- 著者
-
砂田 茂
- 出版者
- The Visualization Society of Japan
- 雑誌
- 可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.119, pp.4, 2010 (Released:2012-04-14)
- 参考文献数
- 50
ホバリング等、低速飛行時における昆虫の大きな空気力発生を説明するため多くの研究が行われ、昆虫の飛行は流体力学の1つのトピックスになった。大きな空気力発生は剥離渦によることが理解され、そのメカニズムは定性的には理解できたと言える。翼の変形や胴体の運動の空気力への影響を考慮し、空気力の大きさを精度良く見積もることが現在の課題であり、数値計算力学が強力なツールとなっている。昆虫の飛行の魅力は大きな空気力だけでなく、高い安定性、機動性にもある。飛行の安定性、機動性を明らかにする研究が最近、始まり、これからの成果が期待される。小型航空機の開発や、大気条件から低レイノルズ数で飛行することになる火星航空機の開発が行われている。これらの飛行性能と昆虫の飛行性能を比較すること、航空機開発の立場から昆虫の飛行を見直すことで、昆虫の飛行の素晴らしさが新たに明らかになるであろう。