著者
神尾 博代 中俣 修 古川 順光 信太 奈美 来間 弘展 金子 誠喜 柳澤 健
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1243, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】転倒の危険が少なく、より安定した立ち上がり動作を獲得することは重要である。片麻痺患者の場合、麻痺側を前方に位置した立ち上がり動作を日常生活活動として指導することが多い。そこで、足部位置を変化させることによって、その動作を遂行するためにどの程度の下肢関節モーメントが必要とされるのか把握することが必要であると考えられる。本研究では、足部を平行位にした場合と前後に置いた場合の立ち上がり動作を比較し、下肢関節モーメントについて分析することを目的にした。【方法】対象は健常成人11名(男性7名、女性4名)とした。ヘルシンキ宣言に基づいて、被験者に実験の目的・危険性等を説明し書面にて承諾を得た。立ち上がり動作の計測には、三次元動作解析装置VICON370(Oxford Metrics社製)および床反力計(kistler社製)を用いた。背もたれのない座面高を下腿長の高さとする、椅子からの立ち上がり動作を課題とした。このとき、上肢は体側に自然下垂位とし、スピードは被験者の最も楽に立ち上がれる速さとした。また、足部位置は肩幅の広さとし、一側足部を前方に置いた右前型、左前型、平行位に置いた揃え型の3種類とした。各試行とも3回ずつ行った。この時の下肢の股関節・膝関節の伸展モーメントの最大値をもとめ、各試行間での比較検討を行った。統計解析は分散分析および多重比較を行った。有意水準は5%未満とした。【結果および考察】揃え型、右前型、左前型における股関節・膝関節の最大伸展モーメントの平均値(SD)は、左股関節では揃え型が74.5(16.0)Nm、右前型が107.7(22.7)Nm、左前型が79.9(29.5)Nmであった。右股関節では揃え型が69.1(17.7)Nm、右前型が77.3(25.8)Nm、左前型が93.6(20.1)Nmであった。左膝関節では、揃え型が57.1(11.9)Nm、右前型が83.4(15.6)Nm、左前型が7.7(8.0)Nmであった。右膝関節では揃え型が63.1(18.0)Nm、右前型が11.1(10.1)Nm、左前型が91.8(22.6)Nmであった。一側下肢を前方に出すことで前方側の膝関節モ-メントは有意に小さくなった。しかし、前方側の股関節伸展モーメントは揃え型と比べてほとんど変化が見られず、後方側の股関節・膝関節モーメントは揃え型よりも有意に大きなモーメントを必要とすることがわかった。臨床場面で、麻痺側下肢を前方に出した位置での立ち上がり動作を指導する場面があるが、これらの結果から非麻痺側である後方側の股関節・膝関節伸展モーメントが十分に発揮できないと立ち上がることが困難になると考えられる。今後、片麻痺患者について検討することで確認を行いたいと考える。なお、本研究は本学の研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。
著者
神尾 博代 山口 三国 信太 奈美 古川 順光 来間 弘展 金子 誠喜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Eb1258, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 生活習慣病発症予防に効果があるとされる身体活動量は、1日当たりおよそ8,000~10,000歩に相当すると考えられている。しかし、ライフスタイルの変化や交通手段の進歩により、日本人の1日の歩数は男性、女性とも目標値に達するどころか、1日平均歩数は減少している。身体活動量の点から見るとパラメータとして歩数を増大させるだけではなく、歩容を変化させる方法もある。そこで、本研究では歩容調整によって、体重、体脂肪率、BMIを減少させることができるかについて検討することを目的とした。【方法】 健常若年女性24名を対象とし、ランダムに運動・ウォーキング実施群(Ex群)と対照群(C群)の2群に12名ずつ割り付けた。Ex群には日常生活の中で気軽に行える簡単な体操と歩容調整の指導をし、日常生活内で実施させた。