に軽減していた(p<0.05)。