体操の内容は1.立位での股関節の伸展、2.立位での重心の前方移動、3.背伸び、4.立位での前方リーチの4種類とした(山口式エクササイズに準拠)。また、歩行指導時の注意点は1.けり出し時、骨盤を後方回旋させず、股関節・膝関節をしっかりと伸展させる。2.けり出し時、踵が外側を向いたり内側を向いたりしないように真っ直ぐに蹴る。3.背すじを丸めたり、反りすぎたりしないようにするとした(山口式スタイルアップウォークに準拠)。C群には指導をせず、通常通りの日常生活を指示した。また、両群に生活習慣記録機(スズケン社製KenzライフコーダPLUS)を腰部に装着させ、起床時から入浴時を除く就寝まで、2週間継続して計測した。指導実施前と2週間経過後の身長・体重・BMI・体脂肪率を測定し、各項目の介入前後の差を求めた。また、2週間の歩数・総消費量・強度別の活動時間を計測した。ライフコーダの強度1~3を低強度(3METs以下)、強度4~6を中等強度(3~6METs)、強度7~9を高強度(6METs以上)とし、それぞれの1日の平均活動時間をもとめた。各項目は有意水準5%にて両群の平均値の差の検定を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者に対し実験の目的・方法・予想される結果・期待される利益・不利益・危険性・中途離脱の権利等について十分な説明を行い、実験参加の承諾書にて同意を得た。本研究は首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】 1日の平均歩数(S.D.)は、Ex群が8598.2(1303.5)歩、C群は9146.9(2750.8)歩であり、歩数に有意差は無かった。しかし、Ex群の介入前後の体重およびBMIの差の平均(S.D.)は体重差-0.7(0.7)kg、BMI差-0.3(0.3)であり、C群の-0.1(0.6)kg、0.0(0.2)に比べて有意に減少していた(p<0.05)。また、体脂肪率の差の平均(S.D.)はEx群-1.7(1.0)%、C群は-0.8(1.3)%と減少傾向が見られた。また、2群間の3つの強度の1日当たりの平均活動時間(S.D.)はEx群が低強度54.8(11.1)分/日、中等強度29.0(7.6)分/日、高強度2.4(1.8)分/日、C群が低強度57.8(15.7)分/日、中等強度30.9(12.5分/日)、高強度3.6(2.1)分/日となり、有意差はみられなかった。総消費量の平均値もEx群1774.3(129.9)kcal、C群1847.6(209.9)Kcalと有意差がなかった。【考察】 Ex群とC群では、歩数や活動レベルを示す運動強度などの量的側面に関して、有意な差がみられなかった。しかし、Ex群でエクササイズ後の体重、BMIが有意に減少していることから、歩容調整により歩行に質的変化が生じ、歩行に使用していた筋活動に違いが生じたのではないかと考えられた。通常、生活動作としての歩行は、移動目的だけを満たす動作となることが多い。しかし、意図的に歩容としての身体の振る舞いを意識することで、歩行に参加する筋活動の増加が得られたものと考えられた。歩行は移動の手段であって、通常速度では運動としての負荷は低くなるが、歩容を意識変容させることで、筋活動の参加が増し、負荷運動として用いることができたのではないかと考えられた。今まで、生活習慣病の予防について歩数やスピードに着目されがちであったが、歩行そのものの質も重要であることが明らかになった。【理学療法学研究としての意義】 歩行を指導する際に、無理なくより効果的に生活習慣病の予防として歩行を活用していくために、量や運動強度だけではなく、歩行の質についての重要性が明らかになった。
著者
神尾 博代 山口 三国 信太 奈美 古川 順光 来間 弘展 金子 誠喜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb1258, 2012

【はじめに、目的】 生活習慣病発症予防に効果があるとされる身体活動量は、1日当たりおよそ8,000~10,000歩に相当すると考えられている。しかし、ライフスタイルの変化や交通手段の進歩により、日本人の1日の歩数は男性、女性とも目標値に達するどころか、1日平均歩数は減少している。身体活動量の点から見るとパラメータとして歩数を増大させるだけではなく、歩容を変化させる方法もある。そこで、本研究では歩容調整によって、体重、体脂肪率、BMIを減少させることができるかについて検討することを目的とした。【方法】 健常若年女性24名を対象とし、ランダムに運動・ウォーキング実施群(Ex群)と対照群(C群)の2群に12名ずつ割り付けた。Ex群には日常生活の中で気軽に行える簡単な体操と歩容調整の指導をし、日常生活内で実施させた。体操の内容は1.立位での股関節の伸展、2.立位での重心の前方移動、3.背伸び、4.立位での前方リーチの4種類とした(山口式エクササイズに準拠)。また、歩行指導時の注意点は1.けり出し時、骨盤を後方回旋させず、股関節・膝関節をしっかりと伸展させる。2.けり出し時、踵が外側を向いたり内側を向いたりしないように真っ直ぐに蹴る。3.背すじを丸めたり、反りすぎたりしないようにするとした(山口式スタイルアップウォークに準拠)。C群には指導をせず、通常通りの日常生活を指示した。また、両群に生活習慣記録機(スズケン社製KenzライフコーダPLUS)を腰部に装着させ、起床時から入浴時を除く就寝まで、2週間継続して計測した。指導実施前と2週間経過後の身長・体重・BMI・体脂肪率を測定し、各項目の介入前後の差を求めた。また、2週間の歩数・総消費量・強度別の活動時間を計測した。ライフコーダの強度1~3を低強度(3METs以下)、強度4~6を中等強度(3~6METs)、強度7~9を高強度(6METs以上)とし、それぞれの1日の平均活動時間をもとめた。各項目は有意水準5%にて両群の平均値の差の検定を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者に対し実験の目的・方法・予想される結果・期待される利益・不利益・危険性・中途離脱の権利等について十分な説明を行い、実験参加の承諾書にて同意を得た。本研究は首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】 1日の平均歩数(S.D.)は、Ex群が8598.2(1303.5)歩、C群は9146.9(2750.8)歩であり、歩数に有意差は無かった。しかし、Ex群の介入前後の体重およびBMIの差の平均(S.D.)は体重差-0.7(0.7)kg、BMI差-0.3(0.3)であり、C群の-0.1(0.6)kg、0.0(0.2)に比べて有意に減少していた(p<0.05)。また、体脂肪率の差の平均(S.D.)はEx群-1.7(1.0)%、C群は-0.8(1.3)%と減少傾向が見られた。また、2群間の3つの強度の1日当たりの平均活動時間(S.D.)はEx群が低強度54.8(11.1)分/日、中等強度29.0(7.6)分/日、高強度2.4(1.8)分/日、C群が低強度57.8(15.7)分/日、中等強度30.9(12.5分/日)、高強度3.6(2.1)分/日となり、有意差はみられなかった。総消費量の平均値もEx群1774.3(129.9)kcal、C群1847.6(209.9)Kcalと有意差がなかった。【考察】 Ex群とC群では、歩数や活動レベルを示す運動強度などの量的側面に関して、有意な差がみられなかった。しかし、Ex群でエクササイズ後の体重、BMIが有意に減少していることから、歩容調整により歩行に質的変化が生じ、歩行に使用していた筋活動に違いが生じたのではないかと考えられた。通常、生活動作としての歩行は、移動目的だけを満たす動作となることが多い。しかし、意図的に歩容としての身体の振る舞いを意識することで、歩行に参加する筋活動の増加が得られたものと考えられた。歩行は移動の手段であって、通常速度では運動としての負荷は低くなるが、歩容を意識変容させることで、筋活動の参加が増し、負荷運動として用いることができたのではないかと考えられた。今まで、生活習慣病の予防について歩数やスピードに着目されがちであったが、歩行そのものの質も重要であることが明らかになった。【理学療法学研究としての意義】 歩行を指導する際に、無理なくより効果的に生活習慣病の予防として歩行を活用していくために、量や運動強度だけではなく、歩行の質についての重要性が明らかになった